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DV被害を警察に相談した場合、現行犯でない限りはその場での逮捕はありません。
もし逮捕してほしい場合は、被害届を出す必要があります。
しかし、DVの被害届を提出することは、メリットばかりとは限りません。
そこで今回は、DV被害の被害届を提出するメリット・デメリットや提出方法について解説します。
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DV被害が発生し、加害者が逮捕されるケースは主に2つあります。
通常逮捕と現行犯逮捕の違いを理解したうえで、状況に応じて被害届提出や通報などの対応をとりましょう。
それぞれの逮捕の種類について、以下で詳しく解説していきます。
通常逮捕とは、事前に裁判所が発行する逮捕状にもとづいて、警察が被疑者を逮捕する手続きです。
通常と名前がついているとおり、原則的な逮捕手続きとなります。
DV被害においては、被害者が警察署に被害届を提出し捜査が進んだ結果、後日通常逮捕されるケースが考えられます。
配偶者や交際相手の検挙を望む場合には、DV被害の状況を写した写真や医師の診断書などの証拠もあわせて提出できると、捜査がスムーズに進行しやすくなるでしょう。
現行犯逮捕とは、現に被害を受けている最中や被害の直後など、加害者の犯行が明白な際におこなわれる逮捕手続きです。
DV被害においては、被害者または第三者の通報により警察が駆け付け、その場で身柄を取り押さえるケースが考えられます。
被害者の安全を最優先にするために、裁判所からの逮捕状がなくても逮捕手続きを進められるのが特徴です。
また現行犯逮捕は警察官や検察官などの捜査機関に限らず、一般人であっても可能となります。
そのため、被害者の叫び声や大きな物音を聞いて駆け付けた近隣住民によって、加害者の身柄が取り押さえられる可能性もあるでしょう。
被害届とは、犯罪被害を受けた際、どのような被害を受けたかを警察に申告するために提出する書類です。
DV行為を受けている被害者が被害届を提出し、犯罪行為の疑いがあると考えられる場合には、警察による捜査が開始されます。
ここでは以下2つの項目別に、被害届の概要を詳しく解説していきます。
被害届に法的効果はあるのか、また告訴や告発と何が違うのかについて、一つずつ見ていきましょう。
被害届は、どのような犯罪の被害にあったかを申告するための書類であり、警察官は犯罪捜査規範61条によって被害届の受理をしなければならないと規定されています。
(被害届の受理)
第61条1項 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。
引用元:犯罪捜査規範|e-GOV法令検索
被害届の提出によって、警察に対して事件が起きた事実を申告でき、捜査開始のきっかけとなります。
しかし、被害届には捜査を義務付ける法的効果はないため、被害届が受理されたとしても、必ず刑事事件として立件されるとは限りません。
被害届と告訴・告発は、いずれも犯罪事実などを申告する方法ですが、それぞれ主体や目的・効果が異なります。
|
主体 |
目的 |
警察の捜査義務 |
被害届 |
被害者本人 |
犯罪事実の申告 |
なし |
告訴 |
被害者など告訴権者 |
犯罪事実の申告および処罰意思の申告 |
あり |
告発 |
誰でもおこなえる |
犯罪事実の申告および処罰意思の申告 |
あり |
被害届は犯罪被害を申告する目的で提出する書類であるのに対して、告訴・告発は被害申告のほか、犯人に対する処罰を求める意思表示をできるのが特徴です。
また告訴・告発を受けた警察官は、捜査を開始する義務があると法律で定められています。
第242条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。
引用元:刑事訴訟法|e-GOV法令検索
なお、告訴は被害者本人や法定代理人などの告訴権者のみがおこなえますが、告発は誰でもおこなえるという違いがあります。
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DVで被害届を提出するメリットとして、次の2つが挙げられます。
DVの被害に対する被害届の提出は、被害者の保護や加害者への法的な対応を図るための重要なプロセスです。
各メリットについて、以下で詳しく確認していきましょう。
被害届の提出は、加害者のDV行為の抑止力につながる可能性があります。
DVを繰り返す加害者に対して、被害者が直接抗議をするのは難しいケースが多いです。
このような場合に被害届を提出し、警察による捜査が開始されると、必要に応じて加害者に対する警告や逮捕;巣がおこなわれます。
加害者に対する法的な制裁によって、再発の抑止や被害の拡大防止効果を期待できるでしょう。
被害届の提出により加害者が逮捕されれば、その間に避難する準備を整えられるメリットがあります。
加害者が逮捕されると、取り調べなどによって2日間程度身柄が拘束されます。
また勾留となった場合には、10日間~20日間程度身柄拘束されるため、避難所への入所手続きや仮住まいの手配を進めやすくなるでしょう。
被害届の提出はDV被害の対応策の一つとして有効ですが、メリットだけでなく、以下のようなデメリットも存在します。
状況によっては被害届が悪い影響を与えてしまう可能性もあるため、利用する際は慎重な判断が必要です。
それぞれのデメリットについて、次で具体的に解説していきます。
被害届の提出によって、加害者に逆恨みされてしまう可能性は考慮しておく必要があります。
警察に逮捕され反省している言動や態度であったとしても、釈放後に逆恨みで暴力をふるったり、暴言を吐いたりするケースがあるためです。
ただし、逆恨みが怖いからといって被害届の提出をやめる、DV被害を受けても我慢するなどの選択はしないようにしましょう。
被害届を出した後は身を守るために接触を避け、離婚に向けた手続きを進めていくことが推奨されます。
被害届の提出後、警察による正式な捜査が開始される場合、被害者自身にも捜査に協力する手間が生じます。
具体的には、警察の聞き取り調査に対して証言をおこなったり、関連する証拠を提供したりといった協力を求められます。
家庭内のプライベートな事情や思い出したくない内容を話さなければならない可能性もあるため、負担に感じるケースもあるでしょう。
加害者に対して適切な刑事処罰を受けさせるためには、できる限り感情的にならず、時間的余裕をもって対応する必要があります。
DVで被害届を提出する流れについて、提出するタイミングや提出先・記載事項など次の内容を具体的に解説します。
提出する流れや注意点を把握しておくと、被害届が必要となった場合にもスムーズに対応できる可能性が高くなります。
以下で一つひとつ詳細を確認していきましょう。
被害届は、DV被害にあってからできるだけ早いタイミングで提出するのが望ましいです。
法律上では被害届の提出期限は定められていないため、時間が経ってからでも提出できます。
しかしDV被害を受けてから被害届提出までの期間が空いてしまうと、証拠を集めるのが難しくなり、警察の捜査が難航する可能性があります。
被害が大きくなるのを防ぎ、自身の身を守るためにも、早めの提出を心がけましょう。
被害届の提出先は、基本的に被害が発生した場所を管轄している警察署となります。
交番でも提出できますが、交番は対応できる警察官の人員が限られており、被害内容を確認する時間がない場合もあるため、可能であれば警察署に出向くのがよいでしょう。
被害届の書式は警察署に用意されているため、事前に作成して持っていく必要はありません。
提出時には、運転免許証やパスポート・保険証などの身分証明書と、印鑑を持参するようにしましょう。
被害届には、主に以下のような内容の記載が必要となります。
いつ、どこで、どのような被害にあったのかをできる限り詳細に記載しましょう。
暴力行為による身体的な被害を受けている場合には、医師の診断書などがあると有力な証拠となります。
被害届は、原則として被害にあった本人が提出する必要があります。
被害者が幼い子どもである場合や、死亡または意識不明など本人が警察へ申告するのが難しい状況であれば、本人以外からの提出も認められます。
しかし、裁判となった場合には被害届も証拠として扱われる可能性があるため、不可能でない限りは被害者本人が提出するのが望ましいです。
被害届は法律によって受理しなければならないと規定されていますが、以下のようなケースでは警察官の判断で受理してもらえない可能性もあります。
DV被害を正しく申告しているにもかかわらず受理してもらえない場合や、被害届の作成に不安がある場合は、専門家である弁護士への相談を検討しましょう。
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提出した被害届が受理され、DVの加害者が逮捕された後は、一般的に以下のような流れで手続きが進められます。
被害届を提出するか判断するためには、逮捕された後の流れについても理解しておく必要があるでしょう。
逮捕後の各ステップについて、次で具体的に解説していきます。
加害者が逮捕されると、警察によって身柄が拘束されます。
身柄が拘束されている間は自由な行動が制限され、自宅へ帰ったり家族や知人に連絡したりする行為は許されません。
警察が身柄拘束できる期間は48時間以内と決められているため、期間内に取り調べが実施され、釈放もしくは検察官への送致が判断されます。
加害者が検察官に送致されると、検察官による取り調べがおこなわれます。
検察官は、送致から24時間以内に釈放または勾留の請求をしなければなりません。
取り調べの結果勾留が請求され、裁判官が認めた場合には、原則として10日間、最長で20日間の勾留による身柄拘束が実施されます。
また、勾留が終了するまでの期間では、検察官が加害者の起訴・不起訴を判断します。
検察官が加害者を起訴すると、刑事裁判の手続きに移行します。
刑事裁判に移行すると、加害者は被疑者から被告人という立場に変わり、裁判によって有罪・無罪が審理されます。
なお、勾留の結果検察官が不起訴と判断した場合にはそのまま釈放となり、刑事裁判は開廷されません。
刑事裁判による審理の結果、裁判官が加害者に対して有罪もしくは無罪の判決を言い渡します。
起訴されてから約1カ月後に1回目の裁判がおこなわれ、1回目の裁判からさらに1カ月後に判決を下されるケースが一般的です。
有罪となった場合、執行猶予付きの判決であれば一定期間は刑の執行が猶予され、実刑判決が出れば刑務所に収監されます。
DVによる被害届の提出は、被害者自身の安全を確保するために必要な手段です。
しかし、被害届の提出には相応の手間と時間がかかり、加害者から逆恨みされるリスクもあるため、タイミングは慎重に判断しなければなりません。
被害届の作成や提出・その後の対応で悩んだら、法律の専門家である弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士への依頼によって、被害者の精神的な負担を軽減できるほか、DV被害に対する適切な対応が可能となります。
また、弁護士へ相談しておくことで、裁判に発展した場合もサポートしてもらえます。
もし現在DV被害で悩まされているのであれば、ぜひ一度弁護士に相談してください。
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