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KL2020・OD・039
障害児を授かった夫婦の離婚率は、他の夫婦と比較して高いと言われています。ただでさえ、大変な子育てが障害児であればより大変であることは容易に想像できます。
しかし、その大変な子育てを離婚してひとりで行うことは、さらに大変でしょう。では、どのように障害児の育児と向き合い、離婚を回避すればいいのでしょうか。
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一説によると、自閉症の子を持つ夫婦の離婚率が80%であると言われています。障害児を抱える夫婦が若ければ若いほど、離婚する傾向は高まります。夫婦自身が若いと社会経験・人生経験が十分でなくまだまだ成長途中です。そんな中で、障害児の育児という計り知れない責任を負うため、そこから逃げ出したくなる気持ちが生まれることは容易に想像できます。
妻は母親として子供の療養と家事、そして育児全般を担うことにのしかかる毎日の負担は、心身共に大きなストレスを与えてしまいます。夫は仕事で生活費を稼ぐだけでなく子供の養育費と医療費、また自活できないことが予想できるのであれば、子供が一生生活できるだけの稼ぎを得なければならずストレスを感じてしまうでしょう。
そして、何よりもまず障害児を授かった事実を受け入れ、自分が思い描いていた家族像のギャップを埋めるために、自身の気持ちの落とし所を見つけなければいけません。このように、障害児の育児は通常のケースよりも苦労が多く、その現実から目を背けた結果として離婚を選択する夫婦が多いのです。
子供の抱える障害の種類や程度によって、親の抱える問題は異なります。ここでは一般的な問題について紹介します。
通常の子育てでも子供につきっきりにならざるを得ない母親は多いですが、障害児の母親はよりその傾向が強まります。障害によっては幼少期の多動により片時も子供から離れられない状況が続き、母親は気の休まる時間が少ないです。このような日々が続くと精神的にも肉体的にも疲弊していきます。さらに、子供の睡眠が一定でない場合、母親もまとまった睡眠時間が取りづらくなり、余計に疲れがたまってしまいます。
子供自身が一人でコミュニケーションを取れない障害を抱えているケースでは、周りの子供に溶け込めず苦労することが多いです。また、通常の子供がしないような行動を見せることもあり、障害について知識のない他の子供や親から見ると、その子供がおかしいと見られてしまいます。そうなると子供同士だけでなく親同士の関係も気づきにくくなり、人間関係で苦労する可能性が高くなります。
障害によっては、その障害を抱える子供が行う特徴的な行動がいくつかあります。障害について知識や経験のない人がその行動を見ると、親のしつけがちゃんとされていないと判断されてしまうことがあります。子供の特性上どうしようもないことに対して批判的な意見を受けると、親はつらい思いをしてしまうでしょう。その批判に反論し理解してもらえればいいですが、障害に対する知識や背景を知らない人に簡単な説明だけでは理解してもらえないことが多くあるようです。
子供や夫とどのように接すればいいのかわからない人は、育児や家族に関する相談ができるカウンセラーに相談してみることをおすすめします。接し方をわかれば、苦労は多いかもしれませんが今よりも余裕のある対応をできるかもしれません。
離婚するかどうかを判断するには、離婚しない場合の状況と離婚した場合の状況を比較すると良いでしょう。旦那から離婚を切り出すケースが多いことから、妻目線で状況を整理します。
「旦那は生活費を稼いでくれるか」
「旦那は子育てを手伝ってくれるか」
「旦那は子供の障害の理解に努め受け止めてくれるか」
「ひとりで障害児の子供を育てられるのか」
「ひとりで生活費を稼げるのか」
「周りや世間の目にひとりで立ち向かえるか」
このようにそれぞれの状況におけるシュミレーションを行い、どちらを選択すればより良いのかを判断しましょう。そして、自分が決めた判断を後悔しないですむように事前に準備し調べられることは全て用意し、決断したあとは覚悟を持って選んだ生活を送っていくことをおすすめします。
障害児を持つことが法的に離婚の壁となることはありません。しかし、判例としては障害児がいるから離婚をするということに対しては、消極的な姿勢を取っているケースが多いです。そのため、離婚には別居期間が5年以上ないと法的な離婚事由にはならないと判断されやすいでしょう。
参考:別居から離婚する3つのメリット!損しないため別居前に知っておくべきこと
障害児のいる夫婦の離婚は圧倒的に夫から言い出すことが大半です。このケースでは、夫が「障害児の親が抱えやすい問題」で述べた他人からの目線を持っていることが多いとされています。
普段子供と接する時間が短い夫は、子供の障害を理由とする通常ではない振る舞いを受け入れられず、その行動の理由を母親のせいにしがちです。そのようなどうにもならない家庭環境からストレスを感じて、その家族から逃げ出すように離婚を選択してしまいます。
養育費は原則として、子供の年齢と両親の年収で決まります。子供の障害があるから無条件で養育費が増額されるということはありません。養育費の増額を求めるのであれば、増額が必要であることを示す証拠が必要となります。
障害児の子供を育てていくための第一ステップは、親として子供の障害を理解し受け入れることです。まずは子供の障害に対する知識をつけましょう。どのような障害なのかわからないと、子供の行動に対して間違った解釈を続けることになってしまいます。
また、子供の為を思って取った行動であっても子供の発育段階によっては、その行動が子供のためになっていないことが起こりえます。子供の状況によって、「できることとできないこと」を判断し、子供の行動の意味を一般的な価値観で判断して、間違った評価を下さないように気をつけるといいでしょう。
通常の育児であっても大変で夫婦の協力が必要であるため、障害児を持つ夫婦はよりお互いで協力し育児を行いましょう。旦那が外で働いている状況では、まずしっかりと経済面での安定をもたらせるようにすることをおすすめします。
障害の種類や程度によっては継続的に治療費や通院費がかかってしまい、さらに子供が大人になっても就業が難しければ将来的にもお金がかかってきます。「障害児を理由に離婚する場合」でも紹介したように、旦那は子供と接する時間が妻よりも短く、他の子供と接する機会も多くないため、夫婦で子供の様子を対話していくといいでしょう。
また、母親は旦那に対して「父親としてこれはやって当たり前」という気持ちは持たないことをおすすめします。期待し過ぎるとその分失望も多いです。どのように子供と接すればいいのかわからない父親も多いため、なにをしてもらえれば助かるのかを少しずつ理解してもらえるように努めましょう。
夫婦だけで子供を養育していくとどこかでどうしようもなくなる事態に陥る可能性があります。そんな時に頼りになるのが夫婦の両親や親戚です。それらの人が近くに住んでいるケースや、短期間であっても同居してくれるなどのサポートが受けられるのであれば、助けてもらいましょう。
子供の障害の状況が国で定められた一定の基準を満たすケースでは、障害者手帳が発行されます。障害者手帳は市区町村に申請することで交付されます。公的な障害児の支援制度を利用するには、通常障害者手帳が必要となるため取得しておきましょう。
以下は主な公的な障害者向けの支援制度です。
令和3年度の障害者基礎年金の年金額は以下の通りです。
1級:976,125円
2級:780,900円
障害者手帳には障害の度合いにより等級が定められており、数字が小さくなるほど障害の度合いが重いことを表しています。
障害者手当ては、日常生活において常時特別の介護を必要とする在宅の20歳以上の特別障害者に対して支給される手当です。支給月額は27,350円(令和2年4月より適用)で、年間4回支払われます。本人または配偶者及び扶養義務者の所得制限があります。
障害児福祉手当は、日常生活において常時介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の子供に支払われる手当です。支給月額は14,880円(令和2年4月より適用)で、年間4回支払われます。本人または配偶者及び扶養義務者の所得制限があります。
これら以外にも、障害者を対象とする税金の控除や公営住宅の優先入居などが可能です。また自治体によって様々な免除や割引が用意されています。さらに、民間企業でも携帯電話料金や公共交通機関の運賃の割引などがなされています。
夫婦でどうしても障害児の養育ができないのであれば、施設に預けることもひとつの手です。障害のある子供に対してサービスを提供する施設を障害児入所施設といいます。この施設では、子供の養育はもちろんのこと障害の度合いに合わせて社会的なトレーニングを施してもらえます。
施設の利用料は世帯の所得に応じた負担があり、その他に食費・光熱費・日常生活用品の費用などが必要です。入所の相談は居住地の児童相談所に相談しましょう。入所の可否は児童相談所の調査によって決められます。
障害児を養育していくことは、簡単なことではありません。子育てがうまくいかない、思い通りに生活できない、先が見えないなど不安や辛さが最高潮に達して、全てを投げ出したくなる瞬間が少なからずやってくるでしょう。
しかし、産まれてきた我が子を育て上げようと夫婦で決心したのであれば、子供の面倒を一生見ると覚悟を決めましょう。その際は周りの助けも借りながら、孤独にならないように子供と向き合っていくことをおすすめします。
いかがでしたでしょうか?
障害といっても様々な種類や重度があります。離婚を回避するためにまずは、自身の子供の障害について夫婦で理解を深めて、子供への適切な対応ができるようにすることや、勘違いによって異なった解釈をしないように気をつけましょう。
また、人的にも金銭的にも頼りにできる存在には甘えながら、夫婦だけで孤独な子育てをすることはなるべく避けましょう。
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