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婚姻費用分担とは、離婚前に配偶者と別居をすることになったとき、経済的な不安を解消するために生活費などを請求できるものです。
この婚姻費用を請求するためには、調停と審判の2つがありますが、どちらの方が有利なのか?と悩む方もいるでしょう。
本記事では、審判と調停の違いを解説したうえで、どちらのほうがメリットがあるかを解説します。
婚姻費用分担請求の調停が不成立に終わった場合、案件は自動的に審判に移行します。
審判では調停のように当事者双方による合意は必要なく、裁判官が当事者にとって公平な決断を下し、解決を図ります。
それぞれについて、くわしく解説します。
婚姻費用分担請求調停において当事者間の話し合いで合意が成立する見込みがない場合、調停手続きは不成立となり終了し、審判手続きへと自動的に移行します。
審判ではこれまでに明らかになった事情や当事者の主張をもとに、追加の資料がある場合はそれらも併せて裁判官が検討し、相当と認められる決定を当事者に命じます。
つまり調停段階での主張は審判にも影響するため、調停の時点から審判へ移行した際に自分にとって有利になるような証拠や主張を示すよう、慎重な対応が必要です。
そのため弁護士に依頼するならできるだけ早い段階で相談し、調停が不成立となって審判に移行する場合も想定して、最初から見通しを立てるのが懸命な方法です。
調停と審判の一番の相違点は、調停はあくまで当事者間での「話し合い」の場であり、審判手続きは裁判官が最終的に「審判」という決定を下す点にあります。
調停では当事者間で合意が得られなければ不成立という結果に終わりますが、審判では裁判官が審判決定を言い渡すことで決着します。
審判においても、裁判官から「これくらいの金額でどうか?」と提案される場合があり、その条件で合意ができた場合には調停が成立することもありますが、最終的には、審判という命令により必ず婚姻費用(生活費)に関する結論がでます。
婚姻費用分担請求調停の申し立てから調停の終了、審判へ移行するまでの流れは以下のとおりです。
流れに沿って、婚姻費用分担請求調停について解説していきます。
調停の申し立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者双方の合意で定めた家庭裁判所に対しおこないます。
婚姻費用分担請求調停の申し立てに必要な書類や収入印紙・郵券(切手)を準備します。
申立手数料の印紙額は全国一律ですが、書類の郵送などに使用する郵券代は家庭裁判所によって違うので、提出する裁判所へ確認が必要です。
申立書の提出は、裁判所への持参でも郵送でも可能です。
調停の申し立て受理後、2週間程度で申立書の写しと調停期日通知書が裁判所から当事者双方に送付されます。
第1回調停期日は申し立てから約1ヵ月~1か月半程度の時期で、申立人の都合のいい日を優先に設定できます。
第1回調停期日には当事者双方ともに裁判所へ行き、調停に出席するのが原則です。
調停では当事者は別々の待合室で待機し、調停室にも時間別に入ります。
同席することで感情的になるのを防ぐため、調停で当事者が顔を合わせることはありません。
調停室では調停委員2名が双方の話を聞き、話し合いを進めます。
1回の調停で合意が成立しない場合は、第2回・第3回と調停は続きます。
婚姻費用分担請求調停で、調停委員から受ける質問は主に次のような内容です。
これらを前もって想定し、ほかに調停委員に伝えておきたいことなどを書き出すなどして、自分の主張を整理しておきましょう。
話し合いを重ねた結果、双方の合意が得られれば調停成立によって終了となります。
調停成立後は「調停調書」が作成されます。
調停調書は裁判における「判決文」と同じように法的効力をもつため、相手方が合意結果に従わなかった場合に「強制執行」の手続きをおこなうことも可能です。
強制執行では、相手方の預貯金や給与を差し押さえることにより、滞納分の婚姻費用を回収できます。
調停はあくまで話し合いの場であるため合意を強制されることはなく、合意が得られなかった場合には調停不成立という結果になり、審判手続きに自動的に移行します。
当事者には調停の不成立が告げられ、審判手続きについて説明されたあと、審判期日が指定されます。
婚姻費用分担請求調停のメリット・デメリットとしてあげられるのは以下のとおりです。
メリット |
デメリット |
・双方納得の金額で合意できる ・合意があるので不払いやトラブルが起きにくい
|
・一度決定した金額の変更が困難 ・双方の合意がないと成立しない |
メリット・デメリットの内容について、くわしく解説します。
調停は話し合いにより解決案を導き出すため、決定した婚姻費用は双方が合意した金額です。
双方納得のうえでの決定なので、相手方の不払いなどのトラブルが起きにくいのがメリットです。
また、調停では双方が合意する限り任意に金額を決められるため、審判で決定される相場(「審判へ移行するデメリット」参照)よりも高い金額での合意が期待できる点も、調停で合意するメリットといえます。
調停で成立した金額は双方が合意したうえでの結果なので、あとからの変更が難しいのがデメリットです。
将来的な婚姻費用の増減額請求が認められにくく「合意当時予測できなかった重大な事情変更」というやむを得ない場合に限って認められることになります。
調停で婚姻費用の金額を決定する際には、慎重さが必要です。
調停と同じように、婚姻費用分担請求審判にもメリット・デメリットがあります。
メリット |
デメリット |
・合意が得られなくても金額を決定できる ・調停が長期化している場合は審判の方が早い |
・調停での提示金額を大幅に下回る可能性がある ・感情的なわだかまりが残ることがある |
それぞれについて詳細をみてみましょう。
審判は双方の主張などを考慮したうえで裁判官が決定を下すため、相手方の合意がなくても婚姻費用の金額を決定できます。
金額の合意が得られず調停が長引いている場合は、審判に移行することで早期の解決が図れます。
審判の場合、婚姻費用の金額はほとんどの場合において「婚姻費用算定表」をベースに決定されます。
自分に有利な主張を展開しても裁判官がその主張を採用するか分からず、結果的に希望していた金額よりあきらかに低い金額で決定されることもあります。
また調停による双方合意の金額とは違い相手方にとって不満のある金額だった場合、不払いなどのトラブルが起きやすくなります。
強制執行により未払い額の回収は可能ですが、手続きの手間などの負担は避けられません。
調停で合意すべきか審判へ持ち込むべきかの判断の目安のため、調停で注意すべき点について次の2つをあげて解説します。
調停委員になるために特別な資格は必要ありません。弁護士が担当することもありますが、地域の各種団体からの推薦を受けた人物や同じ地域の民生委員が選任される場合もあります。
そのため、必ず法律的な見地での判断をできるプロが担当するわけではありません。
調停委員の仕事は当事者間で合意させることなので、審判へは移行させないようにする傾向もみられます。
調停委員に任せすぎることで不利益を被ることがないよう、注意が必要です。
調停委員は調停をスムーズに進めるため、あくまで中立な立場から当事者間の調整を図り、解決へ向けたアドバイスをします。
主張すべきことを本人が述べなかった場合、不相応な結果になることがわかっていても、調停委員から主張すべきだという提案はされません。
またいくら中立な立場とは言え一般市民であり、裁判官ほどの中立は保てません。
当事者の主張を聞くうちに、どちらか一方へ気持ちを寄せてしまう可能性があります。
実情として、調停委員を味方につけたほうが有利といえます。
感情的になり、調停委員に文句を言う等、調停委員に対して与える印象には注意しましょう。
婚姻費用分担請求調停が不成立で終了し、審判に移行してから審判結果が出されるまでの流れは、以下のとおりです。
全体的には調停と似た部分がありますが、審判ならではの箇所もあるので順を追って解説します。
当事者が同時に調停室に呼ばれ調停が不成立で終了したあと、裁判官から審判についての説明を受け審問期日が指定されます。
当事者を同席させられない場合は、個別で同じことがおこなわれます。
審問期日は、調停が不成立で終了した日から2週間~1ヵ月程度の時期で指定されるのが一般的です。
裁判所の時間に余裕があり、追加の主張もなく十分な資料が集まっている場合には、調停終了後にそのまま審問がおこなわれる場合があります。
審判では調停で提出された資料を使用しますが、追加の主張や資料がある場合は審問期日の1週間前までには裁判所と相手方に提出しておきます。
審問期日には、調停のように当事者同士が顔を合わせないようにする流れはなく、同時に同じ部屋に呼ばれ裁判官から審問を受けます。
審判では話し合いは想定されていないため、裁判官が審判を出すための必要な主張書面や資料の確認を、双方に対しておこないます。
裁判官が審判を出せると判断するまで審問期日は続きますが、通常の審問は1回~2回程度です。
審判期日に当事者が出頭して言い渡しを受けることはほぼなく、通常、審判結果は当事者双方へ郵送により告知されます。
審判結果が出るのは、最終の審問期日から1~2ヵ月後です。
調停の不成立とは違い、審判では婚姻費用の支払いが必ず命じられます。
審判が出ると「審判書」が作成され、これにより婚姻費用の未払いなどがあった際には強制執行が可能になります。
審判結果に不服がある場合は、審判書を受け取った翌日から2週間以内に、高等裁判所に対し「即時抗告」による不服申し立ての手続きをおこないます。
さらに上位の裁判所に判断を求めるための手続きです。
ただし即時抗告において注意すべき点は、家庭裁判所で出た審判よりも不利な結果が出る場合があることです。
そのため調停から審判への移行と同様に、不服申し立てにも慎重さが求められます。
当事者のどちらも即時抗告をせず家庭裁判所での審判を受け入れる場合は、審判書を受け取った日から2週間で審判が確定し、婚姻費用分担請求の審判は終了します。
自分だけで調停や審判に臨んだ場合、主張や発言の取り消しができなかったり、判断を間違って不利な結果に終わったりする可能性があります。
できるだけ早い段階で弁護士に相談してアドバイスを受けることで、自分で対応するより早期に満足いく結果が得られる可能性が高いので、是非検討してみましょう。
弁護士に依頼すれば、次のようなメリットが得られます。
法律に対して不安がある場合や、自分の不利な条件になってしまいそうだと感じる場合は、早い段階で弁護士に相談しましょう。
当事者間のみの話し合いの時点で弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として相手方と交渉するため、最も早い段階で婚姻費用を獲得できる可能性があります。
調停に発展した場合も調停期日に弁護士が同席するため、調停委員に対しても法律の専門家としての見地で、依頼人が有利になるようサポートするので心強いです。
調停と審判のどちらで決着をつけるかについても、調停の段階で相手方に話し合う意思が感じられず協力的でないと判断すれば、弁護士は早い段階で調停を不成立で終了し、審判へ移行させます。
審判の場で裁判官に対し適正な金額が受け取れるよう主張を展開し、円滑に有利な結果を導き出すことが可能です。
弁護士のサポートがあれば無駄な時間や労力を削減でき、満足のいく婚姻費用を受け取れます。
弁護士はいつでも依頼人の味方なので、問題を自分ひとりで抱え込まず、適切に弁護士に相談して早期解決を目指しましょう。
離婚請求について同時に進行していたり、婚姻費用のあとに進めたりする場合も、弁護士に依頼していればアドバイスがもらえます。
有利な条件で離婚するため、相手方の言い分や条件が妥当なのか・現在の提示よりよい条件で離婚するにはどうするべきか、弁護士のサポートを受けることで離婚についても有利な結果を得られる可能性が高まります。
婚姻費用は、別居後や離婚後の生活費として、生きていくために必要な大事なお金です。
子どもが一緒の場合、なおさら重要になってきます。
相手方ともう会いたくない・これ以上言い争いをしたくないなどの理由で、婚姻費用の請求をためらっている方もいるかもしれません。
そんなときこそ、弁護士を頼ってみましょう。
弁護士は依頼者の味方となり、有利な結果を得るため常にサポートしてくれる心強い存在です。
もらう権利のあるお金を最大限に有利な額で手にするため、まずは法律事務所の初回相談から始めるなど、臆せずに利用してみてください。
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