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90年代以降の離婚件数の増加の本質的な原因とは?中央大学山田昌弘教授に独自取材
離婚件数は90年代以降増加傾向にあります。
特に1990年~2000年にかけては、著しい増加率であることが以下のデータからも分かります。
引用元:「離婚件数の年次推移」厚生労働省
90年代以降なぜ大幅に離婚件数が増加したのでしょうか。
また、現在も依然として高い離婚件数の背景には、どのような原因が潜んでいるのでしょうか。
今回は、中央大学の山田昌弘教授にお話しをお聞きしました。
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90年以降、離婚件数は増加傾向にあり、2000年以降高止まりしています。
このような離婚率増大の背景の本質的な要因としては、2つの要因があります。
それぞれについて具体的に確認していきましょう。
平成30年度の日本における女性の平均収入は293万円と、男性の平均収入である545万円と比較した際に大幅に低い結果となっています。(参考:平成30年分民間給与実態統計雇用調査)
引用元:「年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移」男女共同参画局
また、女性の非正規雇用労働者率は男性のそれと比較した際に、全体的に高いことが分かります。
日本では、女性の正社員登用率も低く、それに伴って平均年収も低いということになります。
そのため、独身であるうちは、問題は少ないですが、結婚後に子供が生まれた場合、女性単体では家計を支えていくために十分な収入が得られないパターンが多いのです。
女性の経済的自立が難しいことから、結婚相手を探す際に重視すべき要素として相手の収入を最優先に考える女性も少なくないと考えられます。
結婚相手に収入を求めて結婚するため、その後男性の収入が突然減少するような出来事(リストラ、勤務先の倒産、経営破綻等)が発生した場合に、愛想をつかして離婚を突き付けられるケースが発生します。
上述したような問題が起こりうるため、女性にとって夫の収入減少によって離婚を検討するパターンも少なくないと考えられます。
バブル崩壊以降の90年代、つまり空白の10年間における日本経済の大幅な冷え込みが進むことで、正社員のリストラが増加しました。
それに加えて、近年のグローバル化、IT化等による経済情勢の変動を起因として、中小企業の正社員雇用率が減少傾向にあります。
引用元:「増え続ける正規雇用」青木こうじろうブログ
総務省の実施した労働力調査に基づいたグラフからもわかる通り、男性の非正規雇用労働者数は増加傾向にあります。
非正規雇用者の増大は、安定的な収入を得る基盤が揺らいでいる家庭が増えつつあることを意味します。
男性の収入が不安定であると、女性が離婚を決意する可能性が高まります。
このようなことが原因で、1990年代以降の離婚件数の増加につながったと考えられます。
また、収入格差が広がりつつある現代において、富裕層と貧困層の離婚は、性質が大きく異なりますので、分けて考える必要があります。
富裕層と貧困層の離婚要因は性質が大きく異なります。日本では、調停や裁判での離婚は時間がかかるので、多くは協議離婚であり、協議離婚するためには、双方が離婚に同意する必要があります。
富裕層の離婚要因は、男性が他の女性に浮気をすることが大きな原因の一つであると考えています。
高収入の男性が浮気して不貞行為にまで発展した場合、女性は離婚する際に多額の慰謝料を請求できる可能性があります。
一方男性側にとっても、多額の慰謝料を女性に支払った後も、十分に生活できるだけの資金が手元に残る場合がほとんどです。
また、女性自身が高収入を得ている場合は、離婚して経済的に困ることはありません。
そのため、離婚後にも双方が経済的に困窮する可能性は低いため、あっさりと双方が離婚の決断ができる傾向にあるでしょう。
一方、貧困層は、夫の収入が少ない場合、夫の生活費を家計から支払う必要があること等を考慮すると、離婚して母子世帯として様々な手当を受けた方が、家計が潤うケースも少なくありません。
このようなケースにおいては婚姻状態を継続するよりも離婚した方が、金銭的メリットが大きいため、離婚率が高くなると考えられます。
若い年齢層では、男女とも、実家に帰るという選択肢があり、経済的に破綻した結婚を続けるよりも、離婚して実家の世話になるケースも多く見られます。
私個人としては、日本において中流層から貧困層に転落する世帯が増加したことが、近年の離婚率増加の大きな要因であると考えています。
近年の非正規雇用労働者増大に伴い、安定的な収入基盤を失って、貧困層に陥る世帯は数多く存在します。
男性が何らかの事情で正社員という立場を失った場合、年齢を経るにつれて、元の条件で正社員に復帰することは難しいと考えられます。
もし自身の年齢や経歴を考慮した場合に、正社員復帰が難しい場合は、契約社員等の非正規雇用労働者として勤務することを視野に入れざるを得なくなります。
このような背景から、貧困層に陥る世帯は少なくないでしょう。
貧困層が増大した場合、前述したような理由で離婚率が上昇することに繋がります。
また、お金の使い方に対する意見の不一致も貧困層では、離婚につながる可能性が高いと考えられます。
家計に収めることが出来る金額が少ない中で、夫の月々の小遣いとして確保している金額が大きく、自分のためにお小遣いのすべてを使い込むような場合も離婚につながることが多いでしょう。
近年DVの認知件数は増加している一方で、それを原因とした離婚件数は目立って上昇しておりません。
このような事象の本質的な原因は、女性の経済的自立が困難であることです。
離婚後の子育てを含めた経済的自立が困難であるため、DVを受けていながらも、我慢せざるを得ない状況にある家庭が後を絶ちません。
本来であれば、DVは場合によっては命に危険が伴うケースもあるため、すぐにでも離婚をすることが望ましいでしょう。
しかし、経済的自立が困難であるために、離婚をしたくてもできない女性は数多く存在します。
つまり、離婚した方がよいのにもかかわらず、離婚できないでいる家庭も多くあるのです。
このような問題を解決するためにも、女性が経済的に自立しやすいような環境整備を行う必要があるでしょう。
離婚自体は悪いことではありません。ただ、離婚しなくてもよいケースなのに離婚に至るケースはない方がよいし、離婚した方がよいのにできないでいるケースが増えるのも問題です。
日本の離婚状況をよい方向に向けるためには、以下のような取り組みが重要であると考えられます。
これらの社会的課題は根深く、一朝一夕で解決する問題ではありません。
結婚相手をお金で選ぶ風習や、貧困層に陥った世帯の離婚件数の高さといった構造的な問題を孕む事象は、当面の間続くといえるでしょう。
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