離婚をするときに子供の親権や慰謝料、財産分与などで相手と揉めて、弁護士が必要となったときにかかる費用相場は、内容にもよりますが50~100万円ほどになります。
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公正証書とは、法律の専門家である公証人が作成する公文書のことです。
たとえば、離婚協議中の夫婦が様々な取り決めをしたとき、その内容を「離婚給付等契約公正証書」という形式にすることで、踏み倒しなどのリスクを回避できます。
本記事では、離婚給付等契約公正証書を作成するメリットや公証役場の手続きなどについて分かりやすく解説します。
「協議離婚は成立しそうだが、相手方が養育費を約束通りに支払ってくれるか不安」「協議離婚時は公正証書が重要と聞いたことがあるけれども、手続きや費用についてわからないことが多い」という人は、ぜひ最後まで参考にしてください。
公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことを指します。
公証人は、判事・検事・法務事務官などを長く歴任した者のなかから選ばれる、法律のスペシャリストです。
一般の私人が作成した私文書とは異なり、公正証書は一定の権限を有する公証人が作成した公文書なので、法的・社会的に高い信用力を有します。
離婚給付等公正証書とは、離婚時の合意内容をまとめた公正証書のことを指します。
具体的には、以下の項目に関する合意内容を記載するケースが一般的です。
離婚給付等契約公正証書で条項化する項目は、当事者間で自由に決められます。
盛り込む条項がうまくまとまらない場合などは、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
ここでは、夫婦間の口約束や私文書の形式ではなく、離婚給付等契約公正証書を作成するメリット4つを紹介します。
離婚給付等契約公正証書を作成するメリットのひとつは、きわめて強力な証拠となることです。
公正証書は法律の専門家である公証人によって作成されるため、夫婦間の合意が法的に問題ないかたちでまとめられています。
そのため、公正証書の作成後は、「言ってない」「聞いてない」といった水掛け論が生じることも基本的にありません。
裁判で争うことになった場合でも、公正証書を証拠として提出すれば、有利な判決に至る可能性が高くなります。
速やかに強制執行ができる点も、離婚給付等契約公正証書を作成するメリットのひとつです。
本来、離婚時の約束通りに養育費などが支払われなかった場合、裁判手続きを経てからでなければ強制執行に移ることはできません。
しかし、強制執行承諾文言を付した公正証書を作成しておけば、直ちに強制執行を進めることができます。
手続きに時間をかけてしまうと、支払ってもらえる可能性は低くなっていくので、速やかに強制執行ができることは大きなメリットといえるでしょう。
養育費や慰謝料などを約束通りに支払ってもらえないと、離婚後の生活基盤や子どもの生育環境が脅かされかねません。
離婚給付等契約公正証書を作成する際は将来のリスクに備えて、強制執行認諾文言を入れ込んでおきましょう。
離婚給付等契約公正証書の原本は、原則として20年間公証役場に保管されます。
そのため、紛失・盗難・改ざんのリスクは極めて低いといえるでしょう。
公正証書役場に行けば、当事者間で合意形成した正確な内容を確認できます。
離婚時の約束事を離婚給付等契約公正証書の形式にしておけば、支払義務などを課された側に心理的なプレッシャーを与えることが可能です。
公正証書に強制執行承諾文言を付与した場合、支払遅延などが生じたときには直ちに強制執行に着手できます。
そのため、相手からすると「公正証書を作成したから踏み倒しはできない、約束通りにしっかり支払おう」という動機付けになることも多いです。
金銭のやりとりに関して相手方を信用できない場合は、できるだけ強制執行文言付きの公正証書を作成するようにしましょう。
離婚給付等契約公正証書を作成するときの流れは以下のとおりです。
ここでは、各ステップについて解説します。
まずは、離婚における協議を進めるなかで、公正証書に記載する合意案を作成してください。
離婚給付等契約公正証書は、あくまでも当事者の合意を前提に作成するものであり、公証人に対してもまずは合意案を提示する必要があります。
当事者間に紛争がある場合、その仲裁はしてもらえないため、注意が必要です。
離婚給付等契約公正証書へ記載するべき代表的な項目は以下のとおりです。
項目 | 主な記載内容 |
---|---|
財産分与 | 財産分与の対象・分与割合・配分方法 |
親権者 | 親権者・監護権者の指定 |
養育費 | 金額・支払方法・支払期間 |
面会交流 | 面会交流の頻度・時間帯・引き渡し場所(子どもによって分ける場合はそれぞれに記載) |
離婚慰謝料 | 金額・支払方法・支払期限 |
年金分割 | 分割割合 |
強制執行認諾文言 | 未払いが生じた場合は強制執行に移行できることを記載 |
清算条項 | 公正証書の記載内容以外に債権債務関係がないことを記載 |
離婚給付等契約公正証書に記載するべき内容は、離婚当事者の状況によって異なります。
公証人は中立の立場ですので、自分に有利な記載をするように求めたり、夫婦間の争いを仲裁したり、こうすべきという判断を示してくれたりするわけではありません。
何を記載するべきか判断が難しい場合、夫婦間に記載する内容や金額について争いがある場合は、協議段階から離婚問題を得意とする弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は公正証書案を作って提示してくれますので、それを基に夫婦間で協議を進めることもでき、話し合いもスムーズになることがあります。
離婚給付等契約公正証書作成時に準備するべき書類の代表例は以下のとおりです。
書類の準備が間に合わず、公正証書化の手続きが遅れることにはデメリットしかありません。
離婚時の合意内容を公正証書化するときに必要な書類は、公証役場に問い合わせたり弁護士に相談したりすればすぐにわかるので、時間に余裕をもって準備を進めてください。
経験の豊富な弁護士であれば、各書類の取り寄せに必要な期間の目安を含めてアドバイスを受けられます。
一部の書類については取り寄せを代行してくれたり、取り寄せの難しい書類の代替案を示してくれますので、準備期間を短縮できたり、準備が容易になるという利点があります。
離婚当事者間で合意案を作成して、必要書類の準備が終わったら、公証役場に離婚給付等契約公正証書の作成を申し込みます。
公証役場は全国にありますが、受けられるサービスは基本的にはどこも同じです。
離婚給付等契約公正証書を作成するには公証役場まで足を運ぶ必要があるので、できるだけ通いやすい公証役場を選択するのも一つの方法です。
弁護士に依頼した場合、公証役場への申込、公証役場とのやり取り、必要な書類の公証役場への提出などもすべて代行してくれますので、当日一回だけ、公証役場に行くだけで公正証書が作成できます。
どの公証役場に依頼するか迷う場合も、弁護士ですと、ある程度どういった公証人が近隣にいるかを把握していますので、弁護士に相談してみましょう。
公正証書の作成を申し込むと、公証人と面談の機会が設けられます。
そこで当事者間の合意内容を伝えて関係書類を提出すれば、公証人が離婚給付等契約公正証書案を作成してくれます。
公正証書案が完成した段階で公証人から連絡があるので、公証役場に出向いて説明を受けましょう。
場合によっては、メールで公正証書案を送ってくれることもあります。
なお、公証人は中立の立場であり、一方の当事者の利益を最大化するためのリーガルサービスを提供してくれるわけではありません。
そのため、公証人とやり取りする手間を省きたい、公正証書の内容について不安がある、自身に有利な離婚給付等契約公正証書を作成したいなら、事前に弁護士に相談して記載内容を整理し、公正証書案の作成を弁護士に依頼しておくとよいでしょう。
公正証書案のチェックを経て記載内容が固まったら、公正証書作成日時が指定されます。
当事者双方が公証役場に出頭し、離婚給付等契約公正証書の作成手続きをおこないます。
基本的にはその場で最終確認をおこない、署名捺印すれば公正証書が完成します。
なお、公証役場は平日日中しか開所していないので、本人が出頭できないときには代理人を立てることも可能です。
ただし、代理人に出頭を依頼する際には、別途委任状などの準備が必要なので注意してください。
弁護士に依頼する場合、委任状の作成などをすべて代行してくれますので、署名押印をするだけで手間はかかりません。
次に、離婚給付等契約公正証書の作成に要する費用を紹介します。
離婚給付等契約公正証書を作成する場合、公証役場に公証人手数料を支払わなければなりません。
公証人手数料の金額は、公正証書で契約する金額によって決定されるルールです。
具体的には、以下の価額表に基づいて公証人手数料が決まります。
目的の価額 | 金額 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円超200万円以下 | 7,000円 |
200万円超500万円以下 | 1万1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万7,000円 |
1,000万円超3,000万円以下 | 2万3,000円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 2万9,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 4万3,000円 |
1億円超3億円以下 | 4万3,000円に、超過額5,000万円までごとに1万3,000円を加算した金額 |
3億円超10億円以下 | 9万5,000円に、超過額5,000万円までごとに1万1,000円を加算した金額 |
10億円超 | 24万9,000円に、超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した金額 |
たとえば、「子ども1人に養育費として月額3万円を15年間支払う」という内容の離婚給付等契約公正証書を作成する場合、目的の価額は「3万円 × 12か月 × 15年間 = 540万円」と算出されます。
公証人手数料は、完成した離婚給付等契約公正証書の正本・謄本を受け取るときに現金で支払うのが一般的です。
事前に公証役場から費用について連絡があるので、公正証書の作成日に必ず公証役場に持参してください。
なお、離婚給付等契約公正証書の内容次第では、公証人手数料が高額になる可能性があるため、離婚当事者間で公証人手数料の費用負担についても事前に相談しておくことをおすすめします。
離婚給付等公正証書以外に、公証人手数料以外で必要となる費用は以下のとおりです。
手数料の種類 | 金額 |
---|---|
確定日付の付与 | 1通につき700円 |
執行文の付与 |
債務名義の正本に執行分を付与する場合は1,700円。 事実到来執行文・承継執行文などについては1,700円加算。 |
正本・謄本の送達 | 1,400円 |
送達証明 | 250円 |
正本・謄本の交付 | 1枚につき250円 |
証書原本及びその付属書類の閲覧手数料 | 1回につき200円 |
電子公証 |
・電磁的記録の保存:300円 ・日付情報の付与:700円 ・情報の同一性に関する証明:700円 ・同一の情報の提供:700円(書面による交付の場合、1枚につき20円加算) |
ここでは、離婚給付等契約公正証書を作成するときの注意点を3点紹介します。
離婚給付等契約公正証書を作成する際は、原則として夫婦両者がそろって立ち会う必要があります。
なぜなら、公証人は夫婦それぞれの意見を確認しながら、公正証書を作成するからです。
また、最終的な公正証書には、双方が署名捺印する必要があります。
ただし、当事者本人が立ち会えない特殊な事情がある場合には、公証人が認めたときに限って、例外的に代理人が出頭できます。
ただし、弁護士による代理については、ほぼ例外なく代理による調印が認められます。
代理人によって離婚給付等契約公正証書を作成するときには、別途必要書類が追加されるので、公証役場からの指示に従ってください。
なお、公正証書の作成を申し込むだけであれば、夫婦のどちらか一方でも手続きを進められます。
相手が反対している場合は、離婚給付等契約公正証書を作成することができません。
公正証書の作成にあたっては、夫婦の同意があることを公証人から確認されるうえ、最終的には公正証書の内容について公証人から説明を受け、双方が納得したうえで署名捺印をおこなう必要があります。
実際、支払い義務を負う側が責任を回避するために、公正証書の作成を拒否してくるケースも少なくありません。
とはいえ、嫌がる相手に対して強引に同意を求めると、関係性がさらに悪化するおそれがあります。
そのため、公正証書化は難しくとも、離婚協議書は作れるという状況であれば、ひとまず離婚協議書を作成しておき、あとで公正証書化に向けた話し合いを進めることも選択肢に入れておくとよいでしょう。
離婚協議書の作成も応じてもらえない場合は、離婚の交渉から弁護士に相談することをおすすめします。
公正証書の作成には、手間と時間がかかる点にも注意が必要です。
離婚給付等契約公正証書を作成するには、「当事者間で合意書の作成→公証役場へ申し込み→公証人との面談→原案の作成→契約手続き」というプロセスを経なければいけません。
夫婦の話し合いや公正証書の作成作業がスムーズに進んだとしても、3週間から4週間程度はかかるものと考えておきましょう。
また、公証役場が開所しているのは平日の日中のみです。
そのため、仕事が忙しい場合などは、原案の確認や署名捺印の手続きを円滑に進められない可能性があります。
弁護士に依頼すると、公正証書案の作成から公証役場とのやり取り、必要書類の一部の取り寄せや公証役場への提出等を代理でおこなってもらうことができます。
円滑な離婚の成立に向けて、弁護士に依頼することも検討しましょう。
さいごに、離婚給付等契約公正証書に関する質問をQ&A形式で紹介します。
離婚給付等契約公正証書といえでも、常に100%の法的有効性が存在するわけではありません。
たとえば、以下の事情があると、離婚給付等契約公正証書が無効になる可能性があります。
ただし、公正証書は公証人の厳格なチェックのもとで作成されるので、無効となるケースはほとんどありません。
離婚給付等契約公正証書の修正・取消しは、原則として認められません。
そのため、公正証書の作成後に記載内容を変えたい場合は、基本的に一から作り直すことになります。
ただし、内容そのものに変更はなく、軽微な誤字脱字・誤記の修正であれば、公証人による「誤記証明」で対応できます。
また、補充や一部修正の範囲にとどまる程度であれば、「更正証書」「補充証書」を作成するという手段も考えられます。
とはいえ、公正証書の作り直しや更正証書・補充証書の作成には手数料がかかるうえ、書類の準備も必要です。
あとで余計な手間と時間を費やすことのないよう、公正証書の記載内容については夫婦間で十分に話し合っておきましょう。
離婚給付等契約公正証書に有効期限は存在しません。
そのため、離婚給付等契約公正証書を作成すると、その内容は半永久的に法的効力を有すると考えられます。
また、離婚給付等契約公正証書は原則として20年間公証役場に保管されるので、契約内容があとから歪められるリスクも極めて低いです。
そのため、離婚時の合意内容を客観的に証明できる状況を作り出したいなら、多少時間・労力を要するものの、離婚給付等契約公正証書を作成しておくことを強くおすすめします。
離婚時には、慰謝料・養育費・面会交流などについて協議を進めて合意形成をする必要があります。
しかし、離婚後しばらく経過すると、元夫婦それぞれの感情や関係性、環境も変化していきます。
最初は約束を守るつもりでいた離婚当事者も、いきなり気持ちが代わって、約束を反故にするケースは少なくありません。
そのため、当事者間の話し合いで決まったことは、離婚給付等契約公正証書にまとめておくことをおすすめします。
とはいえ、公正証書の作成にあたっては様々な手続きが必要になるので、少しでも不安がある場合は弁護士に相談してみるとよいでしょう。
弁護士に相談・依頼すれば、公正証書に記載すべき内容について助言してもらえ、自分の利益を最大化する方法について相談ができるほか、公正証書案を事前に確認したうえで他方の配偶者に提示することができたり、公証役場とのやり取りを任せられたり、代理で公証役場に出頭してもらうこともできます。
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