離婚による子供のメンタルヘルスへの影響とは?神戸女学院大学若佐先生にインタビュー

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公開日:2020.10.23
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離婚による子供のメンタルヘルスへの影響とは?神戸女学院大学若佐先生にインタビュー

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「離婚によるストレスでメンタルヘルスが悪化する」ということはよくある話です。特に成長途中の子どもの場合、大人よりも大きなダメージを受けやすく、その後の成長に悪影響が生じてしまうこともあります。

今回は、離婚が子どものメンタルヘルスに及ぼす影響やメンタルヘルスケアの注意点などについて、神戸女学院大学の若佐准教授にお話を伺いました。

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離婚が子どものメンタルヘルスに及ぼす影響

アシロ取材班

離婚を経験した子どものメンタルヘルスに及ぼす影響についてお聞かせください。

若佐様

離婚が子どものメンタルヘルスに与える影響は、離婚の渦中にあった時点での子どもの年齢に応じて大きく異なります。

具体的には、乳児、未就園児、小学校低学年、小学校高学年、それ以降のいずれの時期に両親の離婚を経験するかによって、メンタルヘルスに与える影響は一般的に異なる傾向にあります。

両親の離婚時における子どもの年齢以外にも、両親が離婚に至った経緯によって子どものメンタルヘルスへの影響の大きさが左右されることも少なくありません。

 

例えば、離婚に至るプロセスで、両親が感情的に対立・衝突したり、突然子連れで別居したりした家庭における子どものメンタルヘルスへの影響は大きくなりがちです。

DVやモラルハラスメントにまで発展するような離婚においては、それを目の当たりにした子どものメンタルヘルスへの影響は計り知れないものになるでしょう。

 

一方、両親が子どもの前では夫婦喧嘩をしないことを心がけており、離婚時に「離婚しても子どもの親として見守り続けるよ。」といった説明や、具体的にどのような形で会ったり関係を続けたりできるかを子どもの年齢に合わせて行った家庭においては、子どもへのメンタルヘルスへの悪影響は軽減される傾向にあります。

成長段階ごとのメンタルヘルスへの影響

アシロ取材班

年齢や離婚時の両親の葛藤の重大さ等によって、子どものメンタルヘルスへの影響は変化するのですね。

では具体的な子どもの成長段階に応じたメンタルヘルスへの影響についてお教えいただけますでしょうか。

若佐様

それでは「乳児」、「生後18か月~3才」、「3才~5才」、「小学校低学年」、「小学校高学年」に分けて、解説します。

 

乳児の発達課題は愛着の形成にあります。

乳児は両親に抱っこしてもらったり、声をかけてもらうことによって愛情を感じ、「基本的信頼感」をもち、成長していく時期です。この「基本的信頼感」は人を信じ、人間関係を作る上でとても大切な感覚です。

離婚の渦中、または離婚後の状況において、養育者が抑うつ状態になったり、怒りや不安などを強く持ったりしていると、心ここにあらずの態度であることがあります。

このような状態の親に対して、乳児は言葉で表現することができないため、不眠癇癪泣き叫び食欲不振といった身体表現や症状といった形で不安な気持ちを表出させることが少なくありません。

 

乳児は、特に身近な人の心理状態や行動に影響を受けやすい発達段階にあります。

乳児にとって母親が最も身近な存在であるケースが多いですが、その母親から愛情を感じないことに対する不安な心理状態を、言葉を発することができない分、身体表現で表すしかないのです。

アシロ取材班

生後18か月~3才までの子どもについてお聞かせください。

若佐様

その後、生後18か月~3才まではいわゆる”いやいや期”と呼ばれる時期に入ります。

心理学で、「分離・個体化期」と呼ぶ時期と重なっているところがあります。

子どもは、自分がやりたいことが実際には出来ないものの、母親から離れて自分で何でもやりたいと相反する感情をもっています。これは、子どもの発達においてとても重要な試みです。

この時期に両親の離婚を経験した子どもは、不安症状が強く表れる傾向にあります。

 

例えば離婚後に、母親が子どもを養育するために、仕事に時間を取られるケースにおいて、子どもと物理的に分離される時間が増えることを子どもが嫌がったり、泣いて困らせたりすることが多くなる可能性があります。

親が子どもの元へ戻ってくることを信じることが難しいのです。実際に、片親と離れたという事実が、その信念を強くしてしまうのです。

親は子どもの元へ帰ってきた際に「さみしかったね。さみしいけれども、よく頑張って耐えたね。」と寂しい感情に共感をしたうえで、しっかりと褒めてあげ、大切に思っていると伝えることが子どもの心のケアの観点で、重要となります。

 

子どもの心理的なケアを怠ると、大人になってもメンタルヘルスへの影響が残存します。

例えば、恋人とSNSで常に連絡を取らないと不安でたまらないような大人になる可能性もあります。

アシロ取材班

3才~5才までの子どもについてお聞かせください。

若佐様

3~5才の子どもは心理学用語で「自己中心性」と呼ぶ傾向が強まる時期にあります。

つまり、この時期の子どもはまだ他者の気持ちを理解することが困難で、自分の感じ方を中心に置く傾向があります。

 

そのため、「両親の離婚の原因は自分のせいであり、私がよい子にしなかったからだ。」と苦しむこともあります。

「両親の離婚も、自分が家事等のお手伝いを頑張ればなんとかなる。」といった空想を抱くことも多々あります。

その精神的負荷によって、指しゃぶり夜泣き赤ちゃん返りのような現象が見られることがあります。

 

このような子どもに対しては親が「○○ちゃん(君)が悪くてそうなっているのではないよ。」といったような声かけをして自責の念から解放してあげることが大切な心のケアとなります。

アシロ取材班

小学校低学年の子どもについてお聞かせください。

若佐様

小学校低学年にもなると、空想に逃避するのではなく、現実世界での事象をより明確につかめるようになります。集団生活にも慣れ、周りと自分を比べることもし始めます。

この時期に、両親の離婚を経験する子どもは喪失体験をはっきりと意識し、片親から自分は見捨てられたのだと強く感じるようになります。

両親の離婚によって転居や転校を余儀なくされ、友達作りをゼロから始めないといけない状況になること等は、この時期に離婚を経験した子どもが経験する「喪失体験」の典型的な例です。親しみのある環境を失うことは、子どもにとって大きなダメージとなります。

 

この時期に両親の離婚を経験した子どもは、盗みや作り話をする等の問題行動が見られる場合もあります。

親は、問題行動の解決にばかり目がいき、子どもの苦しみや痛みに気付かないこともありますが、子どもは、友達の家庭と自分の家庭を比べ、羨ましさや恥に1人で苦しんでいることもあります。

アシロ取材班

小学校高学年の子どもについてお聞かせください。

若佐様

小学校高学年にもなると、自分自身の価値観を持ち始め、親同士の関係性も少し相対的に把握できるようになります。

第2反抗期にさしかかるこの時期の特徴ですが、正義感が強くなり、グレーゾーンに位置するような出来事を許せなくなります。

子どもが自分自身の尺度で間違っていると感じることに対して、許せない気持ちになりやすいのです。

 

また、この時期になると、子どもを頼りにしすぎる親が多くなることも特徴的です。

例えば、下の子どもの面倒を見ることを頼んだり、離婚時の苦しい心境理解を子どもに求めたり、養育費の支払い催促を面会交流の際に子どもに代弁させるケース等があります。

親が”子ども”になり、子どもが”親”になってしまっているような状況も珍しくありません。

その分、子どもは親の前で強い自分を演じる必要があり、強い精神的負担を強いられることに繋がります。

子どものメンタルヘルスへの影響を軽減するためのケア

アシロ取材班

離婚を経験する子どもの年齢によって、メンタルヘルスへの影響は大きく異なるのですね。

では、子どものメンタルヘルスへの影響を軽減するためにはどのようなケアを心がけるべきなのでしょうか。

若佐様

どの年齢の子どもに対しても、親は「子どもに感情を表現させる」ことが出来ていないことが多いと感じます。

どの親にも「子どもには離婚の影響を感じてほしくなく、笑顔でいてほしい。」という気持ちや願いがあるものです。

そのため、子どもが離婚に起因するマイナスの感情表現を行うことを、忙しさや精神的余裕のなさ等の理由から拒絶したり、気づかぬふりをしたりしてしまうこともあるかと思います。

 

例えば、子どもがトラブルを起こした際に、その行為に至った心理的経緯を探る努力をするのではなく、物を買い与える等の一時的な処置によってその場を乗り切ろうとすることがあります。

これでは、子どもの行為の根底にある心の傷は残り続けることになります。

子どもが離婚に起因する負の感情を表現しようとした際には、それをSOSだと受け取って、よく話を聞いてあげることが大切です。どんなに忙しくても、家事や仕事の片手間ではなく、5分でも良いので、目を見て真剣に話を聴いていただけたらと思います。

 

実は親でも、絵本を読むことで離婚を経験した子どもの気持ちを学ぶことが出来ます。

「いまは話したくないの―親が離婚しようとするとき (心をケアする絵本)」(大槻書店)等はお勧めです。

親が子どもの心をケアする際に注意すべきポイント

アシロ取材班

他に離婚した親が子どもの心をケアする際に注意すべき点はありますでしょうか。

若佐様

子どもを”親の分身”であるとみなしている親が少なくありません。

例えば、面会交流において、同居親が、別居親に会うことによる悪影響を心配して「子どもが会いたくないと言っている。」といった内容を別居親に伝えるケース等が当てはまります。

子どもは”親の分身”ではありません。

別個の人間として、子どもの意思を尊重することが重要です。

同居親を思いやって、別居親に会いたいと積極的には言わないけれども、別居親に会うのを楽しみにしている子どもがたくさんいます。

親同士のやり取りの”道具”として子どもを利用すると、子どもは両親の間に挟まれて、強い精神的負担を強いられることになります。

 

あとは、親自身の精神的なケアも大切です。

精神的余裕がないと、親として子どもに愛情をかけたり、関心を持ってかかわったりすることが出来なくなる状況にも繋がります。

カウンセリング等を通じて、自分の気持ちや将来への願いを整理するのを手伝ってもらい、親は”親としての機能”を取り戻すことが出来るようになります。カウンセリングに限らず、ご自身の時間を何とか捻出して、ご自身を取り戻していただけたらと思います。

 

「離婚=失敗」と捉えがちではありますが、必ずしもそうではありません。

離婚を通じて、苦しい状況から回復することが出来れば、子どもは、その背中を見て、大変なことがあっても、いつか乗り越えられるんだという希望や勇気を持てるかもしれません。逆境の中でも、それをバネにして乗り越えるしなやかな強さのことを心理学の世界では「レジリエンス」と呼んでいます。

過度に「離婚を経験させてしまった自分が悪い。」という姿勢で子どもに接しすぎないことも大切なポイントですね。

 

この記事の取材協力
神戸女学院大学 人間科学部 心理・行動科学科
若佐 美奈子 准教授
子ども家庭センターや児童養護施設、大学病院の心理士、スクールカウンセラー等として、子どもの心理検査・心理療法に従事してきた。現在は、大学院にて後進を育成する傍ら西天満心理療法オフィスで臨床活動を行う。

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本記事はベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ離婚(旧:離婚弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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