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同居義務違反とは?該当するケースと違反した場合の影響・対処法

社内弁護士監修
監修記事
同居義務違反とは?該当するケースと違反した場合の影響・対処法

同居義務違反とは、民法第752条の『同居し、互いに協力し扶助しなければならない』という夫婦の義務の中で、同居義務に反する行為です。簡単に言うと、別段理由もないのに配偶者の同意を得ず無断で別居を強行することです。

同居義務違反に該当することで、法定離婚事由でもある『悪意の遺棄』にもなり得、その結果、離婚や慰謝料請求が認められる可能性が生じます

この記事では、どのような場合に同居義務違反になるのか、無断で別居された場合の対処法などについて解説します。

基本的には【出ていかれた人向け】の内容ですが、最後には【別居したい人向け】の内容も解説しますので、ご自身の状況に合わせて参考にしてみてください。

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この記事に記載の情報は2023年12月01日時点のものです

同居義務違反とは?同居義務違反が認められることでできること

冒頭でもお伝えしましたが、同居義務違反とはその名の通り、夫婦の同居義務を守らない行為です。

(同居、協力及び扶助の義務)

第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

【引用】民法第752

民法第752条では、夫婦には「同居」「協力」「扶助」をしなければならないと義務付けられています。この同居義務を守らないことが同居義務違反になります。

具体的に同居義務違反に該当するケースは後述しますが、簡単に言うと、別段理由もないのに配偶者の同意を得ずに無断で別居を強行することです。

同居義務違反は『悪意の遺棄』になる可能性がある

同居義務違反は、「悪意の遺棄」に該当し得ます。

悪意の遺棄とは、正当な理由なく民法第752条の夫婦の同居・協力・扶助の義務を守らないことです。

悪意の遺棄は、法定離婚事由とされています(民法第770条第1項第2号)。

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

【引用】民法第770

同居義務違反によって認められる可能性があるもの

同居義務違反として法定離婚事由に該当することで、以下の2つが認められる可能性が出てきます。

離婚請求

離婚について夫婦間で協議がまとまらない場合は、離婚調停、離婚訴訟により相手方に離婚を求めていくことになります。

そして、離婚訴訟において裁判所に離婚を認めてもらうためには、「離婚事由」が必要です。

前述のとおり、悪意の遺棄は、離婚事由とされています。

したがって、悪意の遺棄が認められれば、離婚訴訟において裁判所に離婚を認めてもらえる可能性が生じます。

慰謝料請求

同居義務違反は不法行為(民法第709条)になり得ますので、一方的に別居した相手に対して損害賠償請求(慰謝料請求)が認められることもあります。

慰謝料額は事案にもよりますが、数十万円から100万円前後ないしそれ以上の場合もあるでしょう。

同居義務違反が認められ得るケース

同居義務違反が問題となる典型的なケースは以下のものが挙げられます。

無断で別居を始めた

まずは、別居に関して配偶者から同意があったかどうかが重要です。

仕事の都合上、単身赴任をすることもあるでしょうが、配偶者からの同意を得ずに一方的に別居し始めたのであれば、同居義務違反に該当する可能性があります。

なお、子育てに協力していない・生活費を送らないなどの問題は、同居義務違反とは別問題です。これらの問題がある場合は、民法第752条の協力義務・扶助義務にも違反する可能性があります。

別居先で愛人と同居していた

一方的に別居した上に、異性と愛人関係になるケースもゼロではありません。この場合、同居義務違反に加え、不貞行為にも該当する可能性が生じます。

このような事情により、慰謝料がさらに高額となる場合もあるでしょう。

同居義務違反が認められにくいケース

一方、以下のケースでは同居義務違反とは認められにくいと考えられます。

別居に同意している

たとえ別居期間が長かったとしても、別居することに相手方が同意していれば同居義務違反にはなりません。単身赴任や親の介護、子どもの教育などの関係で夫婦が別居することはありますが、夫婦で話し合って決めた別居であれば、同居義務違反にはならないのです。

別居が一時的である

夫婦喧嘩の末に「実家に帰らせてもらいます!」などと、一方が一時的に家を出て、翌日冷静になって戻ってくるなどのケースもあると思います。このような、夫婦喧嘩の冷却として一時的に家を出たのみのような場合は、同居義務違反にはならないでしょう。

一方で、このような些細な夫婦喧嘩がきっかけで長きにわたる別居がはじめることもあり得ます。数日経って相手に話し合いを提案してみても応じず、別居状態が続くようであれば、後述する同居を求める調停・審判、離婚、慰謝料請求などを検討しても良いでしょう。

別居の目的がDV・モラハラから避難するためである

仮に相手からひどいDVやモラハラを受けている場合、DV等を行っている配偶者との間で別居について協議することは事実上不可能ですし、別居先を知らせると強引に連れ戻される危険性もあります。

この場合は心身の安全をはかるための避難として、相手の同意なく別居したとしても、別居につき正当な理由があるとして、同居義務違反とはならない可能性があります。

逆に、DV等を受けた一方配偶者は、DV等を行った他方配偶者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)ができる場合もあるでしょう。

同居義務違反を認めてもらうためにやっておくこと

もしも配偶者から一方的に別居され、同居義務違反を主張したいのであれば、以下の点を意識しましょう。

証拠集め・記録を残しておく

別居が始まった状況を記録に残しておき、証拠があるのであれば集めておくようにしましょう。

例えば、配偶者が一方的に出ていったときのLINEのやり取りがあるようでしたら、保存しておくようにしましょう。

「なんで出ていったの?戻ってきて」などとメッセージを送っても相手が拒否するようであれば、同意なく勝手に別居が始まった証拠の1つになり得ます。

他にも、別居を開始した配偶者が住民票を異動させている場合には、住民票を取得すれば、いつ頃別居になったのかが分かる資料になります。

他の問題もあるようなら一緒に証拠を取っておく

同居義務違反以外にも、『協力義務違反』『扶助義務違反』となる場合には、離婚原因である悪意の遺棄に該当し得ます。

また、別居先で愛人が出入りしているようであれば、不貞行為を行っている疑いもあります。浮気調査をして証拠を掴めれば、不貞行為自体が離婚原因になり得ますし、不貞に基づく慰謝料請求が認められる可能性も生じます。

同居義務違反以外にも問題があるようでしたら、あわせて証拠を確保しておきましょう。

同居義務違反の相手に対してできること

配偶者が一方的に別居を強行し、同居義務違反になり得る場合には、以下の手段をとることが考えられます。なお、いずれの場合でも、上記でお伝えしたように、事前に証拠を揃えておくことが重要です。

同居を求める調停・審判

同居義務違反をした配偶者に対して、夫婦間の話し合いを行っても同居に応じない場合、家庭裁判所に対して同居を求める調停や審判を申し立てることができます。

ただし、仮に審判で同居を命じる審判がでたとしても、同居を強制力することはできません

最終的に同居するかどうかは、あくまでも配偶者次第です。

離婚請求

前述のとおり、同居義務違反は悪意の遺棄に該当し得るもので、法定離婚事由になり得ます。

したがって、悪意の遺棄を理由に、離婚調停を申し立てたり、離婚訴訟を提起したりすることが考えられます。

ただし、離婚訴訟で裁判所に離婚請求を認めてもらうためには、同居義務違反であることを立証する証拠が必要です。

それまでの経緯を記したメモや日記、同居を拒絶した際のLINEや音声、その他一方的に別居されたことがわかる証拠を持って、一度弁護士に相談することをおすすめします。

慰謝料請求

同居義務違反(悪意の遺棄)で離婚する場合、相手に対して慰謝料請求が認められる可能性もあります。

慰謝料額は、別居期間や別居後の影響、別居の経緯などによって様々ですが、数十万円から100万円を超えるケースもあります

弁護士に相談する際に慰謝料請求が認められるかどうかもあわせて相談すると良いでしょう。

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浮気調査

別居が開始された後に、配偶者の周りに異性の影がちらつくのであれば、浮気調査を依頼して異性関係をハッキリさせておくことも検討しましょう。

同居義務違反に加えて不倫の事実もわかれば、離婚を決意するきっかけになるかもしれませんし、不貞行為も加わり請求できる慰謝料が高額になると考えられます

別居されている状況で、自分で浮気調査をすることは非常に難易度が高いため、まずは具体的状況を探偵や興信所などに相談し、不倫の可能性が高いようであれば必要に応じて調査の依頼を検討してみてください。

【別居したい方向け】同居義務違反にならないために注意すること

ここまで主に【別居された側】の視点で解説をしてきましたが、「別居を考えているけど同居義務違反にならないか心配」と、思っている方もいるのではないでしょうか。

ここまでの内容を踏まえて、別居を考えている人が同居義務違反にならないために気を付けることについても見ていきましょう。

別居前は原則として話し合うこと

別居を開始したいという場合には、原則として夫婦間で話し合ってから別居するようにしましょう。同意なく別居をすることで同居義務違反になる可能性が生じます。

転勤や親の介護、子どもの教育など正当な理由があれば、配偶者が理解を示してくれることも多いでしょう。

また、DVから逃れたい場合等、話し合う余地もない場合もあります。このような場合は、まずは自分やお子さまの身の安全が第一なので、安全な避難先を探してください。このようなケースでは、同居義務との関係でも、別居を開始する「正当な理由」が認められやすいでしょう。

子どものことはしっかり考えること

子どもがいる場合には、特に慎重な考慮が必要です。

別居することで子どもに与える影響は様々あります。例えば、子どもを連れて別居した場合、子どもの学校や教育環境が変わり、子どもに大きなストレスを与えてしまうかもしれません。

別居することで経済力が低下し、子どもに十分な生活を送らせてあげられないことも懸念されます。

いずれにしても、子どもがいる場合には、子どもに配慮することは重要で、両親の「一緒にいたくない」という思いだけで別居を決めてしまうことは避けるべきでしょう。

他方、配偶者のDV等で子どもに危害が加わるおそれがある場合には、迅速に避難先を確保するなどの対応が必要です。

どのような対処が良いかはケースによって様々ですので、弁護士に相談し、助言を求めると良いでしょう。

なお、別居だけではなく、子どもを無断で連れて出ていくことで『未成年者略取拐取罪』に問われる可能性もありますので、注意してください。

別居後に気が緩んで不倫をしないこと

例えば、単身赴任などの理由で別居を開始した場合、久しぶりにひとりになった解放感から気が緩み、不倫をしてしまう人がいるようです。同居義務との関係では違法にならなくても、当然ですが不倫をすれば不貞行為として離婚や慰謝料請求を受ける可能性があります。

このようなことにならないよう、別居後の異性関係には注意しましょう。

まとめ

同居義務違反は、民法第752条に規定する同居義務に違反する行為です。配偶者の同意なしに別居を始めた場合には同居義務違反に該当するケースがあります。

同居義務違反は、離婚原因である悪意の遺棄に該当する可能性があります。悪意の遺棄と認められた場合には、離婚訴訟において離婚が成立する場合もあります。

配偶者から一方的に別居を強行された方は、まずは同居に戻れないかの話し合いから始めていきましょう。それでも応じない場合、裁判所を介して調停・審判などを行うことを検討し、最終的には離婚や慰謝料請求を行うことも検討することとなるでしょう。

一方、別居を考えている人は、基本的には夫婦間で話し合ったうえで別居するか否かを判断しましょう。

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この記事は、株式会社アシロの『離婚弁護士ナビ編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。

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