今、パートナーや相手方から慰謝料を請求され、その金額の妥当性や今後の対応に頭を悩ませている方もいると思います。
「請求された金額を支払うしかないのか?」「加害者側が弁護士に相談してもいいのだろうか?」そんな不安や疑問が尽きないかもしれません。
しかし、実は不貞行為をした側にとっても、弁護士への相談は不当に高額な支払いを回避し、事態を穏便かつ適正に解決するために非常に有効な手段となる可能性があります。
本記事では、弁護士に依頼をすると具体的にどのようなメリットがあり、どんなケースで弁護士を頼るべきなのか、気になる慰謝料の相場や弁護士費用も併せてご紹介します。
不貞行為について、高額な慰謝料を請求されている方へ
不倫の慰謝料請求をされていても、不貞行為をした側が弁護士に頼っていいの?と悩んでいませんか。
結論からいうと、慰謝料を請求されている側でも早急に弁護士に相談するのをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すると以下のようなメリットを得ることができます。
- 請求されている慰謝料が適正価格かどうか判断してくれる
- 依頼すると相手と慰謝料減額の交渉をしてくれる
- 離婚後のトラブル防止策を教えてもらえる
- 慰謝料以外の離婚問題についても相談できる
不倫慰謝料弁護士ナビでは、不倫慰謝料問題を得意とする弁護士を多数掲載しています。
無料相談・電話相談など、さまざまな条件であなたのお近くの弁護士を探せるので、ぜひ利用してみてください。
不貞行為の慰謝料相場は「50万円~300万円」
不貞行為の慰謝料相場は、離婚の有無等の状況で50万円から300万円と変動します。
これはあくまで目安であり、弁護士の交渉によって減額できる可能性は十分にあります。
慰謝料額は、多様な要素で決まります。
具体的に考慮される要素としては、次のようなものが挙げられます。
法律上の「不貞行為」と認められないケースや、請求額が相場から逸脱していれば、弁護士が介入することによる減額の余地が大きくなります。
裁判所の一般的な相場は、離婚に至らない場合は50万円から150万円、離婚に至る場合は100万円から300万円程度とされています。
相手方から500万円等の過大な請求があったとしても、弁護士が客観的な状況や証拠の弱点を指摘し、大幅な減額に成功した事例は少なくありません。
まず専門家にご相談されることをおすすめします。
不貞行為した側が弁護士に依頼する際の弁護士費用の相場
不貞行為をした側の弁護士費用は事案によって異なりますが、慰謝料減額や精神的負担の軽減といったメリットを考慮すれば、その価値は十分にあると言えるでしょう。
実際に、慰謝料の減額交渉のみを依頼する場合と、離婚条件の話し合いも含む場合に分けて見ていきましょう。
慰謝料の減額交渉のみの場合
慰謝料減額交渉のみを弁護士に依頼する場合の主な費用は以下のとおりです。
- 着手金(契約時に支払う):10万円から30万円程度
- 報酬金(慰謝料を減額できた場合):減額できた金額の10%から20%程度
- 相談料:30分:5千円~1万円程度※初回無料の場合もあり
- 実費(印紙や弁護士の交通費など):発生した場合
- 日当(事務所外の活動):発生した場合
事務所や案件の複雑さ、請求額によって費用体系は異なります。
報酬金は多くの場合、相手方との間で慰謝料額が確定した時点で発生する仕組みになっています。
離婚条件の話し合いも含める場合
不貞行為が原因で離婚も避けられない場合、弁護士には慰謝料交渉に加えて、財産分与、親権、養育費など離婚条件全般の交渉も依頼することができます。
この場合の弁護士費用は、慰謝料交渉のみを依頼するケースよりも高くなるのが通常です。
離婚問題は法的に複雑な要素が絡み合い、交渉事項が増えるだけでなく、調停や裁判といった法的な手続きが必要になることもあり、その分、弁護士の対応範囲が広がることになるためです。
着手金は30万円から50万円程度が目安となります。
報酬金は、慰謝料の減額分や財産分与によって得られた経済的な利益に応じて設定されることが多く、総額では数十万円から150万円以上になるケースもあります。
これらは感情的な対立を避け、有利な条件で離婚を成立させるための重要な投資と考えることができるでしょう。
不貞行為を「した側」でも弁護士に相談したほうがいい
「不貞行為をした側が弁護士に依頼しても費用倒れになるのではないか」というご心配は、多くの場合誤解です。
慰謝料の減額幅が弁護士費用を上回り、結果的に経済的な負担を軽減できる可能性は十分にあります。
弁護士は法的に不当な高額請求を見抜き、適正な金額への交渉をおこなうため、ご自身で対応するよりも大幅な減額が期待できるのです。
具体的にどのような場合に依頼する価値があるのか、実例とともに解説します。
減額幅より弁護士費用が安いなら依頼する価値は十分ある
弁護士に依頼する価値があるかどうかを判断する重要な基準は、「期待できる慰謝料の減額幅」が「弁護士費用」を上回るかどうかという点です。
弁護士費用を支払ったとしても、それ以上に慰謝料の支払い額を減らすことができれば、経済的なメリットは明らかです。
弁護士は過去の事例や法的根拠に基づいて、現実的な減額幅の見込みを提示することができます。
100%確実な結果を保証することはできませんが、専門家としての見通しは、適切な判断を下す上で非常に役立つでしょう。
まずは無料相談などを利用して、ご自身のケースでの減額の見込みと弁護士費用を確認することが大切です。
減額の実例を紹介
弁護士が介入することで請求された慰謝料額が大幅に減額された事例は多数あります。
弁護士は不貞行為の態様、期間、相手方の精神的苦痛の程度、証拠の強弱などを専門的に分析し、法的に妥当な金額での解決を目指します。
具体的な減額事例としては、以下のようなものがあります。
【示談書を交わしていても400万円減額できたケース】
【相談の結果】
慰謝料を400万円減額。
まずは相手妻に内容証明を送り、示談書の効力は認められないことを通知した。
その後、相手妻と電話にて交渉をしたところ、改めて示談をし直すことに了承した。
当初は探偵費用で300万円がかかっているので350万円でないと和解はできないと言っていたが、交渉を重ね、最終的には100万円の支払いにて和解が成立した。
【弁護士の対応】
一度サインをしてしまった示談書はその効力を否定することは容易ではない。
もっとも、今回の作成経緯や高額な慰謝料金額からして訴訟においても示談書の効力を否定できる見込みはあった。
そこで、相手妻に連絡をして示談書の効力は認められないことを説明し、改めて適正な金額にて示談することを目指す方針とした。
引用元:ベンナビ離婚「示談書を交わしていたが400万円の減額に成功した事例」
【不倫慰謝料200万円を50万円に減額したケース】
【相談の結果】
慰謝料を150万円減額。
結果、慰謝料の金額を50万円まで減額することができました。
【弁護士の対応】
ご相談者から不倫の状況を確認したところ、請求者と不倫相手は離婚していないこと、不倫相手と関係を持つ前、不倫相手から、妻とは離婚する予定で、別居中であると聞かされていたこと、交際期間は1か月にも満たず、肉体関係を持ったのは1回だけであることなど、いくつかのご相談者様に有利に働く事情があることが判明しました。
そこで、これらを軸として減額交渉を行いました。
引用元:ベンナビ離婚「不倫慰謝料200万円を50万円に減額」
【社会的制裁を受けて慰謝料を100万円減額】
【相談の結果】
慰謝料を100万円減額(150万円→50万円)。
結果、慰謝料を50万円とすることで合意しました。
【弁護士の対応】
職場に不倫をバラされて転職を余儀なくされたこと、転職によって給料が下がっており、社会的制裁をすでに受けているということを主軸として、減額交渉を行いました。
引用元:ベンナビ離婚「不倫相手の妻が職場に不倫をばらしたことから、慰謝料を100万円減額」
これらは一例ですが、弁護士に依頼することで有利な条件で解決できる可能性が高まります。
減額交渉が成功すれば弁護士費用の元が取れる
適切な弁護士に依頼し、慰謝料の減額交渉が成功すれば、支払う弁護士費用を考慮しても、トータルの経済的負担を最小限に抑えることが可能です。
弁護士費用は決して安いものではありませんが、「投資」と捉えることができます。
高額な慰謝料をそのまま支払ってしまうリスクと比較すれば、専門家への依頼は賢明な選択と言えるでしょう。
例えば、慰謝料300万円を請求され、弁護士費用60万円で依頼し、交渉の結果120万円に減額できたケースで考えてみましょう。
例
- 請求額|300万円
- 弁護士費用|60万円で依頼
- 交渉結果|120万円に減額
- 実際の支払い総額|依頼なしなら300万円→180万円(慰謝料120万円+費用60万円)
このように、弁護士費用を支払っても「元が取れる」ケースは少なくありません。
まずは無料相談がおすすめ
弁護士に依頼すべきか、費用対効果が見込めるか迷っているのであれば、まずは無料相談を利用して専門家の意見を聞くことが最も重要です。
無料相談で具体的な状況(請求額、不貞行為の期間や内容、証拠等)を伝えれば、弁護士が慰謝料減額の可能性やおおよその弁護士費用、そして費用対効果について助言をしてくれます。
相談したからといって必ず依頼しなければならないわけではありません。
専門家の客観的な意見を聞くだけでも、今後どうすべきか冷静な判断ができるため参考になります。
不貞行為した側が弁護士に依頼すべきケース|不倫相手とその配偶者関係
不貞行為をした側として、どのような状況で弁護士に相談・依頼すべきか、具体的なケースを紹介します。
以下のいずれかに該当する場合は、不利な立場に追い込まれるリスクが高いため、ご自身の状況と照らし合わせ、早期に弁護士へ相談・依頼することを検討してみましょう。
相手とトラブルになりそうな場合
不貞の事実が相手方に知られる前や知られた直後で、本格的な請求に至る前に弁護士に相談すれば、トラブルの発生や拡大を未然に防げる可能性があります。
弁護士の早期介入によって、法的なアドバイスに基づいた冷静な対応が可能となり、感情的な対立を避けることができます。
例えば、弁護士から謝罪方法の助言を受けることで、相手の感情も落ち着き、後の慰謝料の減額交渉が良い方向へ進む可能性もあります。
不貞行為された側からの慰謝料請求があった
不貞の事実が発覚し、相手方の配偶者から慰謝料請求を受けた場合には、弁護士に依頼することで請求の妥当性を判断し、適正な金額での解決を目指すことができます。
慰謝料請求は民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)に基づくものであり、弁護士は請求の内容(金額や根拠など)を法的に精査します。
特に、請求額が相場から逸脱している場合や不貞の証拠が不十分な場合、その点を指摘し適切な反論や減額交渉を行います。
例えば、相手方からメール等で「慰謝料〇〇万円を支払え」と請求された場合、その金額が法的に妥当か、支払い義務があるのかを個人で判断するのは困難です。
弁護士は、あなたの状況(不貞行為の期間、関係性、夫婦関係の破綻状況等)と相手方の主張・証拠を照らし合わせ、適切な金額を提示して交渉を行います。
不貞行為をされた側から執拗な請求を受けている
相手方からの過度な干渉や不当な要求に苦しんでいる場合、弁護士に介入してもらうことで精神的な負担から解放され、問題がエスカレートするのを防ぐことができます。
感情的な交渉は解決を困難にし、さらに精神的な疲弊を招きます。
弁護士は第三者として冷静に状況を判断し、民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)の範囲を超えた要求や、刑法上の脅迫罪(刑法第222条)や名誉毀損罪(刑法第230条)に当たる可能性のある行為に対しては、法的な措置を講じることができます。
具体的には「職場にばらす」「家族に伝える」「深夜の執拗な電話」などの行為です。
こうした脅迫行為に個人で対応することが困難なため、弁護士に依頼すれば、相手方への接触を停止させ、法的な警告をおこなうことで不当な行為を止めさせると同時に、あなたの精神的な平穏を取り戻すことができます。
相手方の弁護士から内容証明郵便が届いた
相手方の弁護士から内容証明郵便で慰謝料請求があった場合、法的手段への移行の可能性が高いため、速やかに弁護士に相談し、専門的な対応を取るべきです。
内容証明郵便は証拠能力が高く、法的措置を視野に入れた正式な請求であることが多いため、放置すると不利な状況に陥る可能性が高まります。
民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)に基づく請求であるため、法的な観点から対応することが必須となります。
このような場合、弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の法的な意味を正確に把握し、期限内に適切な反論書を作成・送付するなど、迅速かつ法的に正しい対応をしてくれるので安心です。
裁判所から訴状が届いた
裁判所から訴状が届いた場合、すでに法的手続きが開始されており、専門家である弁護士に依頼して裁判に対応することが絶対的に必要です。
訴状は、相手方が正式に民事訴訟法に基づいて裁判を起こしたことを意味します。
裁判には厳格な期日と手続きがあり、法律の専門知識がなければ適切に対応することは極めて困難であり、放置すれば欠席裁判で不利な判決が確定するリスクがあります。
訴状・呼出状が届いたら、自分で対応する場合は、指定された期日までに答弁書を提出し、裁判に出廷しなければいけません。
しかし、弁護士に依頼をした場合は、次のような対応をしてくれるため、裁判を有利に進めることができます。
- 訴状内容の精査
- あなたの反論を法的に構成した答弁書の作成・提出
- 必要証拠の収集・提出
- 裁判期日に代理人として出廷し弁論
親権トラブルがある場合
不貞が原因で離婚に至り、配偶者との間で子どもの親権について深刻な対立が生じている場合、不貞をした側であっても弁護士に依頼して専門的なサポートを受けるべきです。
親権者の決定は「子の福祉」を最優先に総合的に判断されます。
不貞の事実は親権判断において不利な要素となり得ますが、それだけで親権が取れないと決まるわけではありません。
弁護士は、これまでの監護実績、今後の監護計画、子どもの意思、相手方の監護能力などを法的に整理し、あなたの親としての適格性を客観的に主張します。
弁護士の支援が有効な状況としては、次のようなケースが挙げられます。
- 配偶者から「親権は渡さない」と一方的に言われ話し合いを拒否されている
- 面会交流で著しく不利な条件を提示されている
- 相手が子どもを連れて一方的に別居し会わせてもらえない
親権問題は感情的な対立が激化しやすいため、弁護士が間に入ることで冷静な話し合いを促し、子どもにとって最善の解決を目指せます。
不貞行為をした側が弁護士に依頼するメリット
不貞行為をした側が弁護士に依頼すると、多くのメリットがあります。
法律の専門家が交渉を有利に進め、あなたの心情を考慮した適切な対応が期待できます。
具体的にどのようなメリットがあるのか、項目別に見ていきましょう。
慰謝料の減額交渉をしてもらえる
弁護士が法的な相場や根拠に基づいて交渉することで、不当な高額請求を退け、適正な慰謝料額に減額できる可能性が高まります。
慰謝料の算定は民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)の原則が適用されます。
裁判所は、不貞行為の期間、回数、婚姻期間、子の有無、離婚の有無、相手方の精神的苦痛の程度など、具体的な事情を総合的に考慮します。
弁護士はこれらの要素を法的に分析し、あなたにとって有利な事情を適切に主張することで、請求額の妥当性を争うことができます。
有利な事情の例としては、「不貞期間が短いこと」「夫婦関係がすでに冷え切っていたこと」などが挙げられます。
例えば、500万円という高額な慰謝料を請求されたとしても、弁護士が、夫婦関係が不貞行為の以前から冷え切っていた証拠や、不貞行為の期間が短かった事実などを提示し、法的な相場である100万円から200万円程度まで減額する交渉をおこなうことが可能です。
これにより、依頼者は不当な支払いを免れることができます。
相手と交渉してくれるので自分が直接やり取りをしなくて済む
弁護士が代理人となることで、相手方と直接連絡を取る精神的な負担から解放され、冷静かつ専門的な交渉が可能になります。
不貞に関する交渉は感情的になりやすく、当事者同士が直接やり取りをすると、トラブルがエスカレートしたり、精神的に疲弊したりするリスクがあります。
例えば、相手からの「執拗な電話」や「攻撃的なメールやSNSのメッセージ」などに悩む場合は、弁護士に依頼することで連絡窓口を一本化でき、精神的なストレスから解放されます。
感情的な対立を避けつつ、法的な根拠に基づいた合理的な話し合いを進めたいときには弁護士の介入が有効です。
離婚に至った場合も対応してもらえる
不貞が原因で離婚の可能性が高い場合、慰謝料問題だけでなく、親権、養育費、財産分与といった離婚に関するあらゆる条件について、一貫して専門的なアドバイスを受け、有利な条件で離婚を進めることができます。
離婚問題は、民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)、民法第768条(財産分与)、民法第877条(扶養義務者)など、多岐にわたる民法の規定や判例が絡み合います。
弁護士はこれらの法律を熟知しており、個別の状況に応じた最適な戦略を立てることができます。
「不貞をした側だから親権は無理だろう」「財産分与もほとんど受け取れないのでは」といった不安を抱えている場合でも、弁護士は有責配偶者であっても親権獲得や財産分与の権利があることを説明します。
そして、これまでの状況(育児や財産形成への貢献度など)を法的に評価し、離婚調停や裁判で有利な条件を引き出すための具体的なアドバイスや交渉をおこなうことができます。
不貞行為の拡散を予防できる
弁護士に依頼することで、不貞の事実が家族や職場、第三者に拡散されるリスクを最小限に抑え、あなたのプライバシーを守ることができます。
弁護士は相手方との交渉において、秘密保持条項を盛り込んだ示談書の作成を提案します。
また、不当な拡散行為に対しては、刑法上の名誉毀損罪(刑法第230条)や脅迫罪(刑法第222条)に該当する可能性を示唆するなど、法的な抑止力を働かせることができます。
「会社にばらすぞ」「SNSで暴露してやる」といった脅迫に対し、弁護士が法的措置を示唆して対応します。
弁護士が「そのような行為は名誉毀損罪に当たる可能性がある」と警告することで、相手方に冷静な対応を促し、情報の拡散を阻止することが期待できます。
また、示談成立の際には、今後のトラブル防止のため、不貞行為に関する一切の情報を第三者に開示しない旨の秘密保持義務を明記することで、将来的なリスクを軽減できます。
不貞行為の法的根拠|なぜ責任が生じるのか?
不貞行為は民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)に定められる不法行為にあたります。
第七百九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:e-Gov法令検索「民法第709条(不法行為による損害賠償)」
民法第752条の同居・協力及び扶助の義務は、夫婦間の貞操義務を含むと解釈されており、不貞行為はこの貞操義務に反する行為で、慰謝料請求の対象となります。
第七百五十二条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
引用元:e-Gov法令検索「民法第752条(同居、協力及び扶助の義務)」
また、民法第770条第1項第1号では、不貞行為は離婚の重大事由と位置づけられています。
第七百七十条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
引用元:e-Gov法令検索「民法第770条第1項第1号(裁判上の離婚)」
配偶者以外の異性と肉体関係を持つことは、これらの民法上の義務に違反する「不貞行為」と認められ、精神的苦痛を与えたとして、その配偶者から慰謝料を請求される法的責任が生じます。
一方で、食事に行っただけ、二人きりで会っただけなど、肉体関係を伴わない行為は、原則として法律上の「不貞行為」とは認められません。
判例から学ぶ|不貞行為の慰謝料問題で弁護士が果たす役割
不貞行為の慰謝料問題において、判例の傾向を熟知した弁護士は、あなたの状況を有利に進めてくれる心強い味方となります。
弁護士は交渉の中で具体的にどのような行動をしてくれるのか、実際の判例をいくつか挙げてご紹介します。
【判例1】夫婦関係がすでに破綻していたと判断され慰謝料請求が棄却されたケース
不貞行為があっても、その時点ですでに夫婦関係が破綻していれば、民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)に基づく不法行為は成立せず、慰謝料請求が認められない可能性があります。
【裁判要旨】
甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。
引用元:裁判所「最高裁判所 平成8年3月26日判決(最判平8・3・26民集50巻3号721頁)」
この判例では、夫婦の共同生活がすでに破綻していた場合、一方の不貞行為は他方配偶者の権利侵害とは言えないことを示しています。
このため弁護士は別居の事実や過去の離婚協議の記録などを収集し、不貞行為が夫婦関係破綻の原因ではないことを主張することで、慰謝料請求の棄却を目指すことが可能です。
【判例2】不貞行為の期間や程度が考慮され慰謝料が減額されたケース
不貞行為の期間や回数、悪質性が低いと判断される事情があれば、慰謝料額を減額できる可能性があります。
【相談の結果】
慰謝料を150万円減額
【得られたメリット】
結果、慰謝料の金額を50万円まで減額することができました。
【弁護士の対応】
ご相談者から不倫の状況を確認したところ、請求者と不倫相手は離婚していないこと、不倫相手と関係を持つ前、不倫相手から、妻とは離婚する予定で、別居中であると聞かされていたこと、交際期間は1か月にも満たず、肉体関係を持ったのは1回だけであることなど、いくつかのご相談者様に有利に働く事情があることが判明しました。
そこで、これらを軸として減額交渉を行いました。
引用元:ベンナビ離婚「不倫慰謝料200万円を50万円に減額」
「不貞行為の期間が短い」や「回数が少ないこと」を弁護士が主張することで、結果として請求額の大幅な減額が期待できます。
【判例3】婚姻関係の破綻に直結しない不貞行為と判断され慰謝料が低額に抑えられたケース
不貞行為が夫婦関係の破綻に直接結びつかず、影響が限定的と判断された場合、慰謝料額が低く抑えられる傾向にあります。
【相談の結果】
ご相談者様が浮気相手に聞いたところによれば、浮気相手の家庭は完全に冷め切っており、一緒に住んでいるとはいえ、会話がまったくないのはもちろんのこと、寝るのも食事も別々の部屋であるとのことでした。
このことから、すでに夫婦関係が破綻しているとの主張をして、その主張を理由づけする証拠を集めて交渉を進めた結果、大幅な減額に成功しました。
【弁護士の対応】
夫婦関係が破綻しているのであれば、不貞行為を行ったとしても損害がゼロであるため、慰謝料は支払わなくてもよいこととなります。
破綻しているとまで認められることはなかなか難しいですが、浮気相手の夫婦関係の状態によっては、請求額を減額することが可能となります。
引用元:ベンナビ離婚「高額の慰謝料を請求されたものの、損害を小さく抑え慰謝料の大幅減額を勝ち取りました!」
不貞行為が夫婦関係の破綻の主要な原因とは言えない場合、弁護士は、これらの事実を客観的な証拠とともに主張し、精神的苦痛の程度が限定的であることを示します。
これにより、慰謝料額を低額に抑えることを目指すことが可能です。
不貞行為を弁護士に依頼する際の注意点
弁護士に依頼する際には、いくつかの重要な注意点があります。
これらの点を怠ると、本来不要な慰謝料を支払ったり、不利な条件で示談を結んでしまうリスクがあるため、具体的にどのような点に注意すべきか見ていきましょう。
相手に有効な不貞行為の証拠があるか確認する
相手方が不貞の証拠を提示してきたとしても、それが法的に有効なものであるか、すぐに鵜呑みにせず、弁護士に確認してもらうことが重要です。
不貞行為の慰謝料請求は民法第709条(不法行為に基づく損害賠償)に基づくため、請求する側には不貞行為の事実を立証する責任があります。
肉体関係があったことを客観的に証明できる証拠がなければ、慰謝料請求は認められないか、大幅に減額される可能性があります。
客観的証拠の具体的な例としては、次のようなものが挙げられます。
- ラブホテルへの出入り写真
- 性行為を示すメッセージ
- 不貞を認めた録音
「浮気の証拠がある」と言われても、それがデートの写真や「好き」といったメッセージだけでは、法的に有効な「不貞行為」(肉体関係)の証拠とは認められない場合があります。
弁護士は、これらの証拠の法的な有効性を冷静に判断し、もし証拠が不十分であれば、その点を根拠に慰謝料の支払い義務自体を否定したり、減額交渉を進めることができます。
示談書などに安易にサインしない
相手方やその弁護士から示談書や合意書を提示されたとしても、内容を十分に理解し、必ず弁護士に確認してもらう前にサインすることは避けるべきです。
示談書は、一度サインしてしまうと、後から内容を争うことが非常に困難になる法的な拘束力を持つ文書です。
特に、法外な慰謝料額が設定されていたり、あなたのプライバシーを過度に侵害するような条件が含まれていたりすると、後々不利になる可能性があるため、弁護士に不当な条件が含まれていないかチェックしてもらう方が安心できます。
万が一、不利な条件が含まれている場合は、必要に応じて修正交渉を行いましょう。
すぐに慰謝料を支払わない
慰謝料を請求されたからといって、焦ってすぐに全額を支払うのではなく、まずは弁護士に相談し、適切な金額と支払い方法についてアドバイスを受けるべきです。
一度支払ってしまうと、後から「相場よりも高すぎた」「支払う義務がなかった」と判明しても、返還請求が困難になる場合があります。
民法第703条(不当利得の返還義務)に基づいて返還を求めることも可能ですが、手続きが複雑になる上、相手方が応じない場合は訴訟に発展する可能性もあります。
請求を受け、精神的に動揺している状態で、相手方の「すぐに支払わないと法的手段に出る」といった言葉に焦り、高額な慰謝料を振り込んでしまうケースがあります。
しかし、支払いの前に弁護士に相談すれば、「請求額が法的に妥当か」「そもそも支払い義務があるのかどうか」を冷静に判断してもらえます。
弁護士の交渉により、減額や分割払いが実現したり、場合によっては支払い自体が不要となることもあります。
不貞行為問題に強い弁護士を選ぶポイント
不貞行為問題で後悔しない弁護士選びは、いくつかの重要なポイントがあります。
あなたの不安を解消し、スムーズな問題解決に繋がる弁護士を探すためには、具体的にどのような点に注目すべきか解説します。
不貞行為問題で解決実績が多数ある
不貞行為問題の解決実績が豊富な弁護士を選ぶことが、あなたのケースを有利に進める上で非常に重要です。
不貞問題は法的知識に加え、交渉のノウハウや複雑な人間関係の調整能力が求められます。
実績が多い弁護士は、次のような強みがあります。
- 過去の経験から多様なケースに対応できる
- 慰謝料の相場観や裁判所の判断傾向を熟知している
- 予期せぬ事態にも冷静かつ的確に対処できる
例えば、類似した状況の不貞行為で、慰謝料を大幅に減額できた実績や、離婚問題で親権を獲得できた実績などがある弁護士なら、同様の結果を導き出す可能性が高いと言えるでしょう。
法律事務所のWebサイトの「解決事例」や「お客様の声」などを確認し、具体的にどのような問題で、どのような解決を得意としているかを確認しましょう。
初回相談時に直接実績について質問するのもひとつの方法です。
共感力があり相談者への説明が分かりやすい
法律の専門用語を避け、あなたの状況に寄り添い、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれる弁護士を選ぶべきです。
不貞問題は、法的な側面だけでなく、精神的にも大きな負担を伴います。
弁護士があなたの心情を理解し、専門用語を多用せずに、今後の見通しや手続きの内容、リスクなどを明確に説明してくれることで安心して問題を任せることができます。
初回相談の時、弁護士が次のような対応をしてくれるか確認しておきましょう。
- 話をじっくりと聞いてくれるか
- 質問に対して専門用語を使わず、具体的な例を交えながら説明してくれるか
- 「〇〇という場合は、このように対処できます」「この証拠だけでは少し弱いかもしれません」など親身になって説明してくれるか
もしも、話が一方的であったり、質問しにくい雰囲気であれば、信頼関係を築くのは難しいかもしれません。
費用体系が明確で事前に説明してくれる
弁護士費用について、着手金、報酬金、実費など、全ての費用が明確に提示され、契約前に詳細な説明がある弁護士を選ぶことが、後々のトラブルを避けるために不可欠です。
弁護士費用は決して安いものではなく、費用体系が不透明な場合、後から予期せぬ追加費用が発生してトラブルになることがあります。
透明性の高い費用体系は、弁護士の誠実さの証でもあるため、契約前に以下の点を確認しておきましょう。
- 「着手金はいくら」「報酬金は減額できた金額の何%」「実費は別途精算」など具体的な説明があるか
- 追加の費用が発生する可能性がある場合(例:裁判に移行した場合)についても事前に説明があるか
- 疑問点があれば遠慮なく質問できるか
「〇〇万円くらいで解決できると思います」という漠然とした説明だけでなく、具体的な費用の計算根拠や上限額についても確認することが重要です。
弁護士への相談から問題解決までの流れ
弁護士に依頼した場合、法的な手順に沿って段階的に問題解決を進めていきます。
一連の流れを把握しているほうが、実際にスムーズに対応できるため、ここでは弁護士への相談から問題解決までの具体的なステップについて詳しく解説します。
ステップ1:初回相談
まず弁護士に連絡し、あなたの状況を伝える初回相談から始まります。
この段階で弁護士は、あなたの抱える問題の法的な側面を把握し、今後の見通しや取りうる選択肢、費用について初期的なアドバイスを提供します。
多くの法律事務所では、初回30分から60分程度の無料相談を実施しています。
伝えるべきことの例としては、次のようなものが挙げられます。
- 不貞行為の経緯、期間、内容
- 相手方からの請求内容
- 手持ちの証拠
- あなたが希望する解決(慰謝料減額、離婚など)
弁護士はあなたの話から法的な争点や不利な点を洗い出し、解決案を提示してくれます。
相談をしたからといって、その場ですぐに契約する必要はありません。
弁護士との相性も考慮した上で、正式に依頼するかどうか判断しましょう。
ステップ2:弁護士との契約
初回相談後、弁護士に依頼することを決めた場合、弁護士と正式な「委任契約」を締結します。
この契約によって、弁護士はあなたの代理人として、法的な手続きや交渉を進める権限を得ることになります。
契約時に説明される主な内容には、次のようなものがあります。
- 委任する業務の範囲(示談交渉のみ、調停・訴訟対応まで含むか等)
- 弁護士費用(着手金、報酬金、実費等)
内容が記載された委任契約書や委任状が作成されるので、不明な点は必ず確認しましょう。
弁護士の守秘義務(弁護士法第23条)についても確認しておくと安心です。
契約書に署名・捺印し、着手金を支払うことで、弁護士は正式に活動を開始します。
契約内容をしっかりと理解し、納得した上で手続きを進めることが重要です。
ステップ3:相手方との交渉
弁護士との契約後、弁護士があなたの代理人として相手方との具体的な交渉を開始し、裁判外での話し合いによって示談による早期解決を目指します。
まず弁護士は相手方に対して「受任通知」を送付し、今後の連絡窓口を弁護士に一本化します。
これにより、あなたは相手方と直接やり取りをする精神的な負担から解放されます。
弁護士はあなたの主張や希望を法的に整理し、相手方に対して具体的な交渉を働きかけます。
交渉は書面や電話、面談でおこなわれます。
弁護士は過去の判例や法的な相場、そしてあなたのケースの具体的な事情を総合的に考慮し、あなたにとって最大限有利な条件で合意できるよう尽力します。
交渉がまとまれば、慰謝料額、支払い方法、清算条項、秘密保持条項などを盛り込んだ「示談書」を作成し、解決となります。
ステップ4:調停・訴訟
弁護士が相手方との交渉を重ねても、合意に至らない場合、裁判所を利用した「調停」や「訴訟(裁判)」を検討することになります。
調停には以下のような特徴があるため、まずは調停での合意を目指し、それでも問題が解決しなかった場合、最終手段として訴訟へ進むケースが多く見られます。
- 裁判官・調停委員が仲介役となる
- 話し合いによって円満な解決を目指す手続き
- 弁護士は代理人として同席し、有利な調停成立を支援する
- 調停内容は調停調書に記載され、確定した判決と同じ法的効力を持つ
- 手続きは非公開で、訴訟に比べて簡易かつ費用も比較的安く抑えられる
訴訟になると、最終的には裁判所が法的な判断を下すことになります。
弁護士は訴状・準備書面の作成、証拠収集、法廷での弁論などを行います。
弁護士に依頼していれば、これらの複雑で専門的な法的手続きについても安心して任せることができます。
あなたの状況や希望を考慮し、各段階で最善の戦略を立てて対応してくれるでしょう。
ステップ5:問題解決
弁護士による相手方との交渉、あるいは裁判所での調停や訴訟といった手続きを経て、最終的に不貞行為に関する問題が法的に解決されます。
慰謝料問題では次のような解決方法があり、慰謝料の支払い義務の有無やその金額などが法的に確定されます。
解決方法
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具体的な内容
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示談成立
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交渉がまとまり「示談書」を取り交わします。
慰謝料の金額、支払い方法、清算条項などが明確に記載され、双方が署名・捺印することで法的な拘束力が生じます。
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調停成立
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調停手続きで合意が得られた場合、「調停調書」が作成されます。
これは確定した判決と同じ効力を持ちます。
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訴訟上の和解
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訴訟の途中でも、裁判官から和解案が提示されるなどして「訴訟上の和解」が成立することがあります。
この場合も和解調書に記載され、確定判決と同様の効力を持ちます。
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判決
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訴訟で和解が成立せず、最後まで争った場合には、裁判所が「判決」を下します。
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いずれの形で問題が解決した場合でも、弁護士は解決内容が確実に履行されるよう最後までサポートし、あなたが新たなスタートを切れるよう後押ししてくれます。
まとめ|不貞行為で悩んだら、まずは弁護士の無料相談へ
不貞行為の慰謝料問題は、法と感情が絡む複雑な問題です。
高額請求、執拗な連絡、離婚や親権問題など、一人で抱えるには負担が大き過ぎます。
弁護士に依頼すれば、慰謝料の減額、精神的な負担の軽減、プライバシーの保護など不倫問題の解決に向けて大きなサポートを受けられます。
「費用が心配」という方もいらっしゃると思いますが、初回相談は無料としている事務所もあります。
一人で悩まず、専門家の助言で解決への一歩を踏み出しましょう。