大切にしているのは「信頼関係」を築くことである、とお話しくださった桶谷(おけたに)先生。
その人の人生を左右するからこそ、時には耳の痛いお話をし、聞き入れて頂かないといけない…そういった状況に立つことが多かったからこそ、相談者の抱えた痛みや想いを受け止める、そして共感したうえで、ご提案を差し上げているのだと言います。
地元密着型の弁護士である桶谷先生に、弁護士業務や離婚相談を行う際の心がけについてお聞きしました。
昔は裁判官になろうと…
――弁護士を目指したきっかけを教えてください。
弁護士になろう、と明確に決めたのは高校生の時でしたね。
ただ、私にとって法律はとても身近なものだったんです。実は、父親が裁判所の職員で、子どもの頃は裁判所に足を運ぶ機会も多く、昔は裁判官になろうと思ったこともありました(笑)
――そうだったのですね!では、何がきっかけで裁判官から弁護士になろうと思われたのでしょうか?
私が高校生の時に、流行っていた法廷ドラマがきっかけです。
主人公の弁護士が1つ1つ手作業で問題を解決していく姿がかっこよく、弁護士になろうと決心しました。
ただ、学生時代、私はどちらかというと理数系の方が得意だったんです(笑) しかしやっぱり弁護士になりたくて、文系の法学部を選びました。
「自分で考えて、正しいところに辿り着くまでの過程が重要」
――これまではどのような案件を取り扱ってきたのでしょうか。
企業法務やM&Aなど企業からのご相談に対応したり、離婚や労働問題などの民事事件にも対応しています。最初に入所した事務所でも同じように幅広い案件に携わってきましたね。
企業案件と個人の民事案件は全くの別物と思われるかもしれませんが、意外と共通点は多いんです。
例えば、M&Aも離婚も、信頼関係を維持し、お互いに納得できる条件を探して交渉していく。もちろん技術的な部分は違うのですが、根本的な部分では似ているんですよ。
しかし、弁護士になりたての頃は、経験も少なく、理屈一本で勝負しようとしていたのでなかなか話もまとまらず、とても大変でした。
――そうだったんですね…。
その上、事務所の代表の先生は職人気質で、ゼロから教えてくれるような方ではなかったので、試行錯誤の連続でした。
ただ、自分で考えて正しいところにたどりつく過程が重要ですので、先生に教わった経験や知識は事務所を立ち上げてからも大変役に立ちました。
――なるほど…!事務所を開設されてからしばらくは桶谷先生のみでご対応されていたのでしょうか?
事務所を立ち上げてから約20年間は、私だけで対応していました。
ただ、色々なご相談を受ける中で、1人だけでできることに限界があることに気づきましたね。より品質の高いリーガルサービスを多くのご相談者に提供するためにも、仲間を増やそうと決めたんです。
――質の高さを保つために、弁護士の在籍数を増やそうと思われたのですね。
そうですね。今では仲間が7名に増えたことで、事務所が一丸となって対応し最高のリーガルサービスを提供できるようになりました。
相談者の「今後の人生」を大きく左右するからこそ信頼関係の構築を大切に
――弁護士業務を行う上で、心がけていることはありますか?
信頼関係を築くためにも、まずはご相談者の話を丁寧に聴き共感することを大切にしています。
離婚などの民事事件では、弁護士とご相談者の間に信頼関係を築くことが重要です。信頼関係の有無によって、ご相談者がどの程度こちらの話や提案を聴いてくれるかが変わってきます。
昔の私のように、弁護士の中には、小難しい法律用語を使って理屈っぽい話をする方もいて、共感する前につい切り返してしまう弁護士も少なくないと聞きます。でも、勇気を出して弁護士に相談したのに、そういった切り返しは相談者にとって不快だし不安にさせてしまうと思うんです。
なので、例えば30分相談時間があったとしたら、極端にいうと、27分ぐらいまではしっかり話を聴いて残り3分で問題点や解決策を提示するような時間配分を意識しています。
相談者の中には、切羽詰まって、頭の中が混乱している方も多いんです。話を聴くことは、心を落ち着かせ混乱を落ち着かせるお手伝いになると思っています。
――話を聴くことへの強い想いが伝わってきます。
相談を受けた弁護士は、その人の「今後の人生」を大きく左右します。責任は重大なんです。なので、時には耳が痛いようなことを伝えなければいけないこともあります。
そういった時にご相談者が納得した上で損しない選択をしてもらうには、相互の信頼関係が必要不可欠です。
人によって信頼関係を築けるまでの期間は様々で、相談時にすぐに納得される方から、時間をかけて信頼関係を築く人もいます。
当事務所では信頼関係構築の第一歩として、嘘をつかない・約束を守る、この2つを徹底しています。
例えば、今日中に電話を折り返すと言ったら必ず折り返す。できないことは丁重にしかしわかりやすくお断りする。さらにできれば代替案を示す。このような小さなことの地道な積み重ねが信頼関係につながっていくと思っています。
離婚問題の相談に来られる方へ
――離婚問題の相談を受ける際の心がけなどを教えてください。
離婚問題は、夫婦間にあったはずの信頼関係が崩れた状態で開始されます。
そのため、1つでもボタンを掛け違ってしまうとどんどんボタンがズレていき、先に進むことが難しくなります。
特に直接交渉するケースでは、ご相談者との信頼関係だけではなく、相手方との間にも信頼関係を築けないと解決までが難しく、時間がかかってしまうでしょう。
なので、相手方からも一定の信頼を得るよう心がけて対応しています。例えば、極端に無理な請求をしないなどですね。
――信頼関係を大切にする桶谷先生ならではの心がけですね。離婚問題を相談するか悩んでいる方へ一言お願いします。
離婚問題は感情が複雑に絡み合うため、簡単には割り切るのは難しい問題です。
ただ、先ほども話した通り一度掛け違ったボタンは直すのが大変です。10個目でなおすより1個目でなおす方がはるかに簡単なので、弁護士でなくても早めに人に相談することが重要です。
弁護士に相談するメリットは、割り切れない感情や問題点を整理できたり、どこが話の分岐点なのかを理解できることだと思います。ぜひ早めのご相談をおすすめします。