離婚問題に関する2つの不安
離婚に関するご相談をいただく方は、離婚そのものが認められるかどうかという点の他に、生活面・精神面という重要な側面で課題・不安を抱えています。
経済面においては、ご相談者様の親御さんの協力を得られる方やご自身の収入で解決できる方もいらっしゃいますが、そうでない場合には、生活保護といった社会保障制度に関する助言などが必要です。
また精神面では、相談を伺ったり打ち合わせをしていったりする中で、弁護士がカウンセラー的な役割をすることがあります。
特にモラハラや精神的・肉体的DV被害を受けていた方は、自己肯定感が低くなってしまっていたり、「離婚をしてもいいのだろうか」とご自身の選択を疑われていたりする場合があるのです。
こうしたご状況において、まずは前向きに将来のことやご自身の人生を捉えていただけるように、責任がご自身にあるわけではなく、相談に来られたこと自体を労い、励ますようにしています。
弁護士の本筋的な仕事ではありませんが、私はこういった精神面のサポートも、重要な役割のひとつだと考えているのです。
何よりもご相談者様の選択を尊重いたします
離婚問題に限りませんが、法律相談を受けるときには、何よりもご相談者様ご自身の選択に自信を持って欲しいと考えています。
人生のあり方が多様化している社会の中でも、まだまだ「配偶者を支えること」「子どもに両親がいること」が美徳であり、当然とされている風潮やプレッシャーがある状況です。
そのためご自身が選択された、「離婚」という選択肢に、葛藤されてしまう方も少なくありません。
しかしモラハラやDVがある家庭環境や、一方の親が片方の親を抑圧している環境でお子さまが成長していくことは、良い状況であるはずがありません。
親が2人同じ家で暮らすかどうかという形式的なことよりも、家族同士が互いの人格を尊重しあう姿を見せられるのかどうかということの方が重要です。
抑圧がある状況で離婚という正当な手続きをとるは、悪いことなんかではありませんし、子どもが可哀想ということは一切ありません。
もちろん、お子さま自身にも「おなたが悪くない」と説明して安心してもらうことが大事ですし、そうした点でも経験を活かした助言を致します。
LGBT支援活動をはじめたきっかけ
もともと関心はありましたが、実際に活動を始めたのは弁護士登録をしてすぐなので、2016年頃です。
司法修習生のころ、LGBT支援法律家ネットワークという、先輩の世代が立ち上げたネットワークの存在を知り、修習生でも加盟できることを知り私も参加しました。
LGBT支援法律家ネットワークとは?
性的マイノリティの支援に携わりたいと考える法律家によるゆるやかなネットワーク。
ネットワークメンバーの有志で弁護団が結成され、2015年7月7日、日弁連に日本各地の同性どうしカップルから、「同性婚ができないことは人権侵害にあたる」として、人権救済申立て(人権侵害をされているので実態を確認し、人権侵害があれば注意するように申立てる手続き)が行われました。私はネットワーク加盟当初は弁護士ではなかったので、代理人として弁護団団に加わることはできませんでしたが、弁護士登録後に参加しました。
この手続きへの返答として2019年に、日弁連が「同性婚ができないことは人権侵害」だと声明を出したことは、大きな成果のひとつです。
活動当初から2021年6月現在までの変化
とても前向きな変化もいっぱいありましたし、同時にバックラッシュも増えてきたと思います。
特に前向きな変化として大きいところは、各自治体が独自に同性カップルが利用できるパートナーシップ制度を作ったり、性的マイノリティの人権尊重の指針が作られたりしたことです。
制度としての変化はもちろんですが、何よりも世間全体で当事者の姿が見えるようになってきたという成果は大きいです。
認識が広まっていくことで、今まで差別や偏見を恐れ自分の性のあり方を隠さざるをえなかった性的マイノリティ当事者がが自分の生き方を肯定できる気持ちになったり、安心して自分の性のあり方をオープンできるという環境が広がってきたと思います。
また、制度が生まれてきたことで、性的マイノリティが自治体に生活困窮などの相談をしたとき、行政側には「事例がないから」と門前払いすべきではないという意識が生まれ始めているという変化も聞いています。
パートナーシップ制度も同性婚も、直接にはパートナーのいる方が利用する制度ですが、そうした制度のひろがりにより、パートナーのいる状況ではない性的マイノリティにとっても生きていきやすい社会への変化につながっていくと期待しています。
一方で、「道徳に反する生き方」「(性的マイノリティが増えたら)区が滅びる」といった、事実無根のなバッシングも依然として存在しています。
そうした心無い発言をする人々の中には、今まで社会やメディアの中でまかりとおっていた性的マイノリティを「変態」と侮辱や嘲笑の対象にしてきた根強い差別意識が内面化されているように思います。差別的な言動に対して、「差別はいけない」「当事者の姿をきちんと知るべき」と発信する人を増やしていくことが課題のひとつです。
同性カップルからの法律相談
一方で、同性カップル2人の関係性が社会で肯定されるようになることは、逆に2人の間で不貞やDVという問題が起こって関係が壊れたときに、解決が図られるかどうかという点からも重要です。
私は、社会学系の研究をされている方と、同性カップルにおけるDV被害について実態調査をしたことがあります。
結果、同性のカップル間での身体的・精神的暴力といった問題がある事例が生じていることがわかりました。
『カップル間で紛争が起こる』というリスクがあることは、男女のカップルなのでも同性カップルでも同様です。
しかし、そういった紛争に直面した方たちにとってはまだ「法律家に相談しにくい」というハードルがあります。
そもそも紛争相手が同性のパートナーや交際相手であるという話をすること自体がカミングアウトになるため、初対面の法律家という他人に話しづらいのです。
一方で、もともとカミングアウトしている身近な知人友人は、紛争相手との距離も近いということが多く、紛争の実態を詳しく説明することは難しく相談できないという矛盾があります。
そのため、DV被害や不貞で関係が壊れてしまった責任追及を、法的にしてみようという発想になること自体が難しいことも決して珍しくありません
また、住んでいる地域によってももともと弁護士が少なかったり、お住まいの地域にいる弁護士が性的マイノリティへの偏見を持っているのではないかと不安を抱えていたりして、法律家に相談したいという思いがありながらも泣き寝入りしてしまう方もいます。
ただ、宇都宮地方裁判所真岡支部で、同性カップルの不貞において慰謝料の支払いが認められた事例があります。まだ裁判官によってケースバイケースとなるとは思いますが、事実婚というべき状況であれば、法的保護が認められる、すなわち不貞された場合の慰謝料請求が認められることが期待できます。
また、弁護士に相談することで必ずしも裁判を提起したり、紛争に発展したりするわけではありません。
裁判所を通さない弁護士からの任意交渉で、慰謝料の請求をできる場合もあります。
自分で「相談しても意味がない」と決めつけて泣き寝入りせず、是非信頼できる法律家にご相談ください。
身近なところの疑問や違和感が弁護士を目指したきっかけ
もともと弁護士を目指した最初のきっかけは、祖父母が介護施設に入ったり入院をしたりする中で、高齢者の命を預かっているにも関わらず、扱いが杜撰であったことに違和感を覚えたことです。
明確に虐待とか医療過誤があったわけではありませんが、病院や施設の対応に疑問を抱いて、個人の命・健康・尊厳を守りたいと思い、弁護士を目指しました。
少し時間が経ち、大学生になってから医療現場・介護現場で働く人と話せる機会をいただき、今度は現場の労働条件や環境といった問題にも疑問を感じました。
弁護士は個別のケースで利益相反にならなければ、こうした問題に対して、事故や虐待の被害者の立場からも現場の労働者の立場でも、困っている人と一緒にたたかうことができると思い、改めて弁護士になろうと決心しました。
少しずつ明るくなるご依頼者様の表情に私も励まされます
最初にご相談に来られる方の多くは、悩みや不安を抱えており、ほとんどの場合、少なくとも朗らかな表情ではございません。
しかし事件が少しずつ進行していき、解決の目処が見えたり、打ち合わせを通じて自分自身を肯定してあげられる心境に変化するようになる中で、リラックスして前向きな発言をされるようになります。
当初は俯きがちだったご依頼者様が、少しずつ前向きになって、笑うようになってくださると、私自身も励まされます。それが日頃のモチベーションのひとつです。
安心して相談をしてほしいと思います
弁護士への相談を検討されている方の中には、弁護士が怖いものなのかとか、自分の困りごとは相談するほどのものなのかといった不安から躊躇してしまう人もいるはずです。
実際には残念ながら怖い弁護士がいることも事実ですが、気さくで人と関わることが好きな弁護士もたくさんいます。
少なくとも、私の場合は目の前の方が勇気を出して相談に来られたのであれば、それを尊重して労いたいです。
また紛争がある中で、弁護士の介入まで奮闘されていましたら、それを尊重してサポートしたいとも思います。
またどういった悩みにせよ、一人で抱えていては進展しないことがほとんどですし、最悪の場合は大変なストレスから健康を害することも少なくありません。
そうなってしまう前に、勇気をもってご相談いただければ幸いです。
実際、相談に来られた結果、すぐに弁護士が介入するまでもなかったり、経過観察のような結論で落ち着いたりすることもありますが、それはそれで進歩といえます。
まずはご状況を整理するためにも、気軽に弁護士を頼ってもらえれば幸いです。