国際離婚の全手順!国際離婚を進めるうえで知っておくべき注意点と相談先

国際離婚とは、主に国籍の違う男女が離婚することを指します。
国が調査している「夫妻の国籍別にみた年次別離婚件数及び百分率」のデータによると、2022年における日本国内の離婚件数は179,099件、そのうち夫妻の一方が外国人の離婚件数は8,478件とされています。
国際離婚をおこなう際は、どちらの国の法律・裁判所を利用するのかなど、さまざまな問題が生じるものです。
そのため、どのように離婚手続を進めてよいのかわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、国際離婚を進めるうえで注意すべき法律の違いや国際離婚が起こる原因などを紹介します。
国際離婚は配偶者の居住地で適用される法律が異なる
国際離婚のように国をまたぐ法律問題を考えなければいけないケースでは、まずどちらの国の法律を適用するかが問題となります。
国際的な問題に適用される法律は準拠法と呼ばれ、日本では「法の適用に関する通則法」によって以下のように定められています。
- 夫婦の本国法が同一の場合:本国法
- 共通の本国法がない場合:夫婦共通の常居住地の法律
- 共通の本国法・常居住地法がない場合:夫婦と密接な関係にある地の法律
- 夫婦の一方が日本に常居住する日本人の場合:日本法
ここでは、外国人と日本人の夫婦が離婚する場合を想定して、適用される準拠法を詳しく見ていきましょう。
外国人の配偶者が日本にいる場合
外国人の配偶者と日本人の配偶者がともに日本にいて離婚するケースでは、日本の法律が適用されます。
これは国際結婚で二重国籍になっている場合でも同様で、日本に住んでいれば日本の法律が優先され、日本方式で離婚手続を進めていきます。
また、離婚にともなって慰謝料を請求する場合なども、日本の法律が適用されることを覚えておきましょう。
外国人の配偶者が日本以外にいる場合
外国人の配偶者が日本以外にいる場合は、もう一方の日本人配偶者がどこに住んでいるかによって準拠法が変わってきます。
日本人の配偶者も外国に住んでいるケースでは、夫婦が住んでいる国の法律や密接な関係にある国の法律が適用されます。
日本人の配偶者が日本に住んでいるケースでは、日本の法律が適用されます。
なお、日本以外で離婚が成立した場合は、その国の日本大使館・領事館などで日本の離婚届での手続きを忘れずにおこないましょう。
例えば、アメリカの場合だと、和文訳が添えられた離婚判決謄本や離婚届出書などを提出する必要があります。
あるいは、帰国後に日本の市区町村役所で離婚手続をおこなってください。
国際離婚手続の進め方
国際離婚の手続きは、準拠法にしたがって進めていくことになります。
日本の法律のように、準拠法で協議離婚が認められている場合は、まず協議離婚の成立を目指しましょう。
夫婦間の話し合いによって、財産分与・親権・養育費などの取り決めをおこなってください。
協議離婚が難しければ、家庭裁判所に調停を申し立て、豊富な知識・経験をもつ調停委員の仲介のもとで話し合いを進めていきます。
調停が不成立に終わったときは、裁判で争うことになるでしょう。
ただし、裁判を起こす場合、どの国の裁判所で離婚訴訟を起こすのかという国際裁判管轄の問題が生じます。
【日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるケース】
- 被告の住所が日本にあるとき
- 原告・被告が日本国籍のとき
- 日本に住所がある側が訴訟を提起する場合に、夫婦が最後に同居していた場所が日本にあるとき
- 上記以外に、日本の裁判所で裁判することが公平性を確保し、適切かつ迅速な審理の実現につながると判断されたとき
また、遺棄された場合や相手が行方不明の場合、DVを受けている場合など、特別な事情があれば例外的に日本の裁判所に国際裁判管轄が認められます。
一方で、外国籍の相手がずっと外国に住んでいる場合や、夫婦ともに外国に住んでいる場合は、原則として外国の裁判所を利用することになるでしょう。
国際離婚をおこなう際によくある心配
ここでは、国際離婚をおこなう際によくある4つの心配事を紹介します。
- 日本での離婚成立は外国にも効力が及ぶのか
- >国際離婚後は問題なく再婚できるのか
- 国際離婚時のビザはどうなるのか
- 子どもの親権・養育費はどう扱えばよいのか
日本での離婚成立は外国にも効力が及ぶのか
日本で離婚届を提出し離婚が成立しても、原則として外国には効力が及びません。
配偶者の本国では婚姻がするため、相手国でも離婚手続をおこなう必要があります。
基本的には相手国の在日大使館・領事館で離婚の届け出をおこないますが、手続き方法は国ごとに異なるので注意してください。
なお、フィリピンなど国が離婚そのものを禁止している場合は、その国で手続きする必要はありません。
また、多くの国では協議離婚が認められておらず、裁判の判決をもって離婚が成立すると定めています。
この場合、日本で協議離婚しても、相手国では認められない可能性があるので、あえて調停や裁判で離婚を成立させることも検討しなければなりません。
国際離婚後は問題なく再婚できるのか
相手国での離婚が成立していない場合でも、日本の戸籍上で離婚が成立していれば、日本での再婚が可能です。
ただし、外国人配偶者が自国に戻って再婚したときに重婚状態になるなど、トラブルが生じるおそれもあるため、相手国での手続きを優先的に済ませることをおすすめします。
国際離婚後のビザはどうなるのか
結婚相手が外国人で、結婚により相手がビザを取得していた場合は、離婚成立後の更新ができなくなります。
離婚成立後も変わらず日本に滞在する場合は、在留資格の変更手続が必要です。
数年間の婚姻実績と安定した収入がある場合や、子どもの親権者として監護養育している場合などは、定住者としてのビザを取得できる可能性があります。
なかにはビザを失うことをおそれて離婚成立前に姿を消してしまい、離婚の協議が進められないケースもあるので、ビザの取り扱いについては早めに情報共有しておくことをおすすめします。
子どもの親権・養育費はどう扱えばよいのか
国際離婚にともなう親権・養育費の問題は、どの国の法律を適用するのかがポイントとなってきます。
基本的には、父母のいずれかと子どもの国籍が同じであれば、その国籍を適用します。
例えば、父親か母親が日本国籍で子どもも日本国籍なら、日本の法律にしたがって親権や養育費の取り決めをおこなうことになるでしょう。
まずは当事者間で話し合い、合意形成が難しい場合は調停や裁判での解決を目指します。
なお、自身が親権を獲得した場合でも、相手には子どもの扶養義務が残ったままなので、適切な金額の養育費を請求するようにしましょう。
配偶者が日本を離れるケースでは、未払いを防ぐために出国前にまとまったお金をもらっておく、送金方法をきっちり決めるなどの対策を講じることをおすすめします。
国際離婚で困った場合の相談先
国際離婚で困ったときの相談先を2つ紹介します。
- ベンナビ離婚
- NPO法人国際結婚協会
1. ベンナビ離婚
ベンナビ離婚は、離婚問題を得意とする全国の弁護士を検索できるポータルサイトです。
地域や相談内容の絞り込み機能があるので、自身に合った弁護士を効率よく探し出すことができます。
実際に国際離婚に向けて準備をするなかで不安な点があれば、お住まいの近くにある法律事務所をピックアップし、相談してみるとよいでしょう。
2. NPO法人国際結婚協会
NPO法人国際結婚協会 は、国際結婚した夫婦のサポートをおこなっているNPO法人です。
国際離婚にともなう親権や法的手続などの相談に応じてもらえます。
専門相談員が無料で対応してくれるので、まずは一度、気軽に相談してみることをおすすめします。
国際離婚の主な8つの原因
国際離婚では、日本人同士の離婚原因とは少し違った原因もあります。
日本人同士であれば、育ってきた環境が多少違っても折り合いがつくこともあります。
しかし、そもそもまったく違う環境で育った外国人とともに生活していくことには、大きなストレスを感じる場合もあるようです。
以下で主な国際離婚の原因について紹介します。
- 文化の違いを心から受け入れきれない
- 言葉の違いがストレスになる
- お金についての価値観を共有できていない
- 子どもの育て方について揉める
- 病気にかかった時の対処法が違う
- 親戚付き合いが親密過ぎる
- 偏った日本人像を持たれている
- 母国に帰れないストレス
1.文化の違いを心から受け入れきれない
新婚当初は相手の出身国の文化に溶け込もうと、積極的に取り組んでいく人が多くいます。
しかし、時間が経つにつれて、無理に相手の文化に合わせ続けるストレスが溜まってしまうケースも少なくありません。
その結果、宗教行事や地域行事などが面倒になり、最終的に離婚に至ってしまうようです。
2.言葉の違いがストレスになる
国際結婚では、言葉の違いが悪影響を及ぼすこともあります。
国際結婚した夫婦は共通言語をもつケースがほとんどですが、完璧に使いこなせないうちは大きなストレスになるはずです。
また、配偶者の国で配偶者の両親と共に暮らすことになると、両親との共通言語も必要になります。
仮に配偶者がいなければコミュニケーションが成り立たないような状況が続くと、日々の生活が億劫になってしまうでしょう。
3.お金についての価値観を共有できない
お金に対する価値観の違いも、国際離婚の原因になることがあります。
生まれ育った国・地域によって、金銭感覚は大きく変わってくるものです。
たとえば、バカンスで散財するのが当たり前の国もあれば、宗教行事にお金をかける国もあります。
しかし、金銭的な価値観の違いを一方的に押しつけることは難しいため、一緒に暮らしていくのが徐々にしんどくなっていくようです。
4.子どもの育て方について揉める
子どもの育て方について揉めた結果、離婚に至る夫婦も少なくありません。
どのような子育てをおこなうかは、自身がどのように両親に育てられたかが影響するといわれています。
そのため、育った環境がまったく違う国際結婚の夫婦の場合は特に、子育てに対する考え方の違いが原因で衝突が起きてしまう可能性が高いといえます。
のびのびと育てるのか厳しく育てるのかなど、意見の対立が頻繁に続くとストレスを感じることもあるでしょう。
5.病気にかかったときの対処法が違う
医療技術や医療に対する考え方も、国によって大きく異なります。
そのため、自分自身や子どもが体調を崩したり病気にかかったときに、配偶者が信じられない対処の仕方を取ってくることがあるしれません。
配偶者はその治療法で育ってきたため当然のことをしているつもりですが、どうしても受け入れられず、夫婦が揉めることはよくあるようです。
6.親戚付き合いが親密過ぎる
親戚付き合いが親密過ぎることも、国際離婚のよくある原因といえるでしょう。
国によって、親戚との距離感は異なります。
休日には必ず配偶者の親戚が家を訪ねてくる、親戚が子育てに口を出してくる、盛大なイベントが頻繁におこなわれるなど、親戚とのつながり方は国によってさまざまです。
そのため、家族の時間を大切にしたいと考えている人にとっては、親戚付き合いを求められる生活にストレスを感じてしまうかもしれません。
7.偏った日本人像を持たれている
国際結婚では、偏った日本人像を持たれていることが原因で離婚する夫婦もいます。
特に、日本人女性が外国人の夫から偏見を感じることが多いようです。
昔ながらの奥ゆかしく日本人女性のイメージをもたれたまま結婚し、ひどくわがままに振る舞われてしまうケースなどがあります。
ステレオタイプなイメージどおりの振る舞いを強要されるは、大きなストレスになるでしょう。
8.母国に帰れないストレス
相手方の国で生活をしている場合、自分の親や友人に会えないストレスから精神的な苦痛になることが考えられます。
頻繁に帰国できれば良いのでしょうが、経済的な理由やさまざまな事情からなかなか帰国できず、うまくいかなくなる夫婦も少なくありません。
まとめ
国際離婚は夫婦の居住地や国籍によって適用される法律が異なるため、
初期段階から双方の法律について理解し、必要な手続きを確認しておくことが重要です。
しかし、法的な知識がなければ、誤った認識のまま離婚手続を進めてしまい、あとでトラブルになる可能性も否定できません。
そのため、国際離婚を検討している場合は、まず離婚問題が得意な弁護士に相談するようにしましょう。
ベンナビ離婚では、国際離婚問題を得意とする弁護士を地域別で検索することができます。
無料相談はもちろん、電話で相談が可能な弁護士も多数掲載していますので、まずはお気軽にご相談ください。


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