国際離婚の全手順!国際離婚を進めるうえで知っておくべき注意点と相談先
国際離婚とは、主に国籍の異なる男女が離婚することを指します。
厚生労働省が公表している「夫妻の国籍別にみた年次別離婚件数及び百分率」のデータによると、2023年における日本国内の離婚件数は18万3,814件、そのうち一方が外国人の夫婦の離婚件数は8,772件となっています。
国際離婚の手続きをおこなう際は、「どちらの国の法律が適用されるのか」「どちらの国の裁判所を利用するのか」など、さまざまな問題が生じるものです。
どのように離婚手続きを進めればよいのかわからずに悩んでいる方も多いでしょう。
そこで本記事では、国際離婚での注意点や離婚手続き、国際離婚で困った際の相談先やよくある質問などを解説します。
国際離婚とは
冒頭でも触れたとおり、国際離婚とは主に以下のような夫婦が離婚することを指します。
- 日本人と外国人の夫婦
- 外国に居住している夫婦
- 外国に財産を持っている夫婦 など
通常の夫婦の場合、日本の法律に則って離婚手続きを進めて、話し合いがまとまらずに裁判になった場合も日本の裁判所で争うことになります。
一方、国際離婚の場合、夫婦の国籍や居住地によっては外国の法律が適用されたり、外国の裁判所が管轄となったりする可能性があります。
国際離婚での準拠法や国際裁判管轄については、次の項目で解説します。
国際離婚で適用される法律(準拠法)
国際離婚の場合、夫側の国と妻側の国のどちらの法律を適用するかが問題となります。
国際的な問題に適用される法律は準拠法と呼ばれ、日本では「法の適用に関する通則法」によって以下のように定められています。
- 夫婦の本国法が同一の場合:本国法
- 夫婦の本国法が異なり、常居所地法は同一の場合:夫婦共通の常居住地の法律
- 夫婦の本国法が異なり、常居所地法も異なる場合:夫婦と密接な関係にある地の法律
- 夫婦の一方が日本に常居住する日本人の場合:日本法
ここでは、外国人と日本人の夫婦が離婚する場合を想定して、適用される準拠法を詳しく見ていきましょう。
外国人の配偶者が日本にいる場合
外国人と日本人の夫婦がともに日本にいて離婚するケースでは、日本の法律が適用されます。
これは国際結婚で二重国籍になっている場合でも同様で、日本に住んでいる場合は日本の法律が優先され、日本方式で離婚手続きを進めていきます。
また、離婚にともなって慰謝料を請求する場合なども日本の法律が適用されるため、あわせて覚えておきましょう。
外国人の配偶者が日本以外にいる場合
一方、外国人の配偶者が日本以外にいる場合は、もう一方の日本人配偶者がどこに住んでいるのかによって準拠法が変わります。
日本人の配偶者も外国に住んでいるケースでは、夫婦が住んでいる国の法律や、夫婦に密接な関係がある国の法律が適用されます。
日本人の配偶者が日本に住んでいるケースでは、日本の法律が適用されます。
なお、日本以外で離婚が成立した場合は、その国の日本大使館・領事館などで離婚届を提出するか、帰国後に日本の市区町村役場で離婚手続きをおこないましょう。
国際離婚で管轄先となる裁判所(国際裁判管轄)
離婚手続きで裁判を起こす際、国際離婚の場合は「どの国の裁判所が管轄となるのか」も問題となります。
ここでは、日本の裁判所で国際離婚をするケースと、外国の裁判所で国際離婚をするケースについてそれぞれ解説します。
日本の裁判所で国際離婚をするケース
人事訴訟法によると、日本の裁判所が管轄となるケースは以下のとおりです。
- 原告・被告ともに日本国籍の場合(人事訴訟法第3条の2第5号)
- 被告の住所が日本にある場合(人事訴訟法第3条の2第1号)
- 原告の住所が日本にあり、夫婦が最後に同居していた場所が日本の場合(人事訴訟法第3条の2第6号)
- 原告の住所が日本にあり、上記以外に日本の裁判所で裁判をおこなうことが公平性を確保し、適切かつ迅速な審理の実現につながると判断されたとき(人事訴訟法第3条の2第7号) など
上記のほかにも、相手から遺棄された・相手が行方不明・相手からDVを受けているなどの特別な事情があるケースでも、例外的に日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。
外国の裁判所で国際離婚をするケース
一方、以下のようなケースでは原則として外国の裁判所で国際離婚をすることになります。
- 夫婦で外国に住んでいる場合
- 一方が外国籍で外国に住んでいる場合
- 日本人と外国人の夫婦で、双方の母国以外の国に住んでいる場合 など
国際離婚手続の進め方
国際離婚の方法としては、主に以下の4つがあります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
通常、夫婦が離婚する際は①から④の流れで手続きが進行します。
ただし、外国の場合は協議離婚を認めていないところもあり、その際は調停離婚や裁判離婚などで離婚を成立させる必要があります。
夫婦の居住地や国籍に応じて適用法が異なるため、双方の法制度を把握し、必要な諸手続きを精査しておくことが重要です。
ここでは、それぞれの離婚手続きについて解説します。
1.協議離婚
協議離婚とは、夫婦同士で直接話し合いをして離婚を成立させる手続きのことです。
慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流などの離婚条件を話し合い、双方が離婚することに合意すれば、離婚届を作成して市区町村役場に提出することで離婚成立となります。
離婚届には、夫婦だけでなく証人2名の署名・押印も必要となります。
なお、国際離婚の場合は相手国での離婚手続きも必要となるほか、追加書類の提出が求められることもあり、詳しくは国際離婚が得意な弁護士にご相談ください。
2.調停離婚
調停離婚とは、調停委員による立ち合いのもと、家庭裁判所で話し合って離婚成立を目指す手続きのことです。
家庭裁判所に調停離婚を申し立てたあとは、夫婦は別室で調停委員と面談して聞き取り調査がおこなわれ、調停委員は双方の主張を調整して解決案を提示します。
双方が納得すれば調停成立となり、合意内容をまとめた調停調書の謄本を受け取ったのち、市区町村役場にて届け出をおこなうことで離婚成立となります。
離婚成立後は、相手国での届け出や手続きなどに対応しましょう。
3.審判離婚
審判離婚とは、調停離婚が不成立になった場合、裁判官の判断で離婚条件などを決定する手続きのことです。
たとえば「病気で最終期日に出席できずに調停不成立となった」「大部分は合意できていたものの、些細な主張の対立で調停不成立となった」などの場合には、審判離婚に移行する可能性があります。
裁判官の決定内容に異議申立てがなければ審判確定となり、審判書の謄本と審判確定証明書を受け取ったのち、市区町村役場にて届け出をおこなうことで離婚成立となります。
調停離婚と同様、離婚成立後は相手国での届け出や手続きなどに対応しましょう。
4.裁判離婚
裁判離婚とは、上記の方法では解決できない場合に、裁判所で争って決着を付ける手続きのことです。
家庭裁判所に離婚訴訟を提起したあとは、双方による主張立証や尋問などがおこなわれ、十分に尽くされたところで最終的に裁判官によって判決が下されます。
離婚の判決が確定したら、判決書の謄本と確定証明書を受け取ったのち、市区町村役場にて届け出をおこなうことで離婚成立となります。
調停離婚と同様、離婚成立後は相手国での届け出や手続きなどに対応しましょう。
国際離婚の主な8つの原因
国際離婚では、日本人同士の夫婦とは離婚原因が異なることもあります。
日本人同士であれば、育ってきた環境が多少違っても折り合いがつくこともあります。
しかし、そもそもまったく違う環境で育った外国人とともに生活していくことには、大きなストレスを感じる場合もあるようです。
以下では、主な国際離婚の原因について解説します。
- 文化の違いを心から受け入れきれない
- 言葉の違いによるストレス
- お金についての価値観を共有できていない
- 子どもの育て方について揉める
- 病気にかかったときの対処法が異なる
- 親戚付き合いが親密過ぎる
- 偏った日本人像を持っている
- 母国に帰れないストレス
1.文化の違いを心から受け入れきれない
新婚当初は相手の出身国の文化に溶け込もうと、積極的に取り組んでいく人も多いでしょう。
しかし、時間が経つにつれて、無理に相手の文化に合わせ続けることのストレスが溜まってしまうケースも少なくありません。
その結果、宗教行事や地域行事などが面倒になったりして、最終的に離婚に至ってしまうこともあります。
2.言葉の違いによるストレス
国際結婚では、言葉の違いが悪影響を及ぼすこともあります。
国際結婚した夫婦は共通言語を持つケースも多いものの、完璧に使いこなせないうちは大きなストレスになるはずです。
また、配偶者の母国で配偶者の両親と共に暮らすことになった場合は、両親との共通言語も必要になります。
配偶者がいなければコミュニケーションが十分に成り立たないような状況が続くと、日々の生活が億劫になってしまうでしょう。
3.お金についての価値観を共有できない
お金に対する価値観の違いも、国際離婚の原因になることがあります。
生まれ育った国や地域によっても、金銭感覚は大きく変わってくるものです。
たとえば、バカンスで散財するのが当たり前の国もあれば、宗教行事にお金をかける国もあります。
しかし、金銭的な価値観の違いを一方的に押しつけることは難しいため、一緒に暮らしていくのが徐々に辛く感じることもあります。
4.子どもの育て方について揉める
子どもの育て方について揉めた結果、離婚に至る夫婦も少なくありません。
どのような子育てをおこなうかは、これまで自分がどのように両親に育てられたのかが大きく影響するといわれています。
そのため、特に育った環境がまったく異なる国際結婚の夫婦の場合、子育てに対する考え方の違いが原因で衝突が起きてしまう可能性があります。
のびのびと育てるのか、それとも厳しく育てるのかなど、意見の対立が頻繁に続くとストレスを感じることもあるでしょう。
5.病気にかかったときの対処法が異なる
病気にかかったときの対応や医療に対する考え方も、国によって大きく異なります。
そのため、なかには自分や子どもが体調を崩したり病気にかかったりしたときに、配偶者が信じられない対処の仕方を取ってくることもあります。
配偶者にとっては当然のことをしているつもりでも、どうしても受け入れられずに夫婦が揉めるということも珍しくありません。
6.親戚付き合いが親密過ぎる
親戚付き合いが親密過ぎることも、国際離婚のよくある原因といえるでしょう。
国によって、親戚との距離感は異なります。
「休日には必ず配偶者の親戚が家を訪ねてくる」「親戚が子育てに口を出してくる」「盛大なイベントが頻繁におこなわれる」など、親戚とのつながり方は国によってさまざまです。
そのため、家族の時間を大切にしたいと考えている方にとっては、親戚付き合いを頻繁に求められる生活にストレスを感じてしまうかもしれません。
7.偏った日本人像を持っている
国際結婚では、外国人の配偶者が偏った日本人像を持っていることが原因で離婚する夫婦もいます。
特に、日本人女性が外国人の夫から偏見を感じることが多いようです。
たとえば、昔ながらの大人しく控えめな日本人女性のイメージを持たれたまま結婚し、外国人の夫から酷くわがままな対応をされるというケースなどがあります。
ステレオタイプなイメージどおりの振る舞いを強要されるというのは、大きなストレスになるでしょう。
8.母国に帰れないストレス
相手方の国で生活をしている場合、自分の親や友人に会えないストレスが溜まって精神的な苦痛になることが考えられます。
頻繁に帰国できる場合は問題ないかもしれませんが、経済的事情などのさまざまな理由でなかなか帰国できない場合は、最終的に離婚に至ることもあります。
国際離婚で困った場合の相談先
国際離婚で困ったときの相談先としては、主に以下の2つがあります。
- ベンナビ離婚
- NPO法人国際結婚協会
ここでは、各相談先の特徴について解説します。
1. ベンナビ離婚
ベンナビ離婚とは、離婚問題を得意とする全国の弁護士を掲載している弁護士ポータルサイトです。
地域や相談内容から絞り込み検索することができ、自身に合った弁護士を効率よく探し出すことができます。
ベンナビ離婚では、初回相談料無料・休日の相談可能・電話相談可能・オンライン面談可能などの法律事務所も多く掲載しています。
国際離婚に向けて準備していて不安な点があれば、お住まいの近くにある法律事務所を探して一度相談してみることをおすすめします。
2. NPO法人国際結婚協会
NPO法人国際結婚協会とは、国際結婚した夫婦のサポートをおこなっているNPO法人です。
国際離婚にともなう子どもの親権や法的手続きの進め方など、国際離婚に関する基本的な内容について相談することが可能です。
離婚前はもちろん、離婚手続き中や離婚後でも専門の相談員が無料で対応してくれるので、特に離婚手続きが初めての方は気軽に相談してみてもよいでしょう。
国際離婚に関するよくある質問
ここでは、国際離婚をおこなう際によくある5つの質問について解説します。
- 日本で離婚成立すれば外国にも効力が及ぶ?
- 国際離婚後は問題なく再婚できる?
- 在留資格(ビザ)への影響はあるの?
- 子どもの親権や養育費はどうなる?
- 離婚に伴う慰謝料や財産分与はどうなる?
日本で離婚成立すれば外国にも効力が及ぶ?
日本で離婚届を提出して離婚が成立しても、原則として外国には効力が及びません。
配偶者の本国ではまだ婚姻状態にあり、相手国でも離婚手続きをおこなう必要があります。
離婚手続きの方法は国ごとに異なるので注意してください。
なお、フィリピンのように国が離婚自体を禁止している場合は、その国で手続きする必要はありません。
また、多くの国では協議離婚が認められておらず、裁判の判決をもって離婚が成立するものと定めています。
日本で協議離婚をおこなっても相手国では認められない可能性があるため、あえて調停や裁判などで離婚を成立させることも検討しなければなりません。
国際離婚後は問題なく再婚できる?
相手国での離婚は成立していなくても、日本の戸籍上では離婚が認められているのであれば日本で再婚することはできます。
ただし、外国人配偶者が自国に戻って再婚したときに重婚状態になるなどのトラブルが生じるおそれもあるため、相手国での手続きを優先的に済ませることをおすすめします。
在留資格(ビザ)への影響はあるの?
たとえば、結婚相手が外国人で結婚により相手がビザを取得していた場合、離婚成立後の更新ができなくなります。
離婚成立後も引き続き日本での生活を続けたい場合は、在留資格の変更手続きが必要です。
「数年間の婚姻実績と安定した収入がある場合」や「子どもの親権者として監護養育している場合」などは、定住者としてのビザを取得できる可能性があります。
なかにはビザを失うことを恐れて離婚成立前に姿を消してしまい、離婚の協議が進められなくなるケースもあるため、ビザの扱いについては早めに情報共有しておきましょう。
子どもの親権や養育費はどうなる?
国際離婚での親権や養育費の決定においては、父母のいずれかと子どもの国籍が一致する場合はその国の法律が適用され、どちらとも一致しない場合は子どもが住んでいる国の法律が適用されます(法の適用に関する通則法第32条)。
たとえば、父親または母親が日本国籍で子どもも日本国籍なら、日本の法律にしたがって親権や養育費の取り決めをおこなうことになるでしょう。
まずは当事者間で話し合い、合意形成が難しい場合は調停や裁判などで解決を目指します。
なお、自分が親権を獲得した場合、相手には子どもの扶養義務が残ったままなので養育費の支払いを求めましょう。
配偶者が日本を離れる場合は、未払いを防ぐためにも「出国前にまとまったお金をもらっておく」「送金方法をきっちり決める」などの対策を講じることをおすすめします。
離婚に伴う慰謝料や財産分与はどうなる?
離婚に伴う慰謝料や財産分与についても、どの国の法律が適用されるのかによって対応が異なります。
たとえば「相手の不倫が発覚して離婚に至った」というようなケースでは、日本であれば配偶者や不倫相手に対して慰謝料の支払いを求めるのが一般的です。
一方、アメリカ・フランス・ドイツなどの多くの先進国では、日本とは違って不倫相手に対する慰謝料請求は認められないのが原則です。
外国でも離婚後の生活を支える目的などで金銭的サポートがおこなわれるケースはあるものの、日本とは考え方が異なる場合もあり、詳しくは国際離婚が得意な弁護士にご相談ください。
まとめ
国際離婚では、夫婦の居住地や国籍によって適用される法律が異なるため、初期段階から双方の法律について理解し、必要な手続きを確認しておくことが重要です。
しかし、十分な法律知識がなければ、誤った認識のまま離婚手続きを進めてしまい、あとでトラブルになる可能性もあります。
そのため、国際離婚を検討している場合は、まず離婚問題が得意な弁護士に相談するようにしましょう。
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