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ADR(裁判外紛争解決手続)とは|メリットやおすすめな人をわかりやすく解説
夫婦で離婚協議ができない場合、弁護士に依頼したり、家庭裁判所の離婚調停を思い浮かべる人が多いと思います。
しかし、一方で、弁護士費用は高額で支払えないし、だからといって家庭裁判所で争うのもハードルが高い、という人も多く、必要な条件を取り決めないままに離婚してしまうケースも散見されます。
この記事では、弁護士費用より安価で、裁判所よりもハードルが低い「ADR(裁判外紛争解決手続)」という民間調停の制度を利用した離婚の方法をお伝えします。
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ADR(裁判外紛争解決手続)という民間の調停機関を利用した離婚協議の方法があります。
ADR機関は民間ではありますが、いわゆるADR法に基づき、法務大臣が認証する制度で、法務省に管轄されているので、安心して利用できます。
以下では、ADR機関を利用した離婚協議のメリットをお伝えします。
家庭裁判所の離婚調停を利用した場合、終結まで1年かかったということも珍しくありません。
長期化の理由はいくつもありますが、1ヵ月に1回程度しか期日が開けないこと、別席調停なので1回の進度が遅いこと、無料なので、安易に欠席や日程変更が発生すること、休廷期間(裁判官の夏休みや年末年始、年度末や年度初めなど)があることなどが挙げられます。
一方、ADRは、法務省の統計によりますと、全体の約4割の案件が3ヵ月未満で終了しており、審理回数も3回以内が約8割です。
離婚協議は、心身ともに疲弊しますので、早期に解決ができることは大きなメリットといえます。
家庭裁判所に申し立てる場合、申立書のほか、戸籍謄本やさまざまな準備書類の提出が求められます。
しかし、ADRの場合、申立てのハードルを下げるため、できるだけ簡易な手続きにしている機関がほとんどです。
ADRは民間の機関なので、家庭裁判所より利便性が高いのが特徴です。
たとえば、裁判所は平日の日中しか調停が開かれませんが、ADRはほとんどの機関が平日夜間や土日に調停を実施しています。
また、コロナ禍を経て、オンライン調停が可能な機関も増えています(ちなみに、筆者が運営する家族のためのADRセンターでは、現在、95%がオンライン調停です)。
実は、家裁の調停で一番クレームが多いのが調停委員の「レベル」についてです。
ジェンダーバイアスのかかった発言をしたり、自分の思い込みや偏見で話を進めてしまう調停委員が後を絶ちません。
そもそも、みなさんが意外に思われるのは、調停委員は法律や心理の専門家ではなく、単なる門外漢の方がほとんだということです。
一方、ADRの調停人は、法的知識や子どもの福祉に関する知識が豊富な専門家です。
そのため、短時間で質の高い調停が期待できます。
家庭裁判所の調停は申立時に数千円必要ですが、その後は何度話し合っても無料です。
一方、ADRは民間の機関ですので、都度利用料がかかりますので、家裁に比べると費用がかかります。
しかし、多くの機関では、利用料が低額に抑えられていて(1回の期日費用が1万円前後)、弁護士に依頼した際の10分の1程度ですむ機関がほとんどです。
利便性や安価といったメリットが前面に出されやすいADRですが、実は、一番のメリットは協議の後の納得度が高いという点です。
ADRは、別席調停との選択制ではあるものの、同席調停が基本となっている機関がほとんどです。
そのため、調停委員による伝言ではなく、双方の言い分がストレートに伝わるため、相互理解が進みます。
また、専門性の高い調停人の仲介により、理性的・理論的に話が進むため、悪口の言い合いや駆け引きではなく、「目の前にある問題を三者(申立人・相手方・調停人)で解決する」という雰囲気で話合いが進められます。
結果として、自分の言いたいことも言えたし、相手の話も十分に聞いたし、いい落としどころが見つけられたという納得感につながります。
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このようにメリットが多いADRですが、注意点がひとつあります。
それは、現時点では、取り決めたことに対する執行力がないという点です(現在、ADR法改正が進んでおり、養育費及び婚姻費用については執行力が付与される予定です)。
そのため、ADR機関を利用する際、公正証書の作成までサポートしてくれる機関か否かという点がひとつのポイントとなります。
離婚する相手ではあるものの、一度は好きになって結婚した人と徹底的に争いたいわけではない、できれば穏便に別れたい、という人は少なくありません。
ましてや、子どもがいるご夫婦であれば、離婚後も子どもの父親と母親として、ある一定の関係を保っていかなければなりません。
この点、ADRは民間の機関なので、申し立てられた側の受け止めも家裁よりソフトです。
また、話合いの構造も、別席調停にて双方が悪口の応酬をするのではなく、同席にて理性的に問題解決をはかるADRのほうが紛争性が高まりません。
そのため、なるべく穏便に離婚したいという人は、家裁の手前の協議方法である民間の調停機関ADRがおすすめです。
高額な弁護士費用は出せないけれど、自分ひとりで家裁の調停を利用するのは不安だという人にもADRがおすすめです。
ADRの場合、調停人の専門性の高さが確保されていますので、理不尽に説得されたり、偏見や思い込みで判断されることもありません。
また、法的知識だけではなく、調停技法も学んだ調停人であれば、当事者の自己解決力を引き出してくれることでしょう。
ADRは平日の夜間や休日も調停が可能です。
そのため、仕事が忙しくて平日は休めないという人はADRがおすすめです。
DV案件を家裁の調停でおこなう場合、待合室を別階にしたり、来庁時間をずらしたりといった配慮がありますが、同時間帯に同じ建物の中にいることになります。
そのため、それだけで心理的な圧迫を感じる人や裁判所から後を付けられて自宅が発覚することが怖いという人は、オンライン別席調停が気軽に使えるADRがおすすめです。
子どもの進学の節目など、離婚したい時期が決まっている人は、早期解決が見込めるADRがおすすめです。
逆に、時間をかけてゆっくりと話し合いたいという人は、家裁の離婚調停がおすすめです。
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別席調停で相手の顔が見えない、声も聞こえないという状況だったとしても、相手と協議することの心理的負担が大きく、言いたいことが言えなくなってしまう人は弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士は、代理人として自分の代わりに弁護活動をおこなってくれますので、大きな安心感があります。
経済的な問題で少しでも安価に離婚協議をおこないたい人は家裁の離婚調停がおすすめです。
ADRは、弁護士費用に比べると安価ですが、経済的に余裕がない方にとっては、毎回の話合いに費用がかかることが心理的ストレスにつながることがあり、申立料のみで利用できる家裁の離婚調停がおすすめです。
ここまで、ADRという民間の調停機関を利用した離婚協議の方法についてお伝えしました。
筆者は、以前、家裁調査官として勤務した経験がありますが、やはり「徹底的に争う離婚」は後味が悪く、新しい門出に向かう体力と気力を奪います。
そのため、ぜひ、穏便な離婚や円満離婚を目指してADRにチャレンジしてみてください。
そして、それがダメであれば、家庭裁判所の調停や裁判といった次のステップに進んでいただければと思います。
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