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令和3年度の配偶者暴力相談支援センターにおけるDVの相談件数12万2,478件にものぼりました。12万人以上がDVの被害に遭っているとともに、DV加害者も同数いることになります。
ただし、DV加害者のなかには、自分の言動がDVにあたると自覚できていない方もいます。
そこで本記事では、DVで通報された場合にどのような処罰になるのかについて解説します。
DVとはドメスティック・バイオレンスの略称で、家庭内での暴力や攻撃的行為を指す言葉です。
単純に身体的な暴力だけではなく、精神的な圧迫や経済的な支配など、家庭内でのパワーバランスの歪みから生じるさまざまな暴力や支配行為もDVに含まれます。
またDVの多くは男性から女性に対しておこなわれ、その根底には性別的な役割分担意識からくる主従関係や、男女の経済力・社会的地位の格差などがあると考えられています。
DV被害は個人の感じ方に左右されるケースも多いため、自分がDV加害者であると自覚していない場合でも、相手が恐怖を感じて通報する可能性があるのです。
このような状況を避けるためにも、自分の行動がDVに当てはまる可能性があるかどうかをよく理解し、早期に専門家へ相談するなどして対処する必要があります。
DVは暴力が表れる形やその内容によって、複数の種類に分類されます。
ここでは、上記の主要な4つのDVの種類について解説していきます。
それぞれどのような行動がDVとみなされるのか、以下で詳しく確認していきましょう。
身体的暴力とは、その名のとおり直接的に相手の身体に危害を加える行為です。
具体的には、以下のような行動が身体的暴力と分類されます。
身体的暴力は、骨折や打撲・深いキズなど身体的なダメージを引き起こす可能性があり、最悪の場合命に関わるケースもあるでしょう。
精神的暴力は、外見からはダメージが見えにくいものの、精神的な健康に影響を及ぼす恐れがあります。
具体例として挙げられるのは、相手を心理的に圧迫し傷つける以下のような行動です。
精神的暴力が継続的におこなわれると、被害者は一時的な感情の起伏だけでなく、不安障害・うつ病・PTSDなどの症状に悩まされる可能性もあります。
経済的暴力とは、家庭内のお金を制限し、相手を金銭的に支配して経済的な安定や自由を奪うDV行為です。
経済的暴力の具体例としては、以下のような行動が挙げられます。
これらの行為には、被害者を経済的に依存させてコントロールしようとする意図が見られる場合が多いです。
性的暴力とは、嫌がっているのに無理やり性的行為をするなど、相手の性的な自由や権利を侵害する暴力です。
具体的には、以下のような行動が性的暴力に該当します。
性的暴力は、被害者の心に深い傷を残すだけでなく、身体的な危害を伴う可能性もあるでしょう。
DV行為は、日常生活の中での言動として適さないだけではなく、夫婦といえど刑法における犯罪行為に該当する可能性があります。
問われる可能性のある犯罪は、主に次の4つです。
DVでどのような罪に問われる可能性があるのか、以下で具体的に解説していきます。
傷害罪は、基本的に他人の身体を傷つけた際に適用される犯罪です。
相手に対する暴行によってけがをさせた場合、傷害罪に該当する可能性があります。
また身体的なけが以外に、相手に精神的苦痛を与え続け、うつ病やPTSDといった精神疾患に陥らせた場合も傷害罪が適用されます。
傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
暴行罪は、他人に対して暴力を振るった際に適用される犯罪です。
相手に対して暴力を振るい、けがをおわせるまでには至らなかった場合は暴行罪に該当します。
暴行罪の刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。
犯罪としては比較的軽い刑罰にあたりますが、DV行為でけがをおわせていなかったとしても逮捕される可能性は十分にありえます。
相手に対して性的な行為を強要するのは、不同意性交等罪に該当する可能性があります。
夫婦関係や恋人同士であったとしても、相手が抵抗できないようにして無理矢理性行為をおこなうと不同意性交等罪が成立する可能性があります。
不同意性交等罪の刑罰は、5年以上の有期懲役です。
罰金刑などの規定がなく、刑事裁判で有罪と判決が出た場合には懲役刑となる重大な犯罪です。
人前で暴言や罵詈雑言を浴びせる行為は、相手の名誉や尊厳を傷つけるものとして侮辱罪に該当します。
侮辱罪の刑罰は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
継続的な侮辱によって被害者に健康被害が生じた場合は、より重い傷害罪が成立する可能性もあります。
自身がおこなったDV行為が犯罪に該当する場合、通報を受けた警察によって逮捕されてしまう可能性があります。
しかし、逮捕の流れや状況は、個別の事案や状況により異なります。
DVによる通常逮捕と現行犯逮捕の形態・内容について、次で詳しく見ていきましょう。
通常逮捕とは、裁判官が発付する逮捕状にもとづいた逮捕の手続きです。
DVの被害者が警察に被害届を提出し、その内容によって必要と判断されれば、警察は被疑者を通常逮捕の対象として捜査します。
しかし、被害届が出されたからといって即座に逮捕されるわけではありません。
逮捕されるのは警察が十分な証拠を集めたうえで、ある程度の嫌疑が認められる場合や、逃亡または証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に限ります。
なお、被害者がDVの証拠となる医師の診断書を提出していたり、身体に傷やあざがみられたりするケースでは、逮捕の理由があると判断される可能性が高いでしょう。
現行犯逮捕とは、警察が犯罪行為を目撃もしくは直後の状況を確認した場合に実施される逮捕の手続きです。
通常逮捕と異なり緊急性が高いため、裁判官の逮捕状がなくてもその場で身柄を拘束できます。
DVによる現行犯逮捕としては、被害者自身やDV行為を目撃した近隣住民によって通報され、駆け付けた警察官に取り押さえられるケースが考えられます。
警察が到着した時点で暴力行為が続いていたり、被害者に明らかな外傷がみられたりする場合には現行犯逮捕される可能性が高いでしょう。
また、その場での現行犯逮捕はおこなわれなくても、警察官から任意同行の要請があり、その後の事情聴取を経て通常逮捕される可能性もあります。
DVで通報され、逮捕されてしまった場合の基本的な流れは、以下のとおりです。
DVによる逮捕のリスクがある場合、逮捕後にどのような流れで手続きが進むのか不安を抱える人は多いでしょう。
逮捕後の一連の手続きについて、次で詳しく解説していきます。
通常逮捕もしくは現行犯逮捕された後、最初におこなわれるのが警察による取り調べです。
取り調べは警察署の取調室でおこなわれ、担当の捜査官から直接質問されます。
DV行為での逮捕においては、暴行の詳細や動機、背景などを聞かれるケースが多いでしょう。
供述した内容は警察側で記録され、後の裁判で証拠として使用される場合があります。
なお、取り調べ中は基本的に自由な行動が制限されますが、弁護士を呼ぶことなどは可能です。
逮捕された場合、最大で48時間身柄を拘束されます。
身柄拘束の期間中は基本的に警察署内の留置所に収容され、外部との接触に厳しい制限が課せられます。
行動の制限は受けますが、食事の提供・冷暖房など最低限の住環境は整えてもらえるでしょう。
この間、警察は証拠の収集や関連する人物への聞き取り調査を進めるとともに、釈放するか検察へ送致するかを決定します。
なお、ここで釈放されたとしても事件が解決したわけではないため、警察の捜査は継続されます。
検察への送致が決定された場合、引き続き身柄を拘束され、検察官からの取り調べがおこなわれます。
取り調べをおこなった検察官は、送致から24時間以内に被疑者の釈放、もしくは勾留請求を判断しなければなりません。
勾留請求を裁判官が認めると、原則10日間・最長20日間の勾留となります。
勾留が決定した場合は、家族へ勾留の事実の連絡を依頼できます。
拘束期間が長くなるため、どのように対応すべきか早い段階で弁護士に相談しておくといいでしょう。
勾留の期間中、検察官は被疑者に対して正式に起訴するか、不起訴とするかの決定を下します。
証拠不十分や犯罪の軽微性などの理由から不起訴となれば、すぐに釈放され前科はつきません。
しかし、起訴された場合、刑事裁判で判決を受ける必要があります。
起訴されて裁判がはじまると、検察官が提出した証拠や証人の証言をもとに、有罪・無罪が問われます。
裁判では、弁護士を通じて自身の無罪を主張することも可能です。
数回の公判を経て、裁判官は最終的な判決を下します。
執行猶予を伴う判決が下され、一時的に刑罰の執行が猶予される可能性もある一方で、刑務所に収監される実刑判決が出る場合も考えられます。
DVで通報や起訴を受けると、その影響は法的な問題だけに留まらず、多くの社会的な側面にもおよびます。
DVで逮捕され身柄を拘束された場合、自己判断での外部への連絡は制限されるため、勤め先への連絡も基本的にできません。
勾留されると長期間の欠勤を余儀なくされ、解雇の懸念も高まるでしょう。
またDVの事実が職場や地域で広まってしまうと、社会的な孤立や信頼の喪失も考えられます。
DVの事実がないにもかかわらず通報されてしまった場合は、感情的にならず冷静に事実を否定しましょう。
離婚や慰謝料請求が目的で相手方から嘘のDV行為を通報されるケースも、ゼロではありません。
許せない気持ちから怒りの感情を出してしまったり、焦ってパニックになってしまったりすると、警察に悪い印象を与える可能性があります。
まずは落ち着いて、専門家である弁護士へ相談し協力を得てください。
弁護士へ相談すると、取り調べでの適切な対応方法をアドバイスしてもらえます。
その後は相手方の主張や提示された証拠に矛盾点がないかを精査し、虚偽の申告である可能性を指摘するなどの対処法が考えられます。
DVで通報されたときは、なるべく早く弁護士へ相談してください。
万が一逮捕された場合、身柄拘束の期間が長引くと仕事や実生活への影響が懸念されます。
逮捕後であっても弁護士を呼べますが、信頼できる弁護士をそのタイミングで見つけるのは困難でしょう。
無料で呼べる当番弁護士もいますが、弁護士の選択ができないので必ずしも刑事事件やDV問題に詳しい人が担当してくれるとは限らない点に注意が必要です。
取り調べに対する対応や法的手続きにおける適切なアドバイスを受けるためには、早い段階で信頼できる弁護士を見つけましょう。
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