弁護士直伝!離婚慰謝料の分割払いを避ける方法と対処法
離婚時の慰謝料は原則一括払いですが、相手の経済状況によっては、分割払いになる可能性があります。
慰謝料に限らず、金銭の分割払いは途中で滞るケースが多く、一般的に一括よりリスクが高いといえるでしょう。分割払いになっても、全額しっかり払ってもらいたいですよね。
この記事では、分割払いを避ける方法と、分割払いに決まってしまった場合の対処法についてご紹介します。離婚しても損をしないための参考にしてください。
慰謝料の分割は全額支払われない可能性がある

慰謝料を分割払いにする最大のリスクは、途中で支払いが滞ってしまうことです。多くの場合、手続きを踏めば強制執行ができます。
しかし、相手に財産がまったくない場合や、住所や勤務先がわからなくなってしまった場合には、為す術がありません。
また、分割の場合は離婚後も頻繁に支払いや金銭について連絡する必要があるでしょう。お互いに相手に嫌悪感がある場合、口論になりトラブルに発展するかもしれません。
このように、全額支払われない可能性があるだけでなく、トラブルの原因になる可能性が高いのです。
離婚慰謝料の分割請求を避けるためにできること

ここでは、慰謝料の分割払いを避けるためにできることをご紹介します。
慰謝料の代わりに財産分与で多くもらう
財産分与には、『慰謝料的財産分与』というものがあります。財産分与は、基本的に夫婦で半分ですが、慰謝料の代わりとして、慰謝料金額に相当する財産を分与してもらう方法です。
金額や、何を分与するかは、夫婦で話し合って決めます。ただし、お互いに共有財産がない場合にはできませんので、注意しましょう。
財産に何が含まれるのかは、こちら『財産分与|相場以上の財産を獲得する方法と請求手順まとめ』で確認できます。
【関連記事】
▶離婚時の財産分与の分け方と多くの財産を獲得する方法
▶財産分与請求調停の手順|財産分与の獲得を有利に進める8つのコツ
相手の親に立て替えてもらうことを提案する
相手がどうしても分割を希望したり、慰謝料が支払えないと言ったりする場合、相手の親に立て替えてもらうという方法もあります。
ただし、離婚は夫婦間の問題ですので、相手の親に立替えの義務はありません。そのため、拒否された場合、それ以上請求することは難しいでしょう。
拒否しているにもかかわらず請求してしまうと、最悪の場合、恐喝罪などにあたる可能性がありますので気をつけてください。
また、個人で請求しても相手にされなかったり、逆に「あなたが悪い」などと言われてしまったりするかもしれません。
支払い方法は裁判で争える?

裁判で、『支払い方法』のみを争うことはできません。しかし、支払うことについてお互いが合意している場合、和解協議の中で支払い方法について調整することがあります。
もし、それでも決められない場合は、裁判所が認定した金額を、一括払いで支払うことを命じる判決が出ます。裁判の判決は基本的に一括払いですが、少額訴訟の場合は裁判所の裁量で、分割払いの判決が下されることがあるでしょう。
慰謝料を分割で払ってもらう場合にすべき4つのこと
それでも慰謝料を分割にするしかない場合もあるでしょう。ここでは、慰謝料を分割で払ってもらう場合にすべき4つのことについて紹介します。
①支払いに関する細かいルールを決めておく
分割払いに決まったら、細かい支払い方法を決めておく必要があります。支払い期限はもちろん、支払いが遅れた場合どうするのかについても、重点的に決めておきましょう。
例えば、支払いが遅れたら残金の期限の利益を喪失する、1週間過ぎても支払いが確認できなければ強制執行を行う、完済するまで5%の遅延損害金がつくなどです。
②協議離婚の場合離婚協議書を作成し公正証書にする
協議離婚で、慰謝料を分割で支払うことが決まった場合、離婚協議書を作成の上、公正証書にすることをおすすめします。
離婚協議書とは、離婚する際の取り決め(慰謝料・財産分与・養育費など)をまとめて記載した文書です。
紙の材質や、使用する文具などに特に決まりはありません。ですが、後で勝手に修正されたり、見えなくなってしまったりすることがないように、しっかりした紙に消えないボールペンを使用することをおすすめします。
また、後で誰が見てもわかるように丁寧に書きましょう。弁護士に依頼して作成してもらうこともできます。
離婚協議書ができたら、夫婦で公正役場(公証役場一覧)へ行き公正証書を作成しましょう。まずは、最寄りの公証役場に電話相談し、作成日を予約します。
公正証書を作成し、強制執行認諾文言を入れておくことで、金銭債権については訴訟手続きを行わなくても強制執行をすることができます。
【関連記事】
▶協議離婚で公正証書を作るベストタイミングとは|費用や作り方を解説
▶調停調書と公正証書の違いとは|法的な効力や費用の比較
▶離婚時に公正証書を作成すべき理由と作成方法の手順
③離婚後も相手の住所・勤務先を把握しておく
支払いが滞る可能性がある場合、相手の住所や勤務先を把握しておきましょう。支払いを催促するにも、強制執行手続きの申立をするにも必要になるからです。
もし、相手の住所や勤務先がわからない場合は、『探偵』に依頼することも検討しましょう。
④連帯保証人をつける
慰謝料の支払いに対して、連帯保証人をつけることが可能です。そうすることで、支払いが途中で滞るリスクを減らすことができます。
連帯保証人は、親族などの範囲がありません。ただし、連帯保証人になる人の同意が必要です。弁護士に相談し、交渉方法などについてあらかじめ教えてもらうとよいでしょう。
番外編:分割払いになったときにできるだけ払ってもらうには?
慰謝料の分割払いを回避できなかったとき、慰謝料額を最大限回収するためには、上記の方法以外にも裏ワザ的な手段があります。ここではその方法を、弁護士の語る事例を交えてご紹介します。
一括で払える金額を頭金として支払ってもらう
相手が一括で払えるという金額を頭金として支払ってもらい、残りの慰謝料を分割で支払ってもらうのも1つの方法。
極端な例ですが、一般の会社員が1億円を一括で支払うのは難しいですよね。しかし、数百万円だったら頭金として一括で支払える可能性もあります。
このように、相手が支払える金額まで頭金としてもらい、残りを分割払いにすることも、確実に慰謝料を支払ってもらうためには有効でしょう。
【慰謝料請求の実務】一定額を支払い終えれば残りの支払いを免除する
一定額まで支払えば残りの支払いを免除するという方法もあります。この分割請求に関する実務について、離婚問題に詳しい新日本パートナーズ法律事務所の池田康太郎弁護士に詳細を教えていただきました。

例えば、慰謝料として300万円の支払い義務があることを認めさせた上で、200万円まで分割金を滞りなく支払った場合には、残りを免除するというような取り決めの仕方をすることも実務ではあります。
この方法であれば、支払う方も途中で滞ることをせず、当初の請求金額から大幅に下回るという事態を避けられる可能性は高くなります。
どの程度免除するのかという金額の調整を行えれば、満額に近い額の受け取りができるケースも考えられます。
具体的にどのような進め方をし、どう取り決め内容を定めるのかは、専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
慰謝料を分割払いにするのは、リスクが高いことです。しかし、相手が本当に財産を持っていない場合、一括払いで話がまとまっても支払われない可能性があります。
相手の状況を考え、より確実に支払ってもらえそうな方を選択することが大切です。譲歩して分割払いにするか、一括払いを主張し続けるか迷った場合は、弁護士に相談してみましょう。
あなたの状況に合わせて、最もよい解決策を提示してくれるはずです。
【初回1時間無料◆キッズスペース有◆年間相談実績700件超】お金の問題のみならず親権/監護権/面会交流などでも実績多数◆離婚後の生活も考え、最善の解決策をご提案!《お問い合わせは写真をクリック》
事務所詳細を見る
【年間対応件数80件以上|初回相談無料】男性側からのご相談に多数対応◆財産分与/親権/不倫慰謝料など離婚のお悩みは早めにご相談ください◆不動産・住宅ローン/自社株など高額・複雑な財産分与にも対応可
事務所詳細を見る
【電話・オンラインの初回相談無料】『共有財産(持ち家/預貯金/株式など)を分けてから離婚したい/裁判所から書面が届いた/夫に離婚調停を申し立てたい・申し立てられた』等◆養育費・婚姻費用の請求、離婚条件の交渉はお任せください。不倫相手に対する慰謝料請求を含む総合的な離婚問題にも対応可能。
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡
慰謝料に関する新着コラム
-
離婚手続きの中でも「財産分与」「年金分割」「慰謝料請求」といった主要な手続きは、婚姻期間の長さによって大きく影響を受けるケースがあります。この記事では、離婚時に...
-
性格の不一致による離婚は、相手の同意が得られなければ進まないことがあります。そのような場面で選択されるのが解決金です。本記事では、慰謝料との違いや支払いの目的、...
-
不倫が原因で離婚する場合の財産分与も、通常どおり2分の1ずつが原則です。浮気や不貞行為が原因で離婚しても、離婚原因と財産分与は全く別の問題であるためです。本記事...
-
不倫相手に支払い能力がない場合は、慰謝料を請求しても回収できず泣き寝入りになってしまう可能性があります。本記事では、慰謝料の請求相手に支払い能力がない場合の対処...
-
精神的苦痛を理由として離婚や慰謝料請求をすることは可能です。しかし、精神的苦痛により離婚する際は、適切な証拠集めが重要です。精神的苦痛により離婚・慰謝料請求が認...
-
本記事では、着手金無料で慰謝料請求を依頼したい方に向けて、着手金無料で依頼することの安全性、実際の弁護士の探し方、着手金以外で確認すべきポイント、依頼する際の注...
-
出会い系不倫の慰謝料請求には不貞行為の事実が必要です。出会い系サイトやマッチングアプリの利用だけでは請求できません。また、証拠も集めなければなりません。本記事で...
-
配偶者に不倫をされたりDV被害にあったりした場合には、相手方に慰謝料請求が可能です。本記事では、慰謝料請求しない方がいい具体的な場面や、慰謝料請求しないときに生...
-
この記事では、夫以外の男性との間にできた子どもを夫の子だと偽る「托卵」が露見するケースと、それが発覚した場合に日本の法律で何が起こり、どのように対処すべきかを詳...
-
単身赴任中の同棲で浮気された場合、配偶者か浮気相手、もしくはその両方に慰謝料請求が可能です。ただし請求するためには、さまざまな条件をクリアする必要があります。本...
慰謝料に関する人気コラム
-
ダブル不倫とは、一般的に既婚者同士が不倫することを指します。お互いに既婚者同士である為、割り切って不倫できるようですが、一体そういった心理で大きなリスクを犯して...
-
本記事では、離婚慰謝料の相場や請求できるケース・できないケースを解説し、より多くの慰謝料を受け取るための具体的なポイントについても紹介します。本記事を読むことで...
-
本記事では、旦那の不倫が発覚したときにすべきことや慰謝料請求時の注意点などについて解説します。 不倫は決して許せない行為ですが、離婚以外の選択肢もあります。あ...
-
パートナーの浮気によって離婚する場合は、離婚慰謝料の請求が可能です。本記事では、配偶者の浮気・不倫による慰謝料の相場や請求先、手続きのステップを具体的に解説しま...
-
悪意の遺棄とは、生活費を渡さない、理由のない別居、健康なのに働かないといった行為のこと。この記事では、悪意の遺棄とは何なのか、悪意の遺棄となる11の行動、悪意の...
-
本記事では、ダブル不倫における慰謝料の相場や請求条件、進め方を整理し、精神的負担を軽減しながら適切に対応するための考え方をご紹介します。
-
不倫で離婚に至る場合にすべきことはたくさんあります。この記事では、不倫で離婚に至る実態・離婚件数と離婚率の推移から、不倫で離婚する際に覚えておくこと、不倫で離婚...
-
不倫における内容証明の書き方や出し方に加えて、内容証明を送るメリット、注意点、対処法についてご紹介します。不倫相手や配偶者に内容証明を送ろうか悩んでいらっしゃる...
-
婚約破棄の慰謝料相場は50万円から200万円程度ですが、状況によっても慰謝料額は大きく変動します。本記事では、婚約破棄による慰謝料の相場や慰謝料請求が可能な状況...
-
彼氏が既婚者だと発覚した場合、状況によっては彼氏を訴え慰謝料請求できる可能性があります。また、彼氏が既婚者だと知らなかった場合、不倫の慰謝料を請求されても回避で...
慰謝料の関連コラム
-
不倫の示談書作成でお悩みですか?本記事では、弁護士監修の【不倫 示談書 テンプレート】を状況別に公開。慰謝料請求、接触禁止、求償権放棄など、示談書に必須の条項の...
-
浮気や不倫の慰謝料を裁判で請求する際に必要な証拠は何でもよい訳ではありません。証拠内容によっては、事実を証明するのには弱いと判断される可能性があります。当記事で...
-
本記事では、着手金無料で慰謝料請求を依頼したい方に向けて、着手金無料で依頼することの安全性、実際の弁護士の探し方、着手金以外で確認すべきポイント、依頼する際の注...
-
浮気された際、離婚を決意する前にするべき3つのことや、浮気の証拠の集め方、慰謝料の相場や高くなるポイントを紹介します。後悔と損の無い離婚又は夫婦関係修復の参考に...
-
不倫問題でかかる弁護士費用はいくらくらいなのでしょうか。依頼したいと思っても気になるのが弁護士費用です。この記事では、慰謝料の請求、慰謝料の減額それぞれにかかる...
-
大学費用は国立大学で年53万円、私立大学で年95万円もかかります。本記事では高額な大学費用の支払いを拒否したい方のために、大学費用が養育費に含まれるかどうか、大...
-
離婚慰謝料をより多く受け取りたいなら、離婚慰謝料に強い弁護士に相談・依頼するのが重要です。この記事では離婚慰謝料が得意な弁護士の特徴、慰謝料請求が得意な弁護士に...
-
この記事では不倫被害にあった方に向けて、不倫慰謝料の相場、示談交渉のやり方・手順、慰謝料の算定方法や増減要因、納得のいく不倫慰謝料を受け取るコツなどを解説します...
-
不倫の慰謝料請求は弁護士なしでおこなうことも可能です。ただし、弁護士なしでは慰謝料請求が失敗するリスクがあり、まずは一度弁護士への相談をおすすめします。本記事で...
-
彼氏が既婚者だと発覚した場合、状況によっては彼氏を訴え慰謝料請求できる可能性があります。また、彼氏が既婚者だと知らなかった場合、不倫の慰謝料を請求されても回避で...
-
浮気の慰謝料とは、浮気をされた夫・妻の精神的な苦痛に対して支払うお金のことです。この記事では、浮気の慰謝料が高額・低額になりやすいケースや実際の判例を紹介します...
-
この記事では、夫以外の男性との間にできた子どもを夫の子だと偽る「托卵」が露見するケースと、それが発覚した場合に日本の法律で何が起こり、どのように対処すべきかを詳...
慰謝料コラム一覧へ戻る




