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強制認知で母親が負ける場合とは?強制認知の流れも解説

強制認知で母親が負ける場合とは?強制認知の流れも解説

「子どもの父親に認知してもらえない」というときに、父親に強制的に子どもの存在を認知させることができるのが「強制認知」の手続きです。

しかし、証拠が不十分なまま申立てをおこなうと、認知が認められないこともあり得るため、慎重な準備が必要です。

本記事では、強制認知で母親が負ける可能性があるケースを具体的に解説しつつ、手続きの流れや弁護士に依頼するメリットについても紹介します。

不安を抱えたまま動き出すのではなく、適切な知識を備えたうえで、子どもの権利を守るための第一歩を踏み出しましょう。

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強制認知で母親が負ける場合とは?

強制認知とは、父親が子どもの認知を拒んでいる場合に、家庭裁判所を通じて法的に認知を求める手続きです。

しかし、申立てをすれば必ず認められるわけではなく、状況によっては「母親側が負ける=認知が認められない」こともあります。

具体的には、以下のいずれかのケースにあてはまる場合は、強制認知で母親が負ける可能性もあるので注意しましょう。

  • DNA鑑定を相手から拒否され、相手が父親であるとの証拠を示せない場合
  • 子どもと子どもの直系卑属が全員死亡している場合
  • 父親の死亡から3年が経過している場合

それぞれのケースについて、根拠を含めて詳しく解説します。

DNA鑑定を相手から拒否され、相手が父親であるとの証拠を示せない場合

強制認知を申し立てる際は、父親と子どもとの間に実際の血縁関係があることを、客観的な証拠によって立証する必要があります。

その際、もっとも有力かつ確実な証拠とされるのがDNA鑑定の結果です。

DNA鑑定は、親子間の遺伝的関係をほぼ100%に近い精度で明らかにできるため、認知の審理において非常に重要な役割を果たします。

しかし、実際の手続きでは、父親側がDNA鑑定を拒否するケースも少なくありません。

そして原則として、家庭裁判所は相手方にDNA鑑定を強制する権限を持っていないため、相手の協力が得られなければ、鑑定を実施できないまま審理が進むことになります。

このような場合には、DNA鑑定以外の証拠を提出して、父子関係の存在を示さなければなりません。

具体的には、以下のような資料が有力な証拠として扱われることがあります。

  • 妊娠当時に継続的な肉体関係があったことを示すLINEやメールのやり取り
  • 妊娠を報告した際の反応や同意を示すメッセージ
  • 周囲の証言や交際の事実を知る第三者の陳述書

こうした証拠を積み上げることで、DNA鑑定がおこなえなくても認知が認められる可能性はあります。

一方で、これらの客観的な証拠が不足している場合は、裁判で母親側の主張が認められず、敗訴に至るリスクを否定できません。

ただし、相手がDNA鑑定を拒否するという行為自体が、裁判官にとっては「鑑定をされると不利になる事情があるのでは」と受け取られることもあります。

そのため、拒否の姿勢がかえって父子関係の存在を強く裏付ける要素として判断される可能性もあります。

結果的に、証拠や状況次第ではDNA鑑定なしでも強制認知が認められるケースもあるため、諦めずに戦略的に対応していくことが重要です。

子どもと子どもの直系卑属が全員死亡している場合

認知請求は、子ども本人、あるいは子の直系卑属(父親から見て孫やひ孫)によっておこなうことができます。

子ども本人の母親も、子どもの法定代理人として認知請求が可能です。

しかし、ごくまれなケースではありますが、子ども本人およびその直系卑属が全員死亡している場合、民法上、認知を請求する法的資格が消滅することになります。

このような状況では、たとえ生前に父子関係を立証できる証拠があったとしても、訴訟や審判を提起すること自体が認められず、認知請求は却下されることになります。

認知には、相続権や戸籍上の親子関係の確定といった重要な意味があるため、相続や家庭的な事情の整理のために亡くなったあとに認知請求を考えるケースもありますが、請求権を持つ者が存在しなければ認知は成立しない点に注意が必要です。

強制認知を検討している場合は、できるだけ早い段階で手続きを開始するのがよいでしょう。

父親の死亡から3年が経過している場合

父親が亡くなっている場合でも、その相続人を相手方として強制認知の申立ては可能です。

ただし、民法787条では「父の死亡を知ってから3年以内」に認知請求をおこなわなければならないと定められています。

この3年という期間を過ぎてしまうと、原則として認知請求は認められません。

実際、父親の死後に子どもの存在が明らかになるケースもありますが、その場合でも「死亡を知った時点」から3年以内に裁判手続を開始する必要があります。

もし父親の死亡を知った段階で認知を検討している場合は、速やかに弁護士に相談し、手続きを開始するべきです。

強制認知のおおまかな流れ

強制認知によって父子関係が認められれば、父親の戸籍に子どもが記載され、法律上の親子関係が成立します。

ただし、認知に至るまでにはいくつかの段階があり、いきなり訴訟を起こすわけではありません。

強制認知に至るまでのおおまかな流れは、以下の4ステップに分けられます。

  1. まずは任意での認知を相手に求める
  2. 認知調停を申し立てる
  3. 認知訴訟を提起する
  4. 認知届を提出する

それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。

1.まずは任意での認知を相手に求める

強制認知の手続きを進める前には、まずは話し合いによる「任意認知」を求めることが基本です。

任意認知とは、父親が自ら子どもを認知することに同意し、役所に認知届を提出してくれるケースを指します。

裁判所を通した強制認知よりも、時間や費用、精神的負担を抑えられる穏やかな方法です。

妊娠中でも出産後でも任意認知は可能で、父親が応じてくれれば裁判を起こす必要はありません。

認知が成立すれば、子どもは法律上、実父の戸籍に記載され、相続権などの権利も保障されます。

ただし、相手が話し合いに応じなかったり、認知を拒否したりする場合には、次のステップに進む必要があります。

2.認知調停を申し立てる

任意認知に応じてもらえない場合、いきなり裁判を起こして強制認知に踏み切るのではなく、家庭裁判所に「認知調停」を申し立てます。

認知調停とは、第三者である調停委員を介して当事者同士が話し合い、認知について合意できるかどうかを探る手続きです。

調停認知を申し立てる際は、父親の住所を管轄する家庭裁判所か、父親と母親で決めた家庭裁判所に、認知調停の申立書や父と子の戸籍謄本などの必要書類を提出します。

また申立ての際は、主張の根拠として交際の事実や妊娠時期の状況を示す陳述書や、DNA鑑定の申し出などの証拠の提出を求められるのが一般的です。

相手が納得して認知に応じれば、調停調書により認知が成立します。

相手が出頭しなかったり、話し合いがまとまらなかった場合には不成立となり、次のステップである訴訟へ進むことになります。

3.認知訴訟を提起する

調停が不成立となった場合には、家庭裁判所に対して「認知請求訴訟」を提起します。

訴訟においては、調停とは異なり生物学的な父子関係の存在を立証していく必要があるため、DNA鑑定を前提として進めるのが一般的です。

ただし、DNA鑑定を強制することは裁判所でもできないので、父親がDNA鑑定を拒否した場合は以下のような観点から生物学的な父子関係の存在立証を試みる必要があります。

  • 子の母親との間に性交渉があったことを示す客観的事実
  • 血液型
  • 指紋や顔貌などの人類学的データ
  • 父親と似た行動の有無(認知的行動)

上記のような証拠を提示したけ結果、裁判所が父子関係を認めた場合、判決で認知が命じられます。

この判決が確定すれば強制認知は成功となり、父親の意思にかかわらず、法的な親子関係が成立します。

4.認知届を提出する

認知の判決が確定すると、次は「認知届」の提出が必要です。

認知届は原則として父親が提出すべきものですが、強制認知の場合は、判決文の写しと確定証明書を添えて、母親または子ども側が市区町村役場に届け出ることになります。

届け出が受理されれば、子どもの戸籍に父親の名前が記載され、法的な親子関係が確定します。

強制認知の場合は、判決の確定日から10日以内に認知届を提出しなくてはならないため、速やかに手続きをおこないましょう。

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強制認知の手続きについて弁護士に相談・依頼するメリット

強制認知は、複雑な手続きが必要となるだけでなく、感情面でも大きな負担があり、当事者だけで解決するのは困難な問題です。

そのため、基本的には自力で手続きを進めるのではなく、弁護士に依頼することをおすすめします。

ここでは、強制認知の手続きを弁護士に相談・依頼するメリットについて、詳しく見ていきましょう。

個々の状況にあわせ最適なアドバイスをしてもらえる

強制認知に必要な手続きや証拠はケースによって異なります。

たとえば、DNA鑑定が可能かどうか、交際の事実を裏付ける証拠の有無があるかどうかなど、状況によって取るべき手続きや戦略は違ってくるのです。

その点、弁護士に相談すれば、こうした個別の事情を踏まえたうえで、どの段階からどのように手続きを進めるべきか、また勝訴の見込みがあるかなど、法的な視点から冷静な判断を仰ぐことができます。

誤った進め方をして時間や費用を無駄にしてしまうリスクを避けるためにも、初期段階から弁護士のアドバイスを受ける意義は大きいでしょう。

煩雑な手続きを弁護士に任せられる

強制認知には、認知調停の申立書作成や証拠の整理、認知訴訟の提起・主張立証、さらには認知判決後の届出まで、多くの手続きが伴います。

特に訴訟に発展した場合は、訴状作成や口頭弁論の出廷なども含まれ、専門的な知識が要求される場面が多くなります。

そのため、これらの手続きを一人でこなすのは難しいのが現実です。

また、専門知識がなければミスや不備が生じてしまうおそれもあります。

その点、弁護士に依頼することで、必要な書類の作成や提出、証拠の収集・整理、裁判所とのやり取りなど、全ての煩雑な手続きを任せることが可能です。

精神的・肉体的ストレスを軽減できる

不倫・認知といった家庭内の問題は、当事者にとって非常に大きな精神的ストレスを伴います。

相手が認知を拒み、裁判を起こさなければならないという状況は、精神的にも肉体的にも大きな負担です。

弁護士に依頼することで、相手との直接のやり取りを代行してもらえるため、感情的な衝突を避けることができます。

また、裁判所の手続きに関する不安やプレッシャーも軽減され、安心感を得られるでしょう。

親として子どもを守りたいという強い思いがある一方で、手続きの重圧に押し潰されないよう、自分自身を守る意味でも弁護士のサポートは有効です。

強制認知が成功する確率を高められる

強制認知が認められるには、父子関係を証明する証拠の提示が必要不可欠です。

特にDNA鑑定を実施できない場合や、相手が強く争ってくるケースでは、状況証拠をいかに組み立てて裁判官に提示するかがカギを握ります。

弁護士は、どのような証拠が有効かを的確に判断し、戦略を立てたうえで手続きを進めてくれます。

また、相手方が提出する主張への反論も、法的根拠に基づいて適切に対応してくれるため、勝訴の可能性を高めることができます。

つまり、弁護士に依頼することで、単に手続きを代行してもらうだけでなく、より確実に認知を実現させるためのサポートを受けられるのです。

強制認知についてよくある質問

ここでは、強制認知についてよくある質問をまとめました。父親に認知を拒否され、強制認知を検討している人はぜひ参考にしてください。

相手からDNA鑑定を拒否されたらどうすればいい?

DNA鑑定は、父子関係の有無を客観的かつ高い精度で証明できるため、強制認知の手続きにおいて最も有効な証拠とされています。

しかし、相手が鑑定に協力しないケースも多く、その際は慎重な対応が必要です。

まずは、DNA鑑定を受けることが相手にとってもメリットがあることを冷静に伝えてみましょう。

万が一父子関係がなかった場合、自身が不当に認知させられるリスクを避けられ、立場を守ることにもつながるからです。

さらに、DNA鑑定を拒否すること自体が「親子関係を認めている」とみなされ、裁判所の心象を悪くすることにもつながります。

それでもなお相手が応じない場合は、DNA鑑定以外の証拠を収集して認知を求めることになります。

たとえば、妊娠中の交際状況を示すLINEやメールの記録、金銭的支援があった履歴、出産時に相手が関与していたことを示す写真や証言などが挙げられます。

これらを積み重ねることで、裁判所に父子関係の存在を認めてもらえる可能性は十分にあります。

相手に黙ってDNA鑑定をするのはよくない?

父親側にDNA鑑定を拒否された場合に、本人に無断で鑑定をするのはNGです。

たとえば、使用済みタバコや髪の毛などを回収して検査機関に送付する行為は、プライバシーの侵害に該当し、逆に相手から慰謝料を請求されるおそれもあります。

そもそも、ほとんどのDNA鑑定機関では、鑑定にあたり父母両方の承認を求めているため、父親から拒否された場合は実質的にDNA鑑定は難しいといえます。

DNA鑑定をおこなう場合は、必ず父親の同意を得たうえで、正式な手続きを通じて実施するようにしましょう。

強制認知の対応を依頼する場合の弁護士費用はどのくらい?

強制認知を弁護士に依頼する場合の費用は事務所ごとに異なりますが、一般的な相場は20〜50万円程度です。

経済的に厳しい方は、法テラスに相談すれば弁護士費用の立替制度(民事法律扶助)を利用できる場合があります。

相談時に見積もりをもらい、費用体系についてしっかり確認しましょう。

相手が強制認知を無視して、裁判を欠席したら原告側が負ける?

裁判で相手が出廷しない場合でも、原告側が必要な証拠を提出し、裁判所が父子関係を認めれば、認知が命じられることは十分にあります。

実際、被告(父親側)が無視したり、答弁書を提出しなかったりした場合でも、裁判は一方的に進行し、証拠の内容に基づいて判決が出されます。

相手が無視をしたからといって原告側が不利になる心配はなく、むしろ相手が不利になるといえるでしょう。

ただし、原告側が証拠を十分に準備していなければ、証明不足と判断され、認知が認められないこともあります。

そのため、相手が無視しても証拠を揃えることは重要です。

さいごに | 子どもの認知請求については弁護士に相談を!

本記事では、母親側が強制認知で負けるケースや、強制認知について弁護士に依頼するメリットなどについて詳しく解説しました。

強制認知は、子どもの法的な地位を守るために重要な手続きですが、証拠の収集や裁判の進め方には高度な判断が求められます。

特にDNA鑑定を拒否された場合や、証拠が限られている場合には、個人での対応が難しくなることもあります。

こうした状況でも適切に対応し、認知の成立を目指すには、法律の専門知識と実務経験をもつ弁護士の力が不可欠です。

早期に弁護士へ相談することで、証拠の整え方や戦略的な進め方のアドバイスを受けられ、手続きにかかる負担も軽減されます。

子どもの権利を確実に守るためにも、一人で悩まず専門家に相談するのがおすすめです。

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この記事の監修者
法律事務所Legal Barista
阿部 洋介 (札幌弁護士会)
結婚相談事業所を併設しており、全国的にも珍しい「婚」に注力した法律事務所となっております。ご依頼者様に寄り添った姿勢で最善の解決策をご提案いたします。

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編集部

本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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