離婚をするときに子供の親権や慰謝料、財産分与などで相手と揉めて、弁護士が必要となったときにかかる費用相場は、内容にもよりますが50~100万円ほどになります。
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夫婦間で離婚調停が成立しないときは、裁判で離婚を決めるケースもあります。
離婚裁判を起こすと、最終的には裁判官の判決よる何らかの結果が出されます。
本記事では、離婚裁判の流れや費用、裁判を有利に進めるポイントなどをわかりやすく解説します。
離婚裁判とは、夫婦間の協議や調停でも離婚問題を解決できない場合、離婚の可否や財産分与、年金分割、子どもの親権・養育費・面会交流など離婚に伴う条件を家庭裁判所に判断してもらう訴訟手続きです。
裁判官の判決には強制力があるので、話し合いによる離婚が成立しないときは、離婚裁判を検討してもよいでしょう。
ただし、離婚裁判を起こす場合、以下のように一定条件を満たしている必要があります。
離婚裁判を起こす場合、基本的には調停が不成立となっていることが前提となります。
離婚裁判を起こすときは、事前に調停を申し立てていることが条件となります。
家事事件手続法第257条では調停前置主義を定めており、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、原則として調停不成立にならなければ離婚裁判を起こせません。
離婚調停を申し立てると、調停委員が夫婦の間に入り、双方の主張を聴き取ってくれます。
調停では相手と顔を突き合わせる必要がなく、冷静に話し合いを進められるので、場合によっては夫婦関係を修復できる可能性もあるでしょう。
離婚裁判を起こすときは家庭裁判所に訴状を提出しますが、相手の同意は不要です。
夫婦間の協議や離婚調停と異なり、裁判では判決が下されるため、相手の同意がなくても離婚が相当であると判断されれば離婚が成立しますので、話し合いが決裂したときの最終手段だと理解しておきましょう。
離婚裁判で離婚が認められるには以下の法定離婚事由が必要です。
(裁判上の離婚)第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
悪意の遺棄とは、典型的には相手が夫婦間の扶助義務を怠り、生活費を渡さない、または勝手に別居しているような状況です。
裁判における審理は証拠主義になっており、離婚裁判も例外ではありません。
感情論だけでは裁判に勝てないため、自分の主張を裏付ける証拠が必要です。
また、相手の不倫や浮気、DVやモラハラなどの立証責任は原告側にあるので、離婚裁判を起こすときは必ず証拠を準備してください。
裁判所は「人事訴訟事件の概況」を公表しており、2018~2022年の5年間を参照すると、離婚裁判で離婚できる確率は概ね90%です。
離婚裁判の判決数 |
認容 |
棄却および却下 |
離婚の確率 |
|
---|---|---|---|---|
2018年 |
3,136 |
2,788 |
342 |
88.90% |
2019年 |
3,079 |
2,743 |
336 |
89.09% |
2020年 |
2,691 |
2,395 |
294 |
89.00% |
2021年 |
3,054 |
2,670 |
380 |
87.43% |
2022年 |
3,030 |
2,673 |
356 |
88.22% |
2020年以降は新型コロナウイルスの影響があり、訴訟件数が一時的に減少したものとみられます。
法定離婚事由があり、有効な証拠も準備できれば、勝訴判決を獲得できる可能性も高くなるでしょう。
離婚裁判の判決は早くて半年程度ですが、1~2年かかることもあります。
準備期間から判決までは以下の流れになっており、判決を不服として控訴した場合、終結までの期間はさらに長くなります。
離婚裁判を起こすときは、一般的には以下の書類を準備します。
年金分割のための情報通知書は年金事務所や各共済窓口で入手してください。
収入印紙は手数料の支払用になっており、訴状等の送達用として郵便切手も必要です。
訴状の書式と記入例については、裁判所のホームページからダウンロードできます。
訴状などの書類を準備したら、家庭裁判所に提出してください。
離婚裁判の第一歩になるので、訴状が論理的な構成になっているか、被告の住所氏名が間違っていないかなど、入念にチェックしておきましょう。
離婚裁判を起こすと、家庭裁判所が第1回の口頭弁論期日を指定し、相手側にも訴状のコピーと呼出状が送達されます。
1回目の口頭弁論は、訴状の提出から概ね1ヵ月後になるケースが多いでしょう。
訴状の内容に対して意見や反論がある場合、相手から答弁書が提出されます。
答弁書の提出期日は1回目口頭弁論の1~2週間前になっており、原告にも送付されるので、相手が何に対して反論しているのか確認してください。
事実認識に食い違いがあれば、相手の主張を覆せるように準備しておきましょう。
第1回目の口頭弁論では、原告と被告が証拠を提示し、自分の主張に正当性があることを訴えます。
ただし、裁判の開始後は書類のやりとりが多いので、1回目の口頭弁論で判決が下されるケースはほとんどありません。
2回目以降の口頭弁論は概ね月1回のペースになり、最終的な判決に向けて争点を絞り込みます。
なお、非公開の「弁論準備手続き」へ移行し、裁判官と原告・被告の3者での準備や今後の方針を協議する場合もあります。
弁論準備手続きでは裁判官が和解案を提示するケースもあるので、相手と和解するか、最後まで争うのか、慎重に検討してください。
原告・被告の主張や証拠が出揃うと、当事者双方へ尋問がおこなわれることがあります。
尋問手続きにおいても証拠をもとに自分の主張が事実であることをアピールしてください。
また、尋問の前には陳述書を提出するケースが多いので、相手の主張に矛盾があれば、事実と異なる旨を論理的に記載しておきましょう。
離婚裁判が進むと、双方の主張・証拠が出尽くしたタイミングで裁判官が判決を下し、裁判は終結します。
離婚を認める判決を「請求容認判決」といい、判決日から数日~2週間程度で原告・被告の双方に判決書が送付されます。
なお、未成年の子どもがいる場合、親権が決まらなければ離婚できませんが、あらかじめ協議して親権を決めておくと、離婚裁判の終結が早くこともあるでしょう。
判決によって離婚が確定した後は、10日以内に夫婦の本籍地または住所地の市区町村役場へ離婚届を提出します。
離婚届を提出する際は、判決書の謄本と判決確定証明書も添付してください。
また、本籍地以外の役場に離婚届を提出する場合、戸籍謄本も必要です。
10日以内に離婚届を提出しなかったときは、過料が発生する可能性があるので注意しましょう。
なお、離婚によって扶養や保険関係に変動がある場合、「離婚届受理証明書」が必要になるので、役場で取得してください。
離婚裁判の判決に不服がある場合、判決書が到着した翌日から起算して2週間以内に控訴すると、高等裁判所で離婚の可否を審理してもらえます。
控訴するときは、離婚裁判を起こした家庭裁判所(第一審の家庭裁判所)に控訴状を提出してください。
すでに双方の主張や証拠が出尽くしていれば、1回の期日で結審する可能性があります。
離婚裁判には以下のメリットがあります。
子どもとの面会交流や財産分与、慰謝料請求なども争えるため、話し合いで解決しないときは裁判を起こすメリットがあるでしょう、
離婚裁判では判決書や和解調書が作成されるので、相手が金銭の支払いに応じなかったときは、強制執行による財産差押えも可能です。
離婚裁判を起こす場合、以下のデメリットを考慮しておく必要があります。
離婚裁判の費用は後述しますが、少なくとも1万3,000円程度(収入印紙)が必要です。
判決までには1~2年程度かかるケースが多いため、仕事をしている方は何度も有給休暇を取得しなければならない場合もあるでしょう。
また、離婚裁判の法廷は公開されており、基本的に誰でも傍聴できるため、第三者に夫婦間のプライバシーを知られる可能性もあります。
相手の不貞行為などは立証が難しい場合も少なくないので、証拠不十分で裁判を起こすと、離婚を認めない判決が下るかもしれません。
離婚裁判を起こすときは、敗訴のリスクも必ず考慮してください。
離婚裁判の費用は最低1万3,000円程度になっており、弁護士に代理を依頼すると追加費用が70万~110万円程度必要です(依頼する弁護士により更に高額になる場合もあります)。
離婚裁判を起こすときは、家庭裁判所に収入印紙で手数料を支払います。
収入印紙代は以下のようになるので、訴状に貼り付けて提出してください。
裁判の内容 |
収入印紙代 |
---|---|
離婚と親権者の指定 |
1万3,000円 |
離婚と財産分与または年金分割 |
1万3,000円+1,200円 |
離婚と養育費請求 |
1万3,000円+子ども1人につき1,200円 |
離婚と慰謝料請求 |
1万3,000円と「慰謝料請求額に応じた収入印紙代」のどちらか高い方 |
訴状の送達用に6,000円程度の郵便切手も必要ですが、切手の組み合わせが家庭裁判所ごとに異なるので、事前に確認しておきましょう。
離婚裁判を弁護士にサポートしてもらうと、一般的には以下の費用がかかります。
弁護士費用の内訳 |
一般的な相場 |
|
---|---|---|
法律相談料 |
30分5,500円または1時間1万1,000円程度 |
|
着手金 |
20万~50万円程度 |
|
基本報酬 |
20万~50万円程度 |
|
報酬金 |
離婚のみ |
10万~20万円程度 |
親権の獲得 |
||
年金分割 |
||
財産分与 |
獲得額の10~20%程度 |
|
慰謝料請求 |
||
婚姻費用請求 |
2年分の10%程度 |
|
養育費請求 |
2~3年分の10%程度 |
調停や離婚裁判を検討しているときは、まず相談からスタートしてみましょう。
着手金は手続きを進めるための費用で成功・不成功にかかわらず必要となる費用で、報酬金は依頼を受けた業務が成功したときのみ支払います。
また、弁護士費用には日当・交通費なども含まれるので、細かな費用も必ず確認してください。
離婚裁判の弁護士費用は原則として各自負担になっており、原則として相手には請求できません。
ただし、不倫や浮気などの不法行為に対して慰謝料請求する場合、慰謝料額の10%程度を相手に請求できる可能性もあります。
離婚裁判で勝訴を獲得するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
家庭裁判所で離婚事由を主張するときは、必ず証拠を準備してください。
相手に離婚事由となる有責行為がある場合、以下のような証拠を少しでも多く集めておきましょう。
離婚事由 |
有効な証拠 |
---|---|
不貞行為 |
不貞相手とホテルに出入りする写真や動画 性交渉の写真や動画 不倫や浮気を推測できるメール・LINE・SNSなどのやりとり カーナビやドライブレコーダーのデータ クレジットカードの利用明細や領収書 |
悪意の遺棄 |
生活費が振り込まれていた預金通帳 日記やブログ、家計簿 別居を証明できる住民票や賃貸借契約書 |
DVやモラハラ |
暴言や暴力がわかる写真・動画・音声データ 役場や警察に相談した記録、病院の診断書 日記やブログ、メモなど |
性交渉の拒否など |
性行為の拒否を記載した日記やブログ、または音声データ |
相手の財布から領収書などを抜き取ると、証拠の保全が発覚するので、スマートフォンのカメラで撮影するなどの工夫が必要です。
裁判で離婚を争うときは、親権や財産分与の要求も明確にしておきましょう。
未成年者の親権を獲得したい場合、育児や監護能力に問題がないことを主張しなければならないため、証拠の準備が必要です。
また、財産分与は離婚事由に左右されないので、相手の不貞行為があっても基本的には夫婦の共有財産を2分の1ずつに分割します。
ただし、事前に夫婦間の協議が成立している場合などは財産分与の割合をかならずしも2分の1ずつにしなくてもよいので、裁判官に伝えてください。
和解をすると、解決までの期間が短くなります。
離婚裁判は長期化しやすいので、時間と労力、費用の負担を抑えたいときは、相手との和解も視野に入れておきましょう。
弁護士に離婚裁判をサポートしてもらうと、有利に進めることができる確率が高くなります。
訴状の作成やなどは難易度が高いので、不安があるときは弁護士に依頼しましょう。
また、弁護士に証拠や資料を提出すると、裁判で有効に使えるかどうかチェックしてもらえます。
離婚に至る経緯を正確に伝えておけば、訴訟の展開なども先読みしてくれるので、裁判を有利に展開しやすくなります。
慰謝料や養育費をいくら請求してよいかわからないときは、弁護士に金額の算定を依頼してください。
離婚裁判を起こした場合、以下のようなケースは敗訴の可能性があります。
裁判に負けると離婚が成立しないので、正当な離婚事由があるかどうか、必ずチェックしてください。
裁判で離婚するときは法定離婚事由が必要になるため、「一緒にいるのが何となくつらい」などの理由では離婚が認められません。
相手にギャンブルやアルコールへの依存があっても、夫婦生活に影響を及びさない範囲であれば、法定離婚事由には該当しないでしょう。
単なる価値観の違いや性格の不一致では法定離婚事由にはならないので、長期にわたって別居しているなど、夫婦関係が破たんしている状況が必要です。
夫婦関係の破綻の有無は総合的に判断されるため、夫婦の関係修復が可能と認められる場合は離婚できません。
勝訴判決の獲得には関係修復の意思がないことや、相手の有責行為が離婚原因になったことなど、夫婦関係の修復や継続が困難である旨を主張してください。
不貞行為などの法定離婚事由があっても、証拠を提示できなければ離婚裁判に負ける可能性があります。
離婚裁判でも、基本的には証拠の裏付けが必要です。
浮気や不倫の証拠が乏しいときは、探偵事務所などへの調査依頼も検討してください。
離婚裁判を弁護士に依頼した場合、以下のメリットがあります。
裁判は時間と労力の消耗が大きいので、自分で対応できそうにないときは、弁護士にサポートしてもらいましょう。
離婚裁判のサポートを弁護士に依頼すると、証拠収集にも協力してもらえます。
有責行為の証拠は身近にあっても気付いていないケースが多いため、離婚原因となった有責行為を弁護士に伝えてください。
弁護士に状況整理してもらうと、見逃していた証拠が判明する可能性もあります。
弁護士に離婚裁判を依頼するときは、子どもの養育や監護の状況、DVやモラハラの被害も正確に伝えてください。
相手が子どもの養育費を支払っていない場合などは、親権者として相応しくない旨を主張してもらえます。
弁護士は慰謝料も計算してくれるので、相手が「高い」「納得できない」などと主張しても、裁判では弁護士の見立てた金額やそれに近い金額が認められる確率が高いでしょう。
弁護士は依頼者の代理人として、訴状の作成などを代行してもらえます。
口頭弁論期日に都合が付かないときは、弁護士に出廷を依頼できるので、多忙な方でも離婚裁判の手続きを進められます。
弁護士に訴訟手続きを代行してもらうと、離婚裁判の期間を短縮できるでしょう。
夫婦間の話し合いや調停でも離婚が成立しなかった場合、離婚裁判は最終手段になります。
法廷離婚事由があり、離婚したい意思も固まっていれば、勝たなくてはならない裁判になるでしょう。
ただし、離婚裁判は証拠主義で審理されるため、離婚が妥当である旨を自分で立証しなければなりません。
証拠の集め方がわからないときや、離婚裁判の手続きに不安があるときは、まず弁護士に相談してください。
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